旋律のフレアとビックバン
彼女は詠唱を始める。
それは言葉にできない、描こうと思って失敗する、しかし故に、物理法則を超越した。
さらに太古の魔法文字を、指先で描く、そんな事に意味も価値もない。
だが奇跡が発生する、彼女には分かっていた、この巧妙な指先の動作が、大いなる意味と価値を生み出す、と。
「大正解、遥かなる昔から、わたしは、これだけの使い手だった」
武器、魔本の特性が手に取るように分かる。
これまでの人生の集大成が、これを操る、全ての糧となるのだ。
俺のも、大正解。
いや、宝くじで一発で億単位を当てる奇跡に相当する。
俺が救い、殺めてきた、これは必然性、奇跡性、運命力に寄るものだと痛感と共に自覚している。
「空間戦に開始」
視覚的にも言語的にも、なにもかもでも表現できない事象が、目の前で展開される、
それでも敢えて、強いて、原語で表現するならば、
彼女を中心にフレアが拡散、それが振動し、反響して分散、ぶつかりあって、彼女の任意座標で、任意の時間軸で、瞬間的に爆発する。
俺は爆発する。
触れたモノの組成を変化させるビックバン。
空気すら例外じゃない。
俺が爆発する。
空気が爆発する。
空気と陸続きの空気が連鎖的に爆発する。
「爆発は爆発で相殺するのが、良い」
「そうね、使い手の力量次第で、何でもアリなのは、お互い様! かしら!」
そのように戦い続けた。
そして終わった頃には、ウォームアップは終了している。