妖怪にんべんイ~部首~
イ「父ちゃんただいま!今日も悪い妖怪達を倒して人間を助けてきたよ!」
「おっ,おぉ」
辛い。イは妖怪とにんべんのハーフでも人助けをしていれば、いつかは人間の仲間に入れて貰えると信じている。
「にんげんもにんべんもたった一文字しか違わないじゃない!」が口癖な純粋な子だ。
でもいつまでも真実を隠していられる訳もない。
「イ。よく聞け?お前はな……にんべんじゃないんだ」
「えっ?何言ってるんだよ父ちゃん」
「落ち着いて聞いてくれ。お前はな?にんべんじゃなくて……カタカナのイなんだよ」
「そんなっ!?」
にんべんはイじゃなくて亻だ。お前は妖怪でもにんべんでもなく私が山で拾ってきたカタカナのイなんだとイに伝えた。イはあまりのショックからか発狂し始めた。落ち着け!イ!
「俺がにんべんじゃないなんて、嘘だぁぁ!今までの努力はなんだったんだよぉお!?」
「イ!」
イ「うわぁぁぁ!」
イ「うぉぉぉぉ!」
イ「……」
彳「ぶはぁ。……いい気分だぜ」
まさか!そんな事があっていいのか!?イは私への憎しみから彳になってしまったのか!?ぎょうにんべん……別名「業刃冕」。恐ろしい悪魔の子だ!
「イ!正気を取り戻せ!お前はカタカナなんだ!受け入れろ……ぐはぁ」
ブシュッッッ!ブシュッッッ!部首!ブシュッッッ!!!
私は何度もイに切りつけられた。
彳「妖怪も人間もにんげんも知った事か!これからは私が世界を制する!皆殺しだ!」
イは何処かへ飛び去ってしまった。私のせいだ。このまではイに世界が滅ぼされてしまう。どうすればいいんだ!?
「間に合わなかったか。おい。おじさん。俺があいつを止めてやろうか?」
「……お前は?」
もう目が霞んでよく見えないが罒か?なぜ伝説のカッコいい部首四天王の罒がここに?まぁいい。私は最期の力を振り絞って罒の手を握った。
「イは自分がにんべんだと思った可哀想な子だ。どうか救ってやってくれ……あみ……がしら……たのむぞ」
「……」
…
おじさん。悪いけど俺は罒じゃなくて漢数字の「四」なんだ。自分を部首だと思っていてそうでなかったあいつの苦しい気持ちはよくわかる。俺もそうだった。でもそれで人間を滅ぼしていい理由になんかならない!待ってなイ!俺が四(死)を持って償わしてやる!
イと四。己を部首だと思い込んでいた運命の少年達の100万文字を越える超長編が今始まる。