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ぼーい♂⇔みつるぎ⇔が~る♀  作者: 大竹雅樹
8/33

かみあり⇒わけあり

 昔馴染との感動の再会から十数分後、


「武器に宿る神様が通学する女子校ーーーーッ!?」


 天城先生から一通りの説明を受けたオレの第一声がコレだった。


「そう。日本だけでなく世界中から様々な武器の神様がね。豊葦原瑞穂学園はそういう武具に宿る精霊や神霊に現代社会での神としてのありかたを教育し、武門や学問を通じて神格じんかく形成を促すのを主眼としててね。みんないっぱしの神様になるためここで鍛錬と学業の日々を送っているんだよ」


「なんでわざわざ日本で?」


「こういう宗教が異なる神々を一箇所に集めるには、古今東西なんでもありの日本が一番やりやすいんだ。なにしろ日本は万物に神が宿る八百万の神の国だからね。著名な神々はもちろんのこと、現地ではすっかり忘れられてしまった古代の神や、シェア争いに負けて悪魔に貶められた異郷の神すら、この日本では漫画やゲームなどの形を借りて当たり前のように認知されている。日本ほど神々が好き勝手に活動できる国はそうないと思うよ」


「そんな簡単に言いますけど、ンな神様が普通にゴロゴロいる学園ってどうなんですか。オレと羽々斬の交流ケースだって、神様が顕現しやすい神社のお祭りのときにしか逢えない、かなり厳しい限定がかかってたってのに」


「そこはほら、ここは出雲の国だから。神在月に全国の神様が集う八百万の神々の最重要拠点の土地柄は伊達じゃないってことさ」


 すげーなー島根県。まるで神様のバーゲンセールだ。


「そして私たち第一期生は三年間の中等教育を終えて今年からピカピカの高校一年生っ。ちなみに高等部の全校生徒は約150めいで全部で五クラス。人間界からの留学生になる緋色ちゃんは、今日から私たちのいるEクラスに所属だよ。一年間よろしくね」


 パチリとウインクをする羽々斬。

 やたら忙しないオーバアクションな挙動は昔とちっとも変わってないけど、三年前と比べてすっかりオトナの身体になった。


 特におっぱいのあたりが。


「男子三日会わざれば刮目して見よっていうけど、神様も成長ってするんだな」


「ふふーん、驚きましたか? 三年前までは配神として大眼様の神社に迎えられて半世紀も経つのにイマイチ神格が伸びなかったドジでノロマな神様でしたけど、大眼様にこの学園で地金から鍛えなおしてもらってこいと神社を叩き出されて早三年。神格が上がれば見た目も成長して変わるもの。もうドジでドベでドンくさい、御利益のほうも微妙に怪しくて 御守関連グッズの売れ行きもアレな恐怖の3D駄目神とは呼ばせません!」


 たゆんと胸を揺らしながら羽々斬が自慢げに鼻を鳴らす。


 オレの知っている当時の羽々斬は小学生四年生かそれくらいの外見で、ワンパクで手のかかる妹みたいな存在だった。


 あのころ持っていた十握剣も大きめの包丁ぐらいのサイズだったし。


 それがいまやコレですよ。感想としては順調な正当進化という感じだ。

 見た目は若干の少年っぽさをカンジさせるスポーティーな健康女子で、スカートの下にパッツンと張りよく輝く黒スパッツが彼女の活動的な性格をよく表してる。


 かといってボーイッシュに引き締まったスレンダー体型かというとそうでもなく、元気快活なキャラクター性とは裏腹に、胸のほうは彼女が振り回していた両手剣に負けず劣らずの特大サイズだ。



 そう──

 それはオッパイというには、あまりにも大きすぎた。

 大きく、分厚く、重く、そして大雑把過ぎた。

 それはまさにボイン(死語埋葬済み)だった。



「緋色ちゃん、なんか凄いえっちな顔してる……」

「なぜバレた!?」


「緋色ちゃんはすぐ考えてることが顔に出るから一発で分かるよ。エッチすけっちだよ。セクハラだよ。他の子にもそんなだらしない顔向けたら本気で怒るからね」


「ああ、視線が完全に羽々斬くんの胸に行ってたね。教育者としては注意かな」


 二人からの総ツッコミ。

 ぐぐっ。そんなに眼に見えて分かりやすいほど鼻の下を伸ばしていたのか。

 スケベだっていいじゃない。人間だもの。みつお。


「それじゃあ当然、クラスメイトの面々も羽々斬と同類なんだよな?」

「モチのロンです」


「つまりオレ以外のクラスメイトは、すべて武器を持った女の子と?」

「ううん、武器を持った女の子じゃなくて、女の子が武器」


「クラスメイトは全員【武器じょし】……ね……」

「はい」


「お前、ここまでベッタベタに日和見して、神の威厳はどうした……」


「日和見とは失礼な! そりゃたしかにむっさい男神よりもかわいい女神のほうが信仰のシェアが取れるのは事実だけど、もともと女人禁制の男の世界で使われる器物の神様はみんな女神が当たり前。ほら、船とかの名称って基本的に女の子の名前でしょ? あれと同じ男の世界特有の法則なんだよ。だから武器が擬人化すれば女の子になるのは世界の理も同然っ! なんの問題もナッシングっ」


