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巨乳の悲しみ―――!




「ふう。ま、実際問題困ってるのは事実なのよね。可愛い物がなさすぎるわ」


ちらりとカーテンを開けて外を眺めるミーシェちゃん。

あのちょっと、見えちゃうからやめてくださる?


「色合い的にもどうしようかしらね。まあ、白はないわ。んー、黒はそこの妖精と被るし」

「………」

「ピンクは派手過ぎね。貴女は可愛いという言葉も似合うけどそれ以上に綺麗すぎるから、女の子っぽすぎるのは駄目ね」

「は、はあ………」


個人的にも流石にピンク色は精神的に辛いのでそういってもらえるのはありがたいんだけど、ミーシェちゃんの思考がものすごい速さで回転しているようでなにか口を挟む余裕が一切なかった。


「落ち着いた色合いの方が良いわ。どうせサイズのせいで形状はあまり拘れないし、色だけで可愛い物を選んだほうがマシね」


そういって一度個室から出て戻ってきたミーシェちゃんの手に握られていたのは、薄い水色の下着一式だった。

うーん、いや改めてみると本当にサイズ感が違う。水蓮の着ている黒色の下着よりもさらに大きいため、確かに少しだけ可愛らしさは減少しているように見えた。

まあ可愛さはどうでもいいのだ、うん。それ以上にその下着一式には問題があるんだよね、結構大き目な。


「………待って?あのさ、それ―――Tバック下着だよねぇ?!」

「そうよ?」

「着れるわけないでしょ!恥ずかしすぎるって!」

「はあ?馬鹿なこと言わないでよね。貴女のお尻の大きさで普通の下着が収まるわけないでしょ?」

「ぐはっ?!い、いや今着ている奴ちゃんと着れてるし!」

「可愛さやら色気やらを犠牲にしてね。そんなの、私は認めないわ」


残念、ミーシェちゃんの意志は固いようでした………。

そしてそのまま下着を持ち上げると、俺の胸やお尻に合わせてくる。サイズを見ているのだろう。

俺から見れば実際に来てみないと分からない下着のサイズだけれど、女性は割と見ただけで下着のサイズが自分に合っているかを見分けることが出来るからすごいと思う。

真似したいかは別としてね。


「いや、でもやっぱりちょっと恥ずかしい、よ………」

「ふむ。私は良いと思うが。面積が少ないのはいい事だ」

「あんたは確かに大きいけど身長相応でしょ。マツリの場合はTバックじゃないといけない理由があるのよ」

「………理由?」


首をかしげて聞いてみる。


「そ。今、貴女が着ているその下着でサイズギリギリのスカートはいたらどうなると思う?」

「どう………?んー?」

「答えは下着が透けるのよ。お尻が大きい場合、特にショーツラインなんかはよりはっきり見えるわ」

「えっ!?」

「知らずに過ごしてたみたいだけど、今までの貴女は下着をさらけ出しながら生活してたものなのよ?まあ、ゆったりした服装してれば確かに要らないけど、それでも水に濡れたりしたら結局見えるし」

「た、確かに知らなかった………」


そっか、下着って透けるんだ。そういえば男の頃、現代の街中を歩いていて下着透けている人とか会ったことあるけど、自分がそうなっているのかもしれないという意識に一切向かなかった。


「中でも一番お尻の中で出っ張る後ろがラインとして出やすいのだけれど、Tバックを付けていればその部分がないから浮き出ないのよ。この意味がお分かりかしら?」

「ハイ、ワカリマシタ………」

「よろしい。じゃあ、着てみなさい」


そうして差し出されたTバック下着を手に持つ。

凄い、なんか本当に後ろの方は紐みたいだ。ミーシェちゃんが持ってきたものはTバックの中でも特にギリギリの物のようで、背後には布地の部分は殆どなかった。

頭の中の知識さん曰く、これはGストリングというタイプのTバックらしいけれどそんな知識要らないのですよ?

さて。うん、そんなわけでこのタイプの下着は前布も結構小さいんだけど………ま、まあ俺の身体はあれだ。女性にも必要な下の毛の処理とか、そういうのとは無縁なので全然着れるんですけどね!

ごくりと唾を飲み込んで今着ているパンツを脱ぐ。そしてTバックを広げ、足元へ。

勢いをつけて引き上げ、完全に着てしまう。


「どう?」

「―――い、意外とフィット感がある………」

「そうでしょうね。見た目の割に身体に合うのよ、そういう下着は。鏡見てみなさい」

「え、あ。うん」


上もさっさと付けてしまってから………すでに脱がされてたから着るのは楽だった………姿見の前に身体を晒す。

う、やっぱり前の布部分、クロッチが小さいなあ。結構ギリギリだ。ああ、何がギリギリかは聞かないでください。分かるでしょ?

後ろは………はい。もうほとんどお尻の隙間に隠れてしまって股布へと続く紐部分は見えなくなってしまっていた。やっぱり俺、もしかして太ってるのかな?


「いいじゃない。似合ってるわよ―――それにしても本当に大きいわねぇ」

「私にもその胸と尻の大きさは再現できなかった。何を食べればそうなる」

「やめてよもうほとんどコンプレックスになってきてるんだよ!」


かつて思っていた巨乳巨尻はいいよね、なんていうものはただの幻想に消えていきました!ロリ巨乳とか実際になってみれば面倒くさいだけじゃないか!

今日一日でこの胸やらお尻やらに大分苦手感が出てきてしまった。くそう、厄介者めぇ。

でもそれはそれとして、下着はものすごく身体に合うのが悔しい!今まで着ていた地味な下着は俺がオーダーしたものだ。

女性の先輩であるミーアちゃんとかも本当は、こういうのを着せたかったのかもしれないなあ。


「さあ決まったら早く買いに行きなさい!次はお化粧教えるんだから!」

「け、化粧かあ………いらないと思うんだけどなぁ」

「はあ?もし好きな人が出来たらどうするの?代り映えのない顔を晒し続けるつもり?第一高貴な身分の人の前に出るときだって化粧は大事なのよ?しないと不敬罪になることだってあるんだから」

「に、人間社会って面倒くさい………!」


思わず人外を感じさせるような言葉が出てしまったけど、しかたないよね。まあ半分人間じゃないしこういうことが偶に口から出ても問題ないよね!

しかし、王族の前に出るときに正装をしないというは失礼にあたるのは間違いないだろうし。そして化粧もまたその正装の中に入るのは事実なのだとは思う。

でもなあ。お化粧かあ。本当に男としての尊厳が完全消滅しちゃうような気がするんだよなぁッ!


「あはは!まあ、仕方ないかぁ!」


約束だから、ね。ミーシェちゃんが一緒に来てくれるための条件なんだから、我慢我慢っと。

男としては微妙だけれど、ほら―――友達としてこういうふうにわいわい楽しむのは別に嫌いじゃないからね。

苦笑を浮かべると、Tバックの紐を指で直してカーテンから顔だけを出して店員さんを呼ぶ。折角だからこの下着、このまま着ていってしまおうかな。


「すいませーん!この下着と、それからこの子が着ている下着をください!」

「かしこまりました。お値段は―――」

「うぇっ?!」


―――今日、一つ知った教訓。それはね、女性下着は………とっても、高いということでした!うわん!





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