表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
数センチ先の異世界  作者: 笹川一木
1/1

1.懐古する男


見たくもない世界に目を背けて生きてきたが、よく現実逃避している。 いや、現実逃避し過ぎている。 等と言われたものだ。

それはすべからく正しい。 俺は過去の俺に夢想するのが好きだからだ。

だからよくボーッとしてるとか、話を聞いてるのか分からないとか、何を考えてるか分からないとかをよく言われる。



「アレだ。 独り言多いしな、俺」



昔は良かったよ。

なんて言葉があって、それがじーちゃんの口癖で、俺はお爺ちゃんっ子で、餓鬼の頃から振り返っては諦め、振り返っては学び、取捨選択を間違えては落ち込み、記憶に残る幸せな思い出でテンションを上げた。



「思い出に浸るのは楽だからなんだが、アレだ。 いろいろぶっ飛ぶくらいの衝撃だと余裕とか無くなって今にしか目を向けれなくなるんだな」



基本、楽をしたい性格の俺は、困難に立ち会うと決まって過去に似たり寄ったりな状況が無かったかを思い出す。 それから対処法とか、その時学んだのが何だったのかで状況打破に努めてきた。


なので初体験とかに弱い。 とことん弱い。



「生まれ落ちて25年。 最上蓮司(もがみ れんじ)にもいよいよ拉致監禁の経験がアップされました。 おとーさんおかーさん、はよ、身代金はよ」


「うるせー!! 黙れや人質!!」


「アッハイ」



突きつけられる刃渡り30センチはありそうな包丁。


(アレ刺身包丁だな)


うつ伏せに寝かされた25才の男。 その他三名の人質達。


(状況打破? いやいやいや、むーりー)



「速く脱出用の車持ってこいやっ!? 人質がどーなってもいいのか!? おぉん?」


「落ち着いてくださーい! 今用意して持ってきてまーす!」


「速くしろぉっ!!」



興奮する犯人。 右手には刺身包丁。


(どうしようもないな。 大人しく事が過ぎるのを待とう)



「ちくしょっ! ちくしょう! どうするどうするどうする、にげられない? 無理? ちっくっしょ!! 何でこうなる!?」



目出し帽被って凶器まで持ってきてコンビニに押し入り、現代科学のスマホで110番されてしまい、挙げ句に無計画な人質作戦にまで発展した。


(完全にキャパオーバーだな)


初めてやることだろう強盗(それは)、あまりにも無計画過ぎたのだ。


(早く終わんないかなぁ? 犯人さん諦めて投降してくれないかなぁ?)


等と言われたところで彼が諦めるとは思わない、ってあれ? 何故にこっちに近づくの?

あれれれれ? ちょっあぶなっ、あぶ、へ? ちょっと待って待って、



「待って下さい。包丁危ないですから、怖いなぁもう」


「うるさいっ! 命令すんな! いいからちょっとこっちこいよ!」


「痛い痛い! 暴力はんたーい」


「だまれっこの!」



ゴンって感じの鈍い音が頭から聞こえた。 あ、これ殴られてますわ。 暴力反対とのたまって暴力を受けるとはこれいかに?

流石の最上さんも切れそうになりま、あぁすいませんすいません! 大人しくしとくから勘弁して下さい。


(こいつ、包丁の柄で殴りやがったな? いたーい)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