34 ダンジョン
滝の様な血を浴びたが、まあそれは別にどうでも良い。
我が魔界から持ち出した唯一の品である服を着ている限り、汚れはそのうち消えて無くなるのだ。
リリーは竜の血の味に興味がある様子で蔓を通して吸っている。
このダンジョンに入って以降、リリーが血に興味を示すのは我を除けば初めてなので、矢張り竜は特別なのだろう。
戦闘の実力は期待外れだったが、肉の味は期待を遥かに上回っていた。
薄く削いだ肉を喰ってみたが、生肉なのに驚く程、味わいが深い。
ガルは内臓が食いたいらしく、懸命に腹を裂いて中身を引きずり出している。
心臓は我も食べたいので、後で半分分けて貰おうと思う。
レッドドラゴンは火属性の竜なので、当然ながら火への耐性は非常に高い。
口の中で炎が爆発した時も、衝撃に気を失いはしても、炎によるダメージは皆無だった。
要するにレッドドラゴンの肉は火を弾くので、焼くという調理が無意味なのだ。
無論所詮は下位の竜なので、中位以上の竜が出す火力を再現すれば焼けるかも知れないが、もうそこまでするなら生で良い。
生でも美味いのだから問題は無いだろう。
つまり生食派のガルの大勝利である。
竜肉を喰らって、ひとしきり勝利を祝えば、我にはもう一つする事があった。
ボスを倒して出現した宝箱や、帰還の魔法陣もそうだけど、レッドドラゴンの守護して居た場所の確認だ。
大扉を開き、朽ちた神殿内を奥に進む。
我には凡そ確信が在った。此処がこのダンジョンの最奥だと。
祭壇に向かって大股でズンズンと進む。
辿り着いた祭壇の上に輝くのは、宙に浮かぶ巨大な美しい宝石。
核、心臓、コア、呼び方は何でも良いが、このダンジョンの命だ。
此奴は我を知っている。
無数の魔物を物ともせず、多くの罠を踏み壊して、最後には竜の首までも捩じ切って此処にやって来た事を。
もうこの期に及んでは、何の抵抗をしても無駄である事を、我等がダンジョンに入って以降ずっと観察していたから知っているのだ。
我の接近に、この核が恐怖を抱いている事がはっきりと伝わって来た。
だが我はその恐怖を知っても尚、核に手を触れる。
この核はこのダンジョン其の物だ。
握り潰して破壊すれば、あのレッドドラゴンを屠った時と同様に、或いはそれ以上に力を増す事が出来るだろう。
しかし、我の用事はそうじゃない。
「案ずるな。我に貴様を殺す気は無い」
今、我には力が必要だ。
我が町や民に手を出させぬ為、北東魔族領の支配者と戦う力が。
故に我が姉はこのダンジョンの攻略を提案した。
我なら此処に辿り着き、力を得る為にダンジョンの核を砕くだろうと予想して。
ダンジョンの存在は利益を生むが、その利益を失ってでも、北東魔族領の支配者を排除したいと姉は考えたのだ。
まあその考えはわかるし、我ならこのダンジョンの攻略出来ると考えてくれたのも、見る目はあると思う。
けれどもそれでも姉は、我と言う存在を未だ甘く見ていると言わざる得ない。
魔王銀行から魔力を引き出し、ダンジョンの核へと注ぎ込む。
我等の迎撃に消耗したのであろうダンジョンの力が、グイグイと回復して行くのを感じ取れた。
喜びと、そして戸惑いの感情が魔力を注ぐ手を通して我に伝わって来る。
心配せずとも最後の晩餐では無い。此れは必要経費なのだ。
一階層から三十階層に降りて来るまでに使った以上の魔力を注ぎ込む。
核は明らかに最初に見た時よりも輝きを増し、消耗した力を取り戻したように見えた。
「よし、回復したな? では我等はもう一度一階層より挑む故、貴様は急いで準備を頼む。残りの竜の肉を喰い終わったら、直ぐに再攻略を開始するのでな」
我の言葉に、核の戸惑いの感情は強くなる。
だが説明する気はあまり無い。
どの道、このダンジョンに選択の余地は無いのだ。
我は侵入者で、ダンジョンは防衛側。ただ、その防衛費は我が丸ごと負担する。
こうすればダンジョンは枯れる事なく何度でも攻略する事が出来、核を砕く必要も無いだろう。
