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魔物好きは魔物と共に…  作者: キザミショウガ
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エピローグ

ドスン


「良し…これで納品物はこれでおしまいだ!」


野菜がたっぷり入った木箱を馬車の荷台に積んで、エヴィンは一息つく。


畑のほうからザッザっと足音が聞こえる。


「おぉ、エヴィン。納品物の仕分け終わったか?」


話しかけたのは、同じ畑で働くエヴィンよりも少し年上の兄的存在、サバンだった。


「もちろん!ただ、トマトが青みがかってて、売り物になるかわからないよ」


エヴィンは青いトマトを何個か持って、サバンに見せた。


「確かにこれは熟れてないな。よし、トマトは俺がやってやるから、今日は上がっていいぞ。おやっさんに挨拶してこい」


「サンキュー、サバンにぃ!」


親父に挨拶しに行こうとしたとき、呼び止められた。


「エヴィン、すまん。サボリ共に声かけてやってくれ」


「りょーかいー」


今度こそ親父のもとに走って行った。


親父は紙にペンを走らせながら納品物の確認をしていた。


おやじー。仕事終わったから先に家に帰るぞー!」


「おう、エヴィン。お疲れ!俺も納品物の確認が終わったらすぐ帰るぞ」


親父に手を振って先に家に帰った。


家の前に来たとき(言っても家は畑のすぐそばだが)とてもいい匂いが漂ってくる。


ドアを開けたらかーちゃんがご飯を作っていた。


「かーちゃんただいま!お腹減ったー」


農業用の靴を玄関に置き、部屋用の靴に履き替えた。


「おかえり。手を洗って着替えてきなさい」


かーちゃんが笑顔で出迎えてくれた。


「お父さんはまだ仕事?」


スープを器に移しながら、席に着いたエヴィンに聞いた。


「親父ならまだ納品の確認中で…」


話をしていたら丁度帰ってきた。


「ただいまー!いい匂いがするな!エル、今日の晩飯はなんだ?」


帰ってきてそうそう、うるさい親父とともに晩飯を食べた。


晩飯を食べ終わった後…


「ところで親父。誕生日迎えたらこの家を出て行こうと思うんだけど」


沈黙の空気、とても重たい。


「…え?」


かーちゃんが驚きの声を上げた。


「だから、この家を出て冒険者になろうって思ってて」


「お前、それは本気で言ってるのか?」


普段優しい親父は絶対に見せない顔をし、少し威圧をかけて静かにそう聞いた。


「この家を出ても、今後の生活はどうする。寝る場所、食べ物、まず金だって武器だってろくな装備がないのにどうやって冒険するつもりだ?」


親父の言っていることはすごくわかるが、対策とってある。


「貯金はある。宿を借りて寝れる。武器は前に親父と狩りに出たときに使った剣がある。少なくとも節約すれば二週間は暮らせる見込みがある。その間に簡単なクエストでも受ければ、もっと長く暮らせる」


「あの剣は刃毀れしていたろ?」


そう、前に狩りに行ったときは護身用、緊急用に持っていていただけで、実践には使い物にならないぐらいボロボロだった。


もちろん、それに関しても対策していた。


「それはしっかり切れるぐらい砥いでおいた。装備だってちょこちょこ街にに行って揃えた」


真っ直ぐな眼差しで親父に言った。


「そうか。お前がそこまで真剣にしていとは…よし!15になったらこの家を出ていけ!」


さっきまでの真剣な顔を忘れるぐらい満面の笑みでそう言ってくれた。


「それはお母さんも同意見よ。エヴィンがそんなに真剣に将来のことを考えていたなんて…お父さんもこう言ってることだし、胸張って行きなさい!」


かーちゃんも笑顔で親父と同じことを言ってくれた。


「親父もかーちゃんもありがとう!立派な冒険者になって帰ってくるよ」


二人とも分かってくれたみたいで良かった。


その次の日から身が軽く、仕事に専念できた。


そう、俺は自分のスキルを使って、大好きな魔物と共に旅をするのが夢だった。


そして迎えた誕生日兼、旅立ちの日。


いつもの仕事を終え、家に帰ってきて、ドアを開けた瞬間、


「「エヴィン、誕生日おめでとう!」」


笑顔の両親に出迎えられた。


二人に押され、椅子に座った。


いつもより豪華なご飯が並んでいた。


「エヴィン、お前は立派な15歳だ。そして、お前に俺たちからプレゼントがある。受け取ってくれ」


大きな木箱が渡され、それを開けた。


そこに入っていたのは、鞘に入った細身の剣と、冒険用のバッグが入っていた。


俺は木箱から剣を取り出した。


その剣はやけに細く、軽い剣だった。


『これはなんだ?細すぎて折れそうだが…』


「それはカタナって言うんだ。異国の代物でかなり高かったんだぞ!細くて折れそうだろ!ガハハハッ!だがな、お前が持っている剣より、それは切れ味が格段に上だ。それにあの剣じゃ心許無いだろ?」


心の声を読むかのように教えてくれた。


「良いものらしいらしいわ。旅で役立ててね」


かーちゃんが微笑みながら言った。


「カタナ…気に入ったよ!親父!かーちゃん!ありがとう!」


楽しい誕生日会が終わり、そして旅立ちの日。


「それじゃ行ってきます…親父、かーちゃん、今までありがとうございました」


深々と頭を下げ、両親にお礼を言った。


「エヴィン、あなたは外の世界を知らないわ。あまり人に迷惑をかけないでね」


かーちゃんが心配そうな顔をしていた。


「その辺は心得てるよ、かーちゃん。心配しないで」


笑顔でかーちゃんに告げた。


「俺からは何も言うことは無い。ただ、これだけは言っておく。必ず帰ってこいよ」


「もちろんさ。必ず帰ってくる。その時は畑仕事を手伝うよ」


「期待してるぞ!ガハハハッ!」


親父は豪快に笑った。


そして、ドアを開けた。


両親にもらった大きなバッグを背負い、カタナを腰に下げて。


ガチャ


「行ってきます」


「あぁ、行って来い!」


バッタン


「行ってしまったわね…」


「そうだな。この家が静かになったな」




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