貴方が観測者か?
俺とシャルロットは、あのまま上空の汚い花火を見ながら、
某軍の施設、いやここは敢えて軍とは言わないでおこう、訂正しておく、とある国家施設に居た。
「俺は、俺の記憶しか無い訳だが、お前は何か知っていそうだな、教えろ」
そういう言葉が出た。
ここまでの彼女との経緯を考えれば、当然だ。
ここまでの彼女との経緯は詳細まで語ればキリが無いが、
本質的には現実を的確に表現する、何もかもがシークレット、詳細に語られていないと、今に成って気づいた。
どれだけ俺は、物語的に言えば佳境、を、繰り返したのか、改めて思い知らされる、今、だった。
「わたしは、貴方が観測者という、超越的な存在だと、知っているわ」
「観測者? なんだそれは?」
「観測者は観測者よ、呼び方がそうだから、そう、内容までは、今のわたしじゃ的確に表現できる自信が無いわねぇ」
「それでも表現しろよ、断片的な情報でもいいからさ」
「いやよぉー、わたしって優雅な語り口調が好きだから、
物語的な説明責任を放棄してでも、曖昧な感じの物事を、知った上で話すなんて、私という存在のプライドが許さないのよ」
「はい、そうですか、わかりました、それじゃあ別の説明を頼むよ」
「そうね、わたしは、貴方の観測者としてのサポートをする観測者よ」
「はあ? どういう意味だ?」
「そのままの意味よ、貴方はわたしを生み出した、観測者として、よ」
「俺がお前を?」
「そう言ったわ、
それで、貴方の生きる、現状での意味とか、そういうのがこの場合、
物語の説明責任として、重要度が高いのかしらね?」
「ああ、そのメタ臭い、人生を物語扱いするってのは、観測者の特徴なのか?」
「さあ、少なくとも私は、わたしの語りの特徴程度だと認識だけど、もしかしたら可能性として、そうかも。
それじゃあ、さっきの説明。
貴方は、かなりランクの高い観測者である。
そして、さらにランクの高い観測者の、小説のファンである。
そして、その観測者が、とある世界で小説を書いていたのだけど、制約を受けて、どこかへ行ってしまった。
貴方は、なにが何でも、その小説の続きを読みたくて、追いかけるの。
でも、その観測者が行った先は、さらに高次元の世界で、情報を創造する上での制約の緩い、上位の世界だった。
だけど、貴方はその世界に行けるほどの、言うなら徳のようなモノを積み重ねてなかったのよ。
それから、色々あって、この世界に居るの」
「なるほどね、わかった、とりあえずは、そういう事を断片として、俺は俺の事、事実として認知はしておく、納得はしないがな。
それで、他の質問、お前はどうして、そういう形なんだ?」
「どういうこと?」
「なんで、そんなに美しいんだ?」
言うと、シャルロットは、よがった、いや漢字で言うのは気が引けるのだがな、ヤバい感じに、成った。
「おい、どうした、壊れたか?」
「知らない? あら、そう。
だったら、表明するのだけど、
わたしは、貴方が心の底から好き、愛しているのよ、
わたしの全部を、今のこの瞬間に全て捧げたいと、常に思っているくらい、
だけど、それを表面に出すのは、クールな性格と優美な動作を強いられる、わたしには不可能、
だから、こうやって冗談として、おふざけとして、振りでお笑いとして、貴方に本心が伝わる可能性に賭けてるの」
「はあ? どういうことだ?」
「つまり、貴方にそんな事を言われたら、嬉し過ぎて失禁しそう、
だけど、私というパーソナリティーは、それを認められないから、ネタみたいにして、みた、今がそう」
「ああ、なるほどな、わかった、
それで? 具体的には、俺はどういう発想で、お前を作ったんだ?」
「まずは、寂しかったのでしょうね、それだけは間違いが無い、
わたしは与えられる情報だけで判断するけど、きっとそう、貴方は寂しかった、
恋焦がれる存在に似せて、己の半身を削ってまで、他の観測者として作るなんて、そういう動機、
二人が一人になるのが必然だと、そう定まったような、そんな関係性を夢見ていたのよ、貴方は」
「お、おう、分かった、もういい、それくらいにしておけ」
「はい」
「さっきの話に戻ってくれ、俺の生きる目的に、その続きは?」
「そして、今よ。
貴方は、この世界に来た、それは最も目的を達成するのに適していたから。
さきほど言った、徳を積む方法だけど、
具体的には、世界に貢献し、己に貢献し、運命力、必然力、言うなら善行のようなモノを詰むのが手っ取り早い。
わたしは貴方にソレを、後付け的な運命力と習ったわ。
そして、貴方がこの世界を選んだわけだけど。
この世界は、とある存在が、とあるシステム、
簡潔に言うと、全人類の無意識を統合させて、広大な電脳ネットワークを構築、
それによって精霊の存在する世界を現出、現実とつなげたみたいな形に成っている、この世界、
この世界が一番、長続きするのよ、
大抵の世界は、簡単に滅んでしまうから、この世界を選んだんでしょう」
「なるほど、良く分からないが、それも断片の一部として、集めておく。
それで?」
「貴方は己を高める為に、この世界を選んだ、
でも経験値を稼げる場所って、生ぬるい場所じゃないのが当然でしょう?
貴方は様々な制約を受けた、観測者としての万能な能力を封じられている形が、その証左。
だから、迂回の手段、
今までの貴方の人生、音響によってリズムを、指先によって複雑玄妙な動作をおこなう、
それがこの世界で、最も安易に、最も効率的に、強さと呼ばれるモノを生み出す最適解だと、知っていたのよ」
「これがか?」
「そう、それさえあれば、大抵の無理は通るから」
「お前もできるのか?」
「一応はね、貴方ほどじゃないわよ」
俺は全て、断片集として、己の中で再構築しようとしたが、諦めた、全ては、本当にただの断片だったのだ、少なくとも、俺の中では。