魔王銀行の中に大量の魔力を貯蓄した、我だからこそ出来るダンジョンでの修行法。
一周に掛かる時間は、今回は七日間。攻略に慣れてくればもう少し縮めて五日間程で踏破が可能な筈なのだ。
その後、我等は一ヶ月程ダンジョンに籠り、最終的には六周程ダンジョンを踏破する。
最初は踏破の度に魔力を注ぐ我にダンジョンの核も戸惑っていたが、次第に慣れて来たのか踏破と我の訪れを歓迎するかの様な気配を発する様にもなった。
最終的にはすっかり懐いてくれた様にも思う。
別にそういう心算で魔力を注いでいた訳では無いのだが、懐いてくれれば其れは其れで可愛く思えてくるから実に不思議だ。
四周目からは実力的にも物足りなくなっていたが、踏破時に多目に魔力を注いで物足りないと言ってみれば、次からは四十階層にまで拡張されて攻略難易度を大幅に上げたダンジョンが出迎えてくれた。
我もガルもリリーも力は格段に増加したし、実に有意義な修行を行えたと言えよう。
最後だと伝えれば、名残惜し気な雰囲気を発するダンジョンの核に、礼も兼ねて思い切り魔力を注ぐ。
「達者でやれ。誰にも破壊されるでないぞ。貴様の存在は我にも利益を生んでくれる筈なのだからな」
折角北西魔族領と中立地域の境にあるのだ。
我の領にだってダンジョン攻略用の拠点を作って利益を得たい。
そんな損得勘定も込みで、ダンジョンに魔力を注いでいたら、我の隣に宝箱が出現した。
今更罠も無いだろうと思い、魔力注入の片手間に宝箱を開けると、中には腕輪が一つのみ。
恐らくは贈り物なのだろう。少しサイズは大きいように思えたが、腕に通すと自然と縮まりピタリと合った。
意図は読めぬが、何度も通って魔力を注いだ相手からの贈り物は嬉しい。
そうして、我等の長いダンジョン攻略は、漸く終わる。
我個人の準備は整った。次は我が領に準備と覚悟をさせる番だ。
名称 アシール
種族 魔王
年齢 0(?)
髪色 黒 瞳 黒
レベル 30 → 40 → 48
生命力 880 → 1180+400 → 1940
魔力 1339 → 1839+400 → 2799
STR 638 → 788 +400 → 1332
INT 738 → 938 +400 → 1530
DEX 674 → 844 +400 → 1404
VIT 650 → 800 +400 → 1344
MND 711 → 891 +400 → 1451
戦闘技能
武器類取扱(中) 格闘(低→高)
魔術技能
魔力操作(超越) 強化魔術(高) 幻想魔術(高) 治癒魔術(高)
他技能
感知(中) 魔物統率(無→低) ダンジョン管理(無→低)
ギフト
『貯金』魔王銀行を何時でも何処でもご利用になれます
現在貯金額(特大)G
魔力貯金額(大→特大)P
所持品
デュラハンのグレートソード
破壊の大槌
破壊の鉄球
魔王の服(防御力小、清潔、自動修復付与)
ダンジョンの腕輪(遠話、座標)
*
40レベルボーナス!
全能力値+400、レベルアップ時の成長率が上昇
名称 ガル
種族 黒狼将
レベル 1 → 16
生命力 1200 → 2300
魔力 400 → 900
STR 550 → 1200
INT 350 → 850
DEX 900 → 1775
VIT 500 → 1075
MND 350 → 850
戦闘技能
格闘(高)
魔術技能
咆哮(高) 加速(高)
他技能
感知(低→中) 隠密(中) 統率(高)
所持品
無し
*
10レベルボーナス!
全能力値+200
名称 リリー
種族 魔華姫
レベル 1(成長限界)
生命力 500
魔力 1800
STR 150(蔓の力は1500)
INT 150
DEX 800
VIT 70
MND 880
戦闘技能
蔓の鞭(中) 捕縛(中)
魔術技能
吸収(高) 幻惑の芳香(低) 魅了(低) 魔力操作(低) 強化魔術(低)
他技能
所持品
無し




