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私の身に起きた全てのことをここに記す
私はいつも、この文を手帳の表紙に書いてしまう癖がある。
こんな癖ができてしまったのには理由があり、私は昔からいわゆる発達障害というものに悩まされていた。
しかし、それは障害というのにはあまりに小さく、性格というのにはあまりに大きかったため私自身、親が机の上にその分野に関する本が置かれるまで発達障害のはの字も知らず。表紙の可愛らしい自分と同い年の女の子の笑顔につられてそれを読んでしまい私が発達障害の恐ろしさを知ってしまった。
読み終わった後の女の子の笑顔がまるでこちらを嘲笑うかのように見えてしまった。
プライドが高かった両親は軽度の発達障害者のことをまるで精神異常者のように接し、私をカウンセラーや精神科医、児童相談所に連れてゆきそこで見ず知らずの大人に話すように命じた。
それが悪手だったのだろう、私はいきなり見ず知らずの大人の前に連れて行かれ泣き喚いてしまい精神科医やカウンセラーは必死に泣く私を止めようと優しく声をかけたが、私はその声すらもまるで誘拐犯が言う罠だと考え手足を必死に動かして彼らの顔だったり体にそれを当てていた。
両親はその姿を見て嘆き私を他の病院に連れて行きそれらが繰り返す悲劇があの頃にはあった。
そして、きっとその内の一人が当時忘れ物が多かった私を心配した母に日記をつけるように助言し、私は夕飯の前に母に強制されて日記を書くようになった。
最初の頃は『きょうたのしかったこと』など可愛らしいものが表紙に書かれていたが小学校高学年になると『今日の出来事』となり、中学生に入学した時には『今日一日の出来事とその反省』になり今のものになった。
偏差値五十の公立高校入学後、私立文系の大学に入学、現在大学三年生。
四人家族にちょうどいい二階建て日当たり良好庭付きの家。
その中で夕飯前、今だに日記を書いている。