7. 三大栄養素をとる
私達が食物から摂取している栄養素は色々なものがありますが、特に大切なものとして、三大栄養素があります。
これは糖質、ブドウ糖または炭水化物(Sugar、Glucose、Carbohydrate)、脂質または脂肪(Lipid、Fat)、タンパク質(Protein)をさします。
三大というくらいですから、どれかが欠けても非常に困ってしまいます。
ダイエットや肥満などの話と絡めてしまうと、炭水化物抜きダイエットや、脂肪ゼロ食品など、どうも前者2つは余計なものとして考えられてしまうような一面もあります。
でも、仮に炭水化物抜きにしたとしても、体の中では糖新生(Gluconeogenesis)という反応が起こっており、クエン酸回路の中に存在する物質リンゴ酸からグルコース(ブドウ糖、Glucose)を作り出す働きが起きています。
さらに、脳は体内のエネルギー消費の約18%を占めますが、糖質しかエネルギー源にすることが出来ません。
ということは、糖質が不足すれば、糖新生を利用して、何としても確保しようとします。
その際、タンパク質を消費します。
(脂肪も消費しますが、優先順位は低いです。)
タンパク質は体を構成する上で最も大切な物質ですし、免疫細胞や抗体を作り出す上でも決して欠かすことは出来ません。
また皮膚や粘膜(Mucous membrane)など直接病原体の侵入を阻止している、いわばバリアのような組織も構成しています。
それを犠牲にしてまで糖質を作る状況にしてしまっては、免疫力は当然ダウンしてしまいます。
免疫以外に目を向けても、私達の体内で起きている数えきれないくらいたくさんの化学反応は、三大栄養素を燃焼させた時に生じるエネルギーからATP(アデノシン三リン酸、Adenosine tri-phosphate)を作り出すことでまかなわれています。
エネルギー不足になってしまっては、本来行われるべき化学反応が十分に行われません。
結果的に自分の体の組織や健康、必要なエネルギーと引き換えにしてまでダイエットしていることになりかねない状況になってしまいます。
また、少し取り上げるのが遅くなりましたが、脂肪もエネルギー源として働く他に、細胞膜の原料となって、細胞の表面覆う、皮下脂肪などとして内部の臓器を保護する、ビタミンAなどの脂溶性の栄養素を取り込みやすくするなどの働きがあります。
また、体の表面にワックスのような形で分泌され、水の蒸発を抑えたり、皮膚を保護する役割も果たしています。
脂肪は分解されると脂肪酸とグリセリンになりますが、脂肪酸には飽和脂肪酸(全てC-Cの単結合ばかりで、C=Cの二重結合がない脂肪酸)と不飽和脂肪酸(どこかにC=Cの二重結合が1~3か所ある脂肪酸)に分けられます。
不飽和脂肪酸には様々な種類がありますが、その中のオレイン酸やα-リノレン酸には悪玉コレステロールを減らす働きがあり、アラキドン酸には免疫力を維持する働きがあります。
ちまたでサプリメント剤として販売されているDHAには脳や神経の発育や、機能の維持に関わる効果があり、EPAには血液サラサラ効果があります。
ただ、脂肪の種類によっては取り過ぎると良くない作用を示すものもあります。
また、どの種類の脂肪にも言えることですが、高カロリーなので、取り過ぎには注意が必要です。
短所ばかりに注目が行きがちな一面もありますが、摂取を徹底的にひかえてしまうと、脂溶性の栄養素(ビタミンAなど)が吸収されにくくなって補足してしまい、肌がカサカサになってしまうなどの問題が発生します。
たとえ太り気味や、ダイエットしたいという願望があったとしても、三大栄養素は必要量をしっかりと摂取しなければなりません。
とはいえ、食事の量を制限するというやりかたでは、空腹感とたたかうことになってしまい、ストレスを感じてしまうことも多いかと思います。
そこで、僕は食事の時に「トクホ」の飲み物を飲んだり、栄養分の吸収を抑制すると書かれているサプリメント剤を飲むなどの対策を取っています。
他にもご飯を少し冷ましてから食べるといったこともしています。
ご飯やパンなどの穀類には「レジスタントスターチ」という、体に吸収されにくい形のデンプンが含まれています。
