葵くんの悩み
「そう言えばお前、最近部活どうなんだ?」
あれからクラスメイトの事で散々葵と悩んだあと、俺はふと気になったことを口にした。
葵は現在、部活に入って活動している。家の都合で週三回は、早く部活動を切り上げて帰る事になっているらしい。
こうして今二人で帰っているのも、週三回の家の都合ではやく切り上げたからだ。
「あはは‥部活か‥」
俺の言葉に葵は何かを思い出したのか微妙な顔をした。
「ん?何かあったのか?」
出会って一ヶ月の付き合いだか、葵がそんな顔をするのほ珍しい。
水川 葵と言う人物は常に笑っていて楽天的な考えを持つ。たまに意味分からないことを言ったり、聞いたことの無い歌を話しの途中でいきなり歌いだしたり、つねにポジティブな人間だ。何かに悩んだり落ち込んだりする所は珍しい、とゆうか絶対に無い。
「ははは・・・何かってゆうか・・最近、部活の皆が冷たくてさ‥」
「冷たい?どんな感じで?」
「なんて言うかさ‥」
そうして葵の口から語られたのは今から一時間前のことだった。
ーーーーーーー
一時間前
「ねえねえ、みっなちゃん〜」
「‥‥ふ〜ん‥‥」
「‥‥」
無視。
「なーなーちゃ〜ん」
「うせろ」
「‥‥」
追い出される。
「ゆっゆかちゃーん‥‥」
「水川さん、黙ってて」
「うわーん‼」
とうとう僕は泣いた。
ーーーーーーー
「皆んなさ、話し掛けても冷たくてさ‥」
「お前嫌われてないか」
なんだ、その部活!?
俺が、マジかこいつてきな目で見ていたのに気づいた葵は、はっとしていきよい良く首を横に振りだした。
「ええー‼そんな事ないよ!。嫌われてたらもっとひどいし‥」
「どんな?」
俺の問い掛けに、葵は少し戸惑うそぶりを見せた。
だが、しばらくして口を開いた。
「えっとね、力ずくで部活から追い出そうとするんだ‥」
「怖いな!」
もう一度言う、なんだその部活!?
「お前の入っている部活なんなの?」
一体、葵の入っている部活はなんなのだろうか。気に入らない部員を追い出せるということは、力関係のある体育系の部活なのだろうか。
「ええと、げっ芸術部なんだ」
訂正、全く関係無かった。思いっきり文化系だった。
もう三度言おう。なんだその部活。
「お前‥その、大変だな‥」
俺はなんとも言えない顔で葵を見る。
そんな俺の様子を見た葵は、肩を落として苦笑する。
「いやそうでも無いよ、皆んなと部活動するの好きだし、楽しいよ‥‥」
葵はふいに夕陽が落ちてオレンジ色に染まった空を眺めて言った。その顔は僅かに目を細めていて、何かを思い出しているようだ。
沈黙がしばらく続いた。
ただ二人分の足音が聞こえた。
一分、それ以上の長い時間が経ったように感じた。
葵が口を開く。
「でもまぁ、文化祭の期限が迫っていて皆んな必死に作品を作っているのに、遊んでいた僕も悪いのかもしれないね‥‥」
「やっぱ訂正、お前が悪いわ」
俺の妙な感動を返せ。