「強引にもほどがあるッ」


 あぶねぇ、羽々斬の無根拠に自信満々な勢いで一瞬、納得しかけそうになった。


「この学園で男性と言えるのはキミとぼくの二人。あとは学園長の天目一箇神様とヘーパイストス先生とゴブニュ先生の三柱かな」


 続けて天城先生が説明する。

 生徒の説明にも度肝を抜かれたが、教師の名前はもっと凄い。

 どれもこれも一流の鍛冶の神様の名前じゃないか。

 天目一箇神様は大眼様と同一神格でうちの地元では超ドメジャーな鍛冶神様だ。

さらにヘーパイトスといえばギリシャ神話に出てくるオリンポスの鍛冶神様だ。

 ヘラクレスの栄光ではお世話になりました。


「うーん。やっぱりいいですよねー、武器と美少女の組み合わせは。神の概念の擬人化は古代から続く伝統文化。しかも日本は明確なビジョンのない器物神さえ偶像のビジュアル化が許される。世はまさに大擬人化時代。こういう偶像が何の抵抗もなく受け入れられる八百万の神様に生まれて本当によかったーって思いますよー。しかも今は銃とか戦艦とか刀とか城とかの擬人化が大人気だし!」


「じゃあ、いま通りがかったツインテールの娘も? そこの中庭で本を読んでる眼鏡っ娘や寝そべってるロリっ娘も、みんな武器の神様?」


「うん」


「…………」


「緋色ちゃん、いま『すっげー頭の悪い設定』とか思ったでしょ?」


「イエ、ソンナコトアリマセンヨ」


 羽々斬にジトっとした目で見られ、図星を突かれたオレは慌てて手を振った。


「緋色ちゃんは甘い。神とは人の心の写し身。神様というのは時代や土地柄や文化の移り変わりによって、そのビジュアルやデザインも変化するもの。異邦からやってきた渡来神が布教の過程で土着信仰に影響されて、本場とはベツモノのカタチで現地民に信仰されるなんてよくあることなんです。特に日の本の国なんて古代から魔改造が当たり前のお国柄なんですから、地方各地の神社に派遣された分霊の中に、一柱くらいオリジナルの御本尊と懸け離れて萌えキャラ化した神様がいたっていいじゃないですか!」


「待て、理屈は分かるが明らかにおかしい。あと自分で萌えキャラ言うな」


 いやね、オレもね、こういう平凡な日常から一変して異世界でハーレム生活とか、女子校に一人だけの男子生徒として入学とかいう展開は大好物ですよ。


 ただね、ヒロインが人外ばかりというのは上級者向けすぎやしませんかねぇ。

 しかもエルフとかの亜人ジャンルすらスッ飛ばして。

 いきなり武器の擬人化ヒロインとか……


 さっき羽々斬が言ったように、最近はゲームやアニメで城とか船とか銃とか刀剣とかの萌えキャラ化が流行ってるし、フィクションの世界ならそういうのもアリで全然かまわないんだけど、さすがに現実でコレをやられると痛い。


 この状況を中学時代の友人たちに自慢なんかしてみろ。

 絶対に頭がイカレたと思われる。


 彼女いない歴が実年齢と正比例してて、異性との交流にガツガツにがっついてる思春期真っ盛りのオレでも、女の形をしてるならなんでもいいってわけじゃなくてね、もうちょっとこう、なんというか、手心というか……


「じゃあボクの中学時代みたいに、筋肉ムキムキのとても中学生には見えない老けた十四歳たちが伝説の武器を持ち合ってバトルロワイヤルをする、血と汗と涙と劇画調の熱血バトル路線のほうがよかったかな?」


「あ~、落ちたら溶ける闘場で拳法バトルする系のやつですね」


「いや、先生……80年代の少年漫画ならともかく、この二十一世紀でその路線やったら十週打ち切り確定ですから。ラノベでも二巻打ち切りが妥当になる設定と絵面かと」


「じゃあライトノベル的に当たり障りのない萌え擬人化キャラ路線でいいよね?」


「うわぁ」


 あえて言及を避けていたメタフィクション発言を先生自ら言っちゃった。


「もう、せっかくのファンタジーな世界なんだから、もうちょっと人生を愉しみましょうよ緋色ちゃん。大して取り得のない一般庶民の男の子が、ひょんなことから美少女だらけの学園に通うことになってハーレム生活といえば、全国のモテない男の永遠の夢なんだから」


「そういうことを自分で言うかなぁ……」


 とても神様のセリフとは思えません。


      本日の【伝説の武器】うんちく♪


○『布都御魂剣』(ふつのみたまのつるぎ)

布都御魂ふつのみたまは、記紀神話に現れる神代三剣の一角である。

 またの名を『佐士布都神さじふつのかみ』、『甕布都神みかふつのかみ』とも言い、ふつは剣

振る擬音を表している。

 布都御魂剣の主である建御雷神たけみかずちのかみは、これを用いて、葦原中国あしはらのなかつくにを平定した。

 また布都御魂剣自体が建御雷神の分身であるという説もある。

 神武東征のおりには、神武天皇が登美の長髄彦ながすねひこの抵抗にあい苦戦を強いられていた際、高倉下たかくらじががこの都御魂剣を献上し、大和征服に大いに貢献したとされる。

 布都御魂剣とされるものは全国で複数本存在し、そのうち一本は石上神宮の主祭神として もう一本は『平国剣くにむけのつるぎ』の銘で国宝の指定を受け鹿島神宮に所蔵されている。

 創作ものでは出番は少ないものの、概ね強武器に設定されることが多い。

 あれ? いかんな。真面目シリアス武器すぎてネタでいじれない(困惑)。


《近況報告》

まずは一章完結です。ここからEクラス【鈍刀学科】編に入ります。

主人公とヒロインに負けず劣らずの、『濃ゆい』マイナー武器たちの登場に

御期待ください。知名度低くたっていいじゃない。キャラが濃ければ。みつお。

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