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12 魔物狩り、異変の先触れ

「前衛後退、後衛放て!」

 我の指示に前衛の戦士達が強化魔術の出力を上げ、盾で一度敵を圧して、すかさず後ろに後退する。

 前衛戦士の動きにより、後衛術者からの射線が開けた。

 勿論既に術者達は術を構築済みだ。


『『炎の力よ我が敵を撃て!』』

 二人の術者の声が重なり、そして放たれるは幻想魔術で生み出された炎の投げ槍。

 宙を飛ぶ強力な炎の魔術が、ラットマン、ネズミ人とも呼ばれる魔物達に突き刺さって焼き払う。

 ラットマンは火達磨になりながらも暫く地面を転げ回ったが、やがて力尽きて動かなくなる。

 我は敵が完全に息絶えた事を確認すると、戦闘終了を皆に告げた。


 行商人達との取引の数週間後、彼等より武器防具の提供を受けた我等は、中立地域の南部まで遠征に来ている。

 と言っても我が村で戦える人数は然して決して多くは無く、あまり多くが出払えば防衛戦力に事欠くので、今此処にいるのは我を除けば四名しかいない。

 だが村の中でも最も戦闘技術の習得が早い四名だ。


「ミストラ、下がるタイミングが少し早い、ルネスは逆に少し遅い。敵がもっと強ければ何方かが孤立する可能性がある。もう少し連携を磨け。しかし他は良いぞ。良くぞやった」

 集まって来た彼女達に、先の戦闘の評価を行う。

 前衛は二人。赤髪の少し小柄な軽戦士であるミストラと、紫髪の豊かな肉体を持つ重戦士であるルネス。

 当然動きの早さも違うので、連携には苦労を強いられている様だ。

 尤も二人の仲は良好なので、然程の心配はしていない。


「マリオーネ、サーガ、特に言う事は無い。良く魔術も練れておるな。どうだ、レベルの上昇は実感出来たか?」

 術者も同じく二人だ。

 マリオーネは大人しい印象を受ける青髪の華奢な少女だが、その癖魔術を学ぶ事には貪欲で、質問をして来る回数が一番多い。

 治癒魔術の習得には未だ至って無いが、村で二人しかいない幻想魔術の使い手である。


 そしてサーガは魔術の使い手としても優秀だった。我以外に、村で治癒魔術をも習得した唯一の存在だ。

 勿論強化魔術も幻想魔術も使いこなす。

 素質が優秀なのも確かなのだが、村でも一番の努力家なのがこの娘なのは恐らく間違いないだろう。

 本来ならば我の居ない村に治癒術師を残したかったが、サーガは魔王に付き従うのが自分の役目だと主張した。


 我も彼女は目を離すと頑張り過ぎてしまう故に、サーガの意思を認めて連れて来る事を選んだ。我が見て居れば過度の努力にも歯止めを掛けれるだろうから。

 サーガに対して甘い自覚は持っている。


「次に処理可能な魔物を発見したら、今度は前衛が処理だ。良いな? では行くぞ」

 指示を全員が理解した事を確認し、我等は再び南に向かって歩き出す。

 彼女達に処理が不可能な魔物が出たのなら、無論その時は我の出番だ。




 三メートル近い上背のビッグラットマンの突撃をバックステップで避けながら、我は右手に握ったメイスを振るう。

 突撃してきたビッグラットマンの影に隠れており、隙を狙って飛び掛かって来た巨大な前歯を持つネズミ人を、恐らくこれもビッグラットマンと同じくラットマンの上位種だろうが、魔王の腕力で振るわれたメイスが前歯を砕いて肉体も挽肉に変える。

