第二話 初クエスト、初戦闘
サウザンドリーフに到着した。
「おぉ…やっぱ俺の街より賑わってるなぁ…」
『ここが目的の場所なのな?』
まずは、冒険者ギルドを探さなくてはいけない。
少し歩いていると、ひと際大きい建物があった。
「あった、冒険者ギルド…」
ギィィ
ボロボロ扉を片手で押した。
中は冒険者らしき人で賑わっていた。
ムキムキの中年の戦士らしい人、杖を持ったローブ着用の魔法使いらしい人、重そうな鎧を着込んだ人…老若男女、老人、若者、色々な人が片手にエールやら食べ物やら楽しそうな雰囲気だった。
「いらしゃいませ!こんにちわ!今日はどういったご用件でしょうか?」
一番空いている受付に並び、受付嬢に話しかけられた。
「冒険者になりたいんですが」
「はい!冒険者登録ですね!では、こちらのカードに血を一滴お願いします!」
四角く分厚いカードと針を渡された。
自分の指に針を刺し、カードの枠の中に血を一滴たらした。
少しカードが光りだした。
「はい!完成しました!発行料として20Gいただきます!」
エヴィンはバッグの中から麻袋を取り出し、20Gを出した。
「それでは、冒険者について説明させていただきます。まず冒険者には…」
要約するとこんな感じだった。
・冒険者には階級があり、F、E、D、C、B、A、S、SSまでがある。
・F、E、D、Bランクの冒険者は定期的にクエストを受けないとランクがFに戻ってしまう。
・国の法律を犯した場合、ランクに構わず冒険者ギルド名簿から抹消される。
・カード紛失時は再発行できないため、Fランクに戻ってしまう。
だいたいこんな感じだった。
「説明は以上になります!ありがとうございました!又のご利用お待ちしてます!」
終始、明るい受付嬢だった。
説明が終わり、早速クエストを受けようと思い、クエストボードを見に行った。
ちなみにエヴィンは始めたばっかの新米冒険者なので、もちろんFランクである。
「Fランクで受けられるクエストは…あった!どれどれ…」
Fランクの受けられるクエストは、だいたい簡単なものばかりで、〈薬草の収集〉、〈ペットの捜索〉、〈庭の草刈〉…
要は雑用以外ほぼ無い。
だが一つだけ討伐クエストがあった。
「シルバーマウスの捕獲…『捕獲、又は討伐した状態を納品でクエスト完了』っか…」
マウスっていうぐらいだからきっと小さくて、シルバーなんてもっとレアなモンスターに違いない。
『シルバーマウスならよく狩っていたから、探すのは簡単な!俺に任せるな!』
あまりにも静かすぎて、居たことすら忘れていたアイデンがそう言った。
そうだ、アイデンは狼なのだ、鼻はきっと利くだろう。
「おう、そうか。アイデンに自信があるならこれを受けよう」
ベリッ
クエストボードから紙を剥がし、受付に持っていく。
「いらしゃ…あ、エヴィンさん!それに可愛いワンちゃんも!早速クエストやるんです
ね!それではこちらに紙をください!」
いつの間にか頭の上にいるアイデンは狼だと言いたいが、何も言わず紙を提出する。
「……できました!では気を付けて行ってらっしゃいませ!」
俺たちの初クエストが始まった。
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『こっちだな!絶対こっちだな!』
近くの森に居るとのことだったので入ってみたが、潜って五分、早くもアイデンに反応があった。
アイデンについていくと小さな砂場があり、小さな穴がいくつも空いていた。
「巣かな?中に居そうか?」
『たぶん、二十五匹ほど居そうな!軽く掘ってみるから待っててな!』
待つこと五分…
『捕まえたのな!見るのな!』
穴から出てきたアイデンは口に三匹、頭に一匹乗せて出てきた。
「おぉ、大漁だな!こんなにいれば、かなり稼げるな!」
だがしかし、
『まだ、いっぱい居るのな!捕ってくるから待っててな!』
また待つこと十分…
次々とアイデンは巣からシルバーマウスを捕ってきた。
それもうまいことに全匹気絶の状態。
「こんな器用な面があるとは…」
結局集まったのは合計十九匹。
一匹でも十分だったがかなり取れてしまった。
「余裕で二週間ほど暮らせるな…」
『たくさん捕れてうれしいのな?』
「アイデンが泥だらけになって捕ってきてくれたから、とっても嬉しいよ。ありがとう」
そういって何もしていないエヴィンはアイデンの頭をやさしく撫でた。
そんな帰り道…
『主よ、お腹が減ったな!なんか食べるな!』
アイデンに出会った時に食べた昼飯のホットドック以外は何も食べていなかった。
もうそろそろ夕飯時。
「ギルドで換金したらうまい飯を食べような!」
『楽しみにしてるな!』
ザザッ
楽しく晩飯の話をしている時、急に魔物が現れた。
オークが一匹で現れた。
『オークなのな、こいつは雑魚な』
―オーク…単体では弱いが集団行動ができる魔物。とても繁殖力が強く、繁殖期のオークは単体でも危険。上位種はオークソルジャー、オークジェネラル、オークキングなどがいる。
鑑定のおかげでだいたいわかった。
「じゃ、初実戦!張り切っていきますか!」
エヴィンは刀を鞘から抜き、切っ先をオークに向けた。
オークはこちらを見るなり、涎を垂らしながらこっちに走ってきた。
エヴィンは軽く避け、オークの背中を斬りつけた。
オォオ、と呻き声をあげ、こちらを睨んできた。
もう一度こちらに走ってきた。
しかし、アイデンが土魔法で足場を軽く盛り上げ、オークを転ばした。
「ていやぁ!」
転んだオークにエヴィンは、刀を大きく振り下げ、頭を真っ二つにした。
断末魔すらなく、オークは絶命した。
「ふぅー、アイデン助かったよ」
『何のこれしきな』
簡単だ、と言わんばかりの力強い声で言った。
オークのほうを見てみると、割った頭の中から黒く輝く小さな石を見つけた。
エヴィンは綺麗だから石をカバンにしまった。
「よし、次こそ帰ろうか!」
『飯なのな!』