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苦情

 朝、出社すると夜勤明けの人が、磯崎さんのデスクへ来ていた。磯崎さんはまだ出社していない。私は、見て見ぬふりをして自分のデスクについた。面倒事はごめんだった。


 パソコンを立ち上げ、パスワードを入力し、業務画面を開いた。メールを確認すると、磯崎さんからメールが来ていた。


『病院寄ってくから、よろしく』


 何がよろしくなのかわからないが、とりあえず『ごゆっくり』と返しておいた。フレックスなのだから好きにすればいい。いや、管理職だから出勤時間など関係ないか。そして、夜勤明けの人に磯崎さんが遅くなる事を伝えなければならない。


 総務人事といえば、丸ごと個人情報の塊のような部署なのだ。部外者にウロウロされては困る。万が一、個人情報の事故でもあれば、それこそ面倒どころの騒ぎではなくなってしまう。


「あの、磯崎さんでしたらまだ出社されませんよ。病院に寄ってから出社されるそうです」


「え? 本当に? 困ったな。俺たち、もう限界なんだけど」

「何がですか?」

「磯崎さんから聞いてませんか? ……出るんですよ。おじさんの幽霊が……」

「気のせいです」


 私は即答した。


「今の科学では、そういった霊現象は、脳の誤作動だと証明されてきていますよ。気にしなければ大丈夫です」


 そう、この前もテレビでやっていた。昔は盛んだった心霊番組が、いまや見る影もないのは科学のお陰だろう。なのになぜ、ここの機械はお祓いをするのか。


「そんな事言われても、昨夜だってマシンルームからうめき声が……」

「気のせいです! 機械の音です!」


「寒気がして、しょうがなくて」

「マシンルームは寒いものです!」


「端末の画面が一瞬暗くなったり」

「無停電装置の異常かもしれません!」


「知らないおじさんがいて……」

「警備員を呼びましょう。あそこは外部の人間は立ち入り禁止です!」


「じゃあ火浦さん、確かめて下さい。ご実家が神社だと聞きました。アレが生きた人間なら、俺たちも警備員を呼びますよ。でも、いくら探してもおじさんは出てこないんです」


「私、残業しないので。いや、上司の許可がないと出来ませんので」


 ……許可された。


 どうやら夜勤者が複数人、辞めたがっていて困っているらしい。私としても退職者が出たり、求人を掛けるとなると作業が増えて嫌なので、少しだけ協力することにした。


 そうでなくとも人手不足なのだ。求人を掛けたからといって、誰かが来てくれる保証など何も無い。今いる人を大事にしよう。


「見るだけですよ。お祓いはしませんからね」


 あれは、体力を使うのだ。


 そうして私は、夜のマシンルームで一夜を過ごすことになった。

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