 同時に逆の手を突撃を回避されて止まったビッグラットマンに向け、魔力操作で攻性の魔力を放つ。

 魔力に頭部を破壊され、残ったビッグラットマンの巨体が地に倒れた。

 だが上位種こそ始末したが、まだまだラットマンの数は残っている。


「……チッ、多いな。煩わしい。おい、無事か!?」

 全てを我一人では相手に出来ず、流れて行った数体のラットマンを相手にしていたサーガ達に呼びかけた。


「はい!」「平気よぉ」「な、なんとか大丈夫です」「問題ありません。アシール様」

 帰って来る返事は四者四様。

 彼女達も其れなりの数の敵を倒しレベルを上昇させているのだ。

 油断さえせねば、単なるラットマン相手に後れを取りはしない筈。


 我は頷き、再びメイスを振るってラットマンを挽肉に変えた。

 提供された武具の中から、我が自分用に選んだのがこの大きく頑丈な重メイスだ。

 村の者達には微妙な顔をされた選択だったが、我は中々にこのメイスを気に入っている。

 正直な所、魔王の腕力で振えばどんな武器でも当たれば大抵の相手は殺せるだろう。


 だから我にとって武器はリーチを伸ばす為の道具に過ぎない。故に重視するのは、扱い易さと壊れ難さだった。

 其の二点に於いて、この重メイスはとても優れた代物なのだ。

 多数の相手に振り回しても壊れる様子等は微塵も見せず、その役割を果たし続ける。


「よっ、と。うむ、此れで最後か」

 頑丈な得物に満足し、重メイスを肩に担ぐ。

 凡そ三十から四十程は倒しただろうか、辺りはラットマンの血肉の海が出来ていた。




「異常だな」

 集まって来た四人に、そう告げる。

 勿論さっきの戦闘の事で、四人も我の考えに異論は無いようだった。

 上位種を含む五十近いラットマンの群れ。そんな物に出くわすのが異常で無い筈が無い。

 確かに中立地域も南部は魔物領に近い為、魔物の数が出現率が高いとは聞いていたが、其れでも限度って物が在るだろう。

 そして群れ以外でも、遭遇するのがラットマンばかりというのも違和感がある。


「……あの、魔王様。えっと、ネズミが逃げる船は沈むって、聞いた事があります」

 少しおどおどしながらだが、マリオーネが進言して来た。

 沈む船から逃げる……。要するに危険察知能力が高いと言う事か。

 この場合、沈む船は、此奴等が逃げて来たであろう魔物領?


「成る程、つまりマリオーネは魔物領で異常があり、いち早く危険を察知したラットマンが魔物領から逃げて来たと考えておるのだな」

 マリオーネの言葉の真意を捉えかねている他の者達にもわかる様に、確認を行う。

 倒したラットマン達の様子を思い返してみれば、成る程、確かに何かに追い立てられたかの様な焦りを感じた気はする。


「えっと、あの、はい。多分なのですけど……」

 頷くマリオーネ。

 ……しかしもし彼女の考えが当たっていたのなら、事態はかなり重大だった。

 何故ならこのラットマン達は、単なる先ぶれに過ぎないからだ。

 魔物領に起きた何かが、本当に危険であるのなら、ラットマンに続いて無数の魔物達が中立地域に逃げ出して来るだろう。

 つまり、スタンピード、魔物の暴走が起きる。


「遠征は中止する。直ぐに村に帰還だ。誰ぞ最も近い魔物領の支配種を知る者は居るか? サーガ、村に到着次第ワケット、行商人に連絡を取れ」

 異常が起きているとするならば、恐らくは幾つか存在する南部の魔物領の中でも最北、最も中立地域に近い其れだ。

 行商人の長であるワケットと協議する必要があった。

 魔物領から魔物が中立地域に溢れ出したとして、餌を求めて人間領へと向かうなら、我にとっては問題は無い。


 しかし北部へと来る場合、我が村は平気でも他の里の魔族の多くが犠牲になるだろう。

 他の里をも守らんとするなら、行商人達の持つネットワークを借りる必要があった。

 四人の魔族の女が、不安げな視線を向けて来る。

 魔術や戦闘技術を覚え、レベルも上がり、多少の戦闘能力を身に備えたとしても、未だ村を滅ぼされた記憶は新しく消えてはいないのだ。

 故に我に其の弱気を責める事は無い。

 魔族の寿命は長いのだから、何れ克服すれば良いのである。


「心配せずとも良いぞ。我が居る。我はアシール、汝等の魔王である」

 その為の時間を作るのも、恐らくきっと、魔王の大事な仕事なのだ。




名称 アシール

種族 魔王

年齢 0(?)

髪色 黒 瞳 黒


レベル 5→9

生命力 100→140

魔力  150→230


STR 55→75

INT   93→121

DEX   69→93

VIT  60→80

MND  79→103


戦闘技能

武器類取扱(低)

魔術技能

魔力操作(高) 強化魔術(高) 幻想魔術(中) 治癒魔術(中)

他技能

感知(中)

ギフト

『貯金』魔王銀行を何時でも何処でもご利用になれます

現在貯金額(大)G

魔力貯金額(中)P


所持品

黒鉄の重メイス

魔王の服(防御力小、清潔、自動修復付与)




他、魔族娘等のレベルが1→5に上昇しています



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