世界は滅ばなかったらしいんで、取り敢えず日常を謳歌してみましょう。
なんか滅んでないんで、なんとなく惰性の貪るままにかいてたら、意味不明でした。読めば分かります。
「昨日だったか一昨日だったか世界が滅びたんだって?」
「滅びた前提で話してますけど、まだ世界ピンピンしてますよ」
のんびり午後の日差しを受けながら、二人はのらりくらりと歩く。
「誰だろうねー、世界滅びるなんて行った奴。この世界には恐怖の大王すら出て来なかったんだぜ? 唐突に世界終わってたまるかっての」
二人組の片方、女性のほうが、むっとした表情で言った。
「恐怖の大王のほうは分からないじゃないですか。その年に生まれた人が何十年も経ってからどっかの国で独裁政治始めて、後に世界征服目指すかもしれないじゃないですか」
まあ、そんな事が起きるかどうかはともかく、人類というのは妙にそういった与太話に異様に喰らいついて、話を面白おかしくする傾向にある。
例えばバミューダ・トライアングル。
昔から通過中の船舶や飛行機が突如何の痕跡も残さずに消えたり、その前に計器やコンパスに以上が起きたりして、1000人以上の人が行方不明とされている。そんな事から「魔の三角地帯」と呼ばれているが――
実を言えば、そういった「事件・事故」というのは、バミューダトライアングルの場合は勝手に内容を改変されたものが多くある。単なる遭難事故を「怪事件」と言ったり、書籍等で存在しない事故をあるようにでっちあげてみたり――世の中に出回っているそういった「怪事件」は実際に起きていない物のほうが遥かに多いのだ。
更に、バミューダトライアングルのある海域では、特にこれといって事故、遭難が多発している様子もない。
結論として、「バミューダトライアングルは事故の少ない平和な海域」と言って差し支えないだろう。
多分、人類滅亡や恐怖の大王だって似たようなものだろう。捏造された、とまでは言わないが、それでも信憑性に乏しく、とても信頼は出来ない。
それでも何故か――人はこういった与太話が大好きだ。
「宇宙人が地球を滅ぼしに来たりして」
女性のほうが言った。
「その場合、多分それは俺達が友好を断った時か、むこうが怯えてた場合だろうな」
「? 怯えるって? どうして怯えるの?」
「そりゃ当然だろ。相手にしてみれば俺たちは『宇宙人』なんだぜ? 何なのか分からない物っていうのは、それだけで十分恐怖の対象になり得る。相手側にしてみちゃ、地球人なんてワケワカランの宝庫だ。小説になんの意味がある? 車の正体は? 学校では何が行われている? そもそも何故夜になると寝るんだ?」
「そんな大げさな」
「大げさってほどでもないだろ。相手は宇宙人。生まれ方も死に方も、生き方も呼吸の仕方も食事も何もかもが違うんだぜ? 当然の話だろ」
大体――と男のほうはちょうど通りがかった映画館のところで足を止めた。
「偶に『自己中心的な奴とかマジ引くわー』とか言ってる奴がいるけど、それは人間の性質、いや生物としての当たり前の性質が全面に出ているだけで、どいつもこいつも考えていることは大差ないんだ。お人好しだって、自分がしたいから人を助けるんだ」
「宇宙人の話から話飛んで人の性質の話ですか? 脈絡ないですよ?」
「ちげえよ、ここから本命だよ。――人間ってのはさ、つまり自分のものさしでしか物事を見れねえわけよ。自分たちの他の生物の主観になろうとしたって、結局は人間のものさしで物事を考える。例えばやぎとおおかみが、友情を育む映画を作ったとしよう。途中怒ったり、不審になったり、切なげになったりするだろう。けど、最後は大団円で終わる。だけどな――羊は『悲しい』なんて感情を持ってるのか? 狼は『仲良くなりたい』なんて人間的思考を持ち合わせているか?」
女性は随分と嫌そうな顔した。
「随分夢のない話ですけど――まあ、持ってないでしょうね」
「だろ? 誰だって自分主観の自分の人生を歩んでいるんだ。人間も動物も、宇宙人も」
はあ、と女性を息を吐いた。結局の所何がいいたいんだろう。
「だからさ――多分、地球が滅びようが滅ばまいが――人類にとっては、住む場所が無いっていう主観的な見方しかできないだろう」
「そんな事はないでしょう。地球に残された動物の事を考える人間なんてごまんといますよ」
「それは多分、結局自分の主観でそう思うだけだ。消えて『自分』が寂しい。いなくて『自分』が悲しい。単純にそうやって自分が感情で辛くなるのが嫌なだけなんだろ」
「なんとなくわかります。結構自分の為ですよね、そういうの」
ペットを買うのだって、テレビを見るのだって、勉強をするのだって、何もかもが「自分の為」に繋がる。例えそれが募金活動やボランティアにしたって変わらない。そうした行為は「誰かの為」ではなく「自己の満足感に浸る為」なのだ。
「本当の意味で『他人の為に何かを出来る』人間なんて、そんなのいねえんだよ。いたとしたらきっと、そいつは魂のないロボットと代わりねえ」
それはつまり、「自我がない」のと代わりないのだ。
「宇宙人が世界滅亡させるのは、宇宙人にとってそれが一番だからだ。人がおもしろおかしく書き立てるのは、そういった話が滑稽だからだ」
「ようは――何が言いたいんです。いい加減頭混乱しそうですけど」
「簡単な事だって」
人も、ソレ以外のものも、自分のためにしか生きることは出来ない。その過程で地球が滅んでも、多分ソレにとっては与太話に代わりはない。ならば――
「地球が何時滅びるとか、そんな事気にしてもしかたがないだろ。だって地球は滅ばなかったらしいから、俺達は取り敢えず日常を謳歌するしかないんだからさ」
「――いやあの、かっこ良く言ったつもりでしょうが、はっきり言って意味不明ですよ?」
ね? 意味不明だったでしょ?
しかもこいつ持論をさも誇らしげに語りやがって、こいつこそジコチューっすよジコチュー。
書いたのお前だろって? やだなー、僕がこんなこと思っている訳無いじゃないですか(・・;)
違うんですぅぅぅっ! 間が差したんですぅぅうううっ!!
結論! 人類はすいた(ピー)した。