月の満ち欠ける夜に
「全てを愛する憎む、無上の強度で、ということ」
人間であって、人間で無くなるとは、つまりはそういう事だ。
「極点を極めれば、何時かは至れる心境だと思うけど」
神のような人、聖女。
この学校で持て囃される代名詞を当て嵌めるならそう。
「死ねば、今すぐに、至れると、そう思ったの」
俺は止めた、彼女は俺だから、俺に死なれては困るのだ。
「下らない死ぬな」
「はあ?」
「お前は俺だから、死ぬな」
「はあ、そう、貴方の言いたい事は、九割九分九厘、分かります」
「そうだろう、お前は俺なんだから、そう、分かって当然だ」
「少なくとも、貴方の中では、きっとそうなんでしょうね、分かりますよ」
「分かってくれるか、ならば良し」
「そして? どうしたいんですか?」
「俺はお前という俺に、興味を持った、愛着を持った、だから付き合う」
「はあ? なるほど、、、そういうことですか、分かりますよ」
「そうだろう、そうだろう」
「つまりは狂信、貴方はわたしを貴方と思う事で、自殺を阻止する事によって公明を得た、違いますか?」
「どういうことだ?」
「例えるなら、狂信の方向性をわたしに向けて、安定を得たというか、最初から破綻している理論を無理やり纏めた、というか」
「いいや違うな、早急に処置すべき俺を、お前という俺に定めたにすぎん、きっと勘違いしているんだな、違う」
「はあ? どういうことですか?
わたしはただ、自殺を真に阻止した貴方を、運命の相手として、憎み愛そうと、境地を極めたいと思っているだけですが」
「だからどうした、俺の分際で、俺に救われておいて、俺の意図しない会話をするな、理解も実感もおぼつかん」
俺はため息を吐く、月の満ちては欠ける空、今日は月見日和だったのだが。
「・・・・・・」
どうやら、わたしの中の天使は、大いに狂信的であるようだ。
天使は概念的に存在する。
両性具有、男と女を内に共存する。
時代は移り変わり、人間と交配し過ぎた天使は、概念と物理の中間に位置した。
そしつ終に、男と女で一つの生命体として二つに分かれた。
結果がこれ。
狂信的で、月の満ち欠けで記憶の共有・更新が行われる姿。
彼は全人類を代表するかのような聖人、わたしは彼を見守る天に住む唯一人の人間なのだった。
設定不詳な推理ゲームようなミステリー要素あり?