このレジスタントスターチは、加熱すると減少し、冷ますと増加するという性質があります。
(冷めるとデンプン同士が結合して固まり、消化に時間がかかるようになるため。)
ですから、ご飯をアツアツの状態で食べるよりも、冷まして食べると吸収が穏やかになり、ある程度は食事制限を回避出来ます。
さらにレジスタントスターチは、白米よりも小麦に多く、ライ麦はさらに多いため、麦飯にしてご飯を食べるとより効果を発揮します。
また、三大栄養素を栄養分として消化するためには、ビタミンB群も必要になります。
ビタミンB群には、ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン(ビタミンB3とも呼ばれます)、パントテン酸(ビタミンB5とも呼ばれます)、ビオチン(ビタミンB7とも呼ばれます)、葉酸(ビタミンB9とも呼ばれます)の8種類があります。
(ビタミンB4、B8、B10、B11は後にビタミンとしてふさわしくないと判定されたため、欠番になっています。)
この中で、三大栄養素の代謝に関係するものとしては、B1、B2、B6、ナイアシンが挙げられます。
(パントテン酸とビオチンも代謝に関係しますが、欠乏することがまれなので、除外します。)
・ビタミンB1
チアミン(Thiamin, Thiamine)という名前もあります。
この物質にリン酸が2分子結合することで補酵素として機能するようになります。
このおかげで糖質を代謝できるようになり、糖質を二酸化炭素と水に分解してエネルギーを得ることが出来ます。
これが欠乏すると脚気(足のむくみやしびれが起きる病気)になり、我が国においては、江戸時代から明治時代において多く発生しました。
現在においてはまれですが、ご飯(特に白米)ばかりの食事をするといったような、偏った食生活を送ることによって発生することがあります。
・ビタミンB2
リボフラビン(Riboflavin)という名前もあります。
補酵素FAD(フラビン アデニン ジヌクレオチド)を構成する物質であり、クエン酸回路中のコハク酸に作用し、2分子の水素を受け取って自身はFADH2になり、コハク酸をフマル酸に変換します。
水素を受け取ったFADH2は電子伝達系に入ってATP合成に関与します。
不足するとクエン酸回路が停滞してしまうため、結果的にエネルギーを生み出す(ATPを作り出す)ことが出来なくなり、体がガス欠状態になってしまいます。
他にも脂肪酸のβ酸化(脂肪酸から炭素を2つずつ切り離していく反応)にも関与し、脂肪をエネルギーとして使うために必要な物質でもあります。
・ビタミンB6
ピリドキシン(Pyridoxine)という名前もあります。
1分子のリン酸と結合して補酵素として機能するようになります。
主にタンパク質の代謝に関与するため、タンパク質を多く摂取した場合はビタミンB6も多く必要となります。
また、胸腺を維持するために必要な物質でもあります。
胸腺では、T細胞が一人前の免疫細胞として働けるように教育を受ける場所ですが、年齢とともに徐々に小さくなり、機能が衰えていきます。
その衰えを遅くし、機能を長く維持するためにもビタミンB6不足は避けたいものです。
とはいえ、腸内細菌によって合成される物質でもあるので、偏った食生活でなければ欠乏することはまれとされています。
・ナイアシン(Niacin)
補酵素NAD(ニコチンアミド アデニン ジヌクレオチド)を構成する物質であり、糖質が代謝されていく過程で何ヶ所かに作用し、1分子の水素を受け取ってNADHになります。
水素を受け取ったNADHは電子伝達系に入って、やはりATP合成に関与します。
もちろん不足するとクエン酸回路が停滞するため、エネルギー不足になってしまいます。
私達は毎日を生きる上で、相当たくさんのエネルギーを必要とします。
仮に1日の摂取カロリーを2000kcalとした場合、100kgの水を20℃(または1トンの水を2℃)上昇させるエネルギーです。
分かりやすく言うと、200Lのお風呂の水を追いだきで10℃上昇させるといったところでしょうか。
免疫力を保つためのエネルギーも当然ここから供給されるわけですから、三大栄養素はきちんと摂取していきましょう。