全てに置いての元凶との出会い
あれは、今から一か月前、4月5日の転入初日の帰り道だった。
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新しい学校の初登校だったため友達たくさんできるかなと何処かの物語の主人公みたいな事を思って登校したのはいいが、予想外にクラスメイト達がドライだった。
転校生があまり珍しくなかったらしく、誰からも話し掛けられることもなく、また自分から話かける事もできなく。結局1人も友人がてきることなく初日が終わり少し落ち込んだ気分で下校していた。
「はぁ〜」
もう何回目のため息こ分からない。
いやわかってたけどね。転入生だからと言って多勢の人に囲まれて質問攻めにされたり。美人の面倒見のいい女子と出会ったり、何処かのラノベ主人公みたいな大袈裟な展開があるとは思っていなかったけど‥
「誰とも話せないのはないだろ‥‥」
思わず頭抱える。
俺の名前は「田口 朔」。中学二年生。
家の都合で転校が決まったあの日、俺にはなんの選択も出されなかった。小学校からの友人に別れをつげて頑張ろうとしたのに誰からも話し掛けられることもなく撃沈。
「はぁ〜〜」
思い出すとまた溜息が出てくる。
俺の転入した学校は「天王寺学園」と言って小学生から大学までエスカレーターでいける学園らしく、俺その中等部に転入した。
何故エスカレーター式の学園に簡単に転入できたのかは分からない。試験はあったがあまり難しくはなかった。
そんなことを考えて、トボトボと歩いていた。
すると、
「ええ!!どっどうして!?」
ふいに右側の方から声が聴こえた。
思わず、足を止める。
普段の俺なら別に横から声が聴こえたくらいで歩みを止めたりしない。いちいち止まってたら時間がもったいない。
だが俺は止まった。止めてしまった。
だって横から聴こえた声が
「なんでっ・・・お金をちゃんと入れたのに・・」
とてつもないアニメ声だったからだ。
ものすごい高い声の次元の違うようなアニメ声。まるで深夜アニメに出てくるドジっ子ヒロインのようだった。
声の聴こえた方を向くと、そこには自動販売機の前で頭を抱える同じ学園の制服を着た少年がいた。
少し首をかしげた。聴こえて来たのは女の声のはずだ。
「なんで出てこないの・・・ぼくの苺ミルクぅー・・」
しかし声はそこから聴こえてくる。
少年は自動販売機にある苺ミルクが欲しいのか何度もボタンを押したり、商品が落ちてくる出口の中を何度も確認していた。
――なんだこいつ、面白い
気がつくと、俺は好奇心に任せてその少年に近づいていた。
自動販売機の少年の横にくる。
「そうだ・・これは共也さんのせいだ・・そうなんだ・・」
少年は俺の存在に気づくことなく何やら変なことをつぶやいていた。
俺は思いがけず声をかけた。
「・・あのー」
「にゅわ!?」
声をかけたら、いきなりのことで驚いたのか少年が勢いよく俺の方を振り向いた。
「えっ・・・?」
俺も違う意味で驚いた。
振り向いた少年は、癖のあるハニーブラウンの短い髪に、外国の血が混ざっているのか青い大きな瞳・・いやどちらかというと水色の瞳だ。そして日の光など知らないような真っ白い肌をもっていた。
そう、目の前にいる少年はどう見ても
「おっ女!?」
「男だよ!!」
・・・男だったらしい。
「あれ・・?でも声は・・」
「こっこの声は生まれつきなんだ!」
「えっ・・・ああ、そっか・・・」。
俺は自分がとんだ思い違いをしていたことに気づき恥ずかしくて頭をかいた。
・・なんだそういうことか。考えてみればあり得ないよな。
「男装趣味か・・年頃になると異性に興味が湧いてきて奇行に走ったりするやつもいるよな・・・」
「ひとの話をきけーーーー!!」
自称男の少女の叫びが響いた。
これが俺「田口 朔」と後に俺の学園生活に大きな影響を与える「全ての元凶」こと「水川 葵」との出会いであった。