表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウィッチエアクラフト 〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜  作者: 朱坂卿
第六翔 空宙都市計画
98/193

#97 宇宙作戦用訓練開始

「よおし……軟弱そうな者たちが揃ったな、大変結構だ!」

「は、はい!!」


 魔法塔華院コンツェルン本社での話し合いより数日後。


 とある僻地の山奥に青夢ら凸凹飛行隊、龍魔力四姉妹、そして尹乃に。


「(まさか……呪法院さんもいるなんて。)」


 青夢も先ほど見かけて驚いたが。


「(マリアナ……今日こそあなたに一泡吹かせてあげるわ!)」


 そこにはかつて生徒会総海選で争った呪法院エレクトロニクス社長令嬢レイテと、彼女に率いられていた生徒会新候補であったジニー、武錬、雷破の面々もいた。


 争奪聖杯が終わり、一か月と半月ほど後。

 魔男襲撃に備えて厳戒態勢が敷かれていた市井も、その態勢が解かれ日常が戻って来た矢先。


 青夢たちはまたも、大きな動きに巻き込まれることになっていた。


 それが、この空宙都市計画(コード・ザ・シティ)


 争奪聖杯の一件により信頼性が低下した法機に代わり、宇宙ステーションへと吸引光線により上昇し宇宙ステーション間は新たな飛行手段たる空宙列車エンジェレクトロンズマーチにより移動するというものだ。


 しかしそのためには、実際に女神の杼船(アテナーズシャトル)――すなわち、スペースシャトルに乗り宇宙作戦に従事する必要があり。


 そのための訓練が、今日この僻地の山奥でのサバイバルをもって開始されようとしていたのだ。


「改めて自己紹介をする……私は自衛隊宇宙作戦隊教官、及び貴様らの教官を務める巫術山麻由(ふじやままゆ)だ! だが、貴様らの名前は敢えて聞かない! 何故なら……これから始まる地獄を貴様らに与えるに当たり、その情報は大いに邪魔になるからだ!」

「(じ、地獄か……)」


 そんな中、教官の巫術山は自己紹介をする。

 その言葉は青夢たちに、少なからず動揺を与えた。


「そう、これからは地獄だ!」


 巫術山は、またも強調するように宣言する。


「(まったく魔法塔華院マリアナ……あんたも、伝えるのが遅いのよ!)」

「(さあ魔女木さん、せいぜい早く音を上げることね……その時こそ、飛行隊長の座を掠め取るチャンスであってよ!)」


 そんな中青夢とマリアナも。

 密かに心の声同士で火花を散らし合っていた。


 ◆◇


「では……皆さんお揃いであってよね?」

「はあい……」

「はい!」

「あ、ああ!」


 この宇宙訓練開始の日から数日前、空宙都市計画について凸凹飛行隊に明かされた日から見れば翌日。


 再び魔法塔華院コンツェルン本社社屋にて、マリアナは飛行隊員全てを集めて話を始めようとしていた。


「さあて、これからの作戦も練らなくってはよね……()()()()とも争う訳ですし。」

「そうね……ん!? え……他の人!?」


 しかし、青夢は。

 このマリアナの台詞に驚く。


 他の人?


「あら、そういえばまだ言ってなくってよね……この選抜候補者は、わたくしたちだけではなくってよ! 王魔女生や龍魔力も参加いたしますわ!」

「えっ!? む、夢零さんたちも?」

「そ、そうなんですか!?」

「本当か?」


 思いがけぬ言葉に、更に一同は驚く。

 王魔女生や龍魔力も?


「き、聞いてないわよ魔法塔華院マリアナ!」

「ええ、今言ってよ魔女木さん。」

「いや、そういう問題じゃあなくて!」


 青夢は抗議の声を上げるが、マリアナは取り合おうとしない。


 つくづく極秘とは、と問い質したくなる。

 さておき。


「既に申し上げたはずであってよ、魔女木さん。わたくしたちはあくまで選抜()()()であって、他にも候補者はいてよ。」

「それはそうだけど……」


 青夢の言葉にマリアナは、あまり意に介した様子ではなく。


 青夢もそんな彼女の言葉足らずには、少しの不信感を覚える。


 さておき。


「まあ魔女木さん。あなたのことだからどうせ、訓練が面倒くさいとか思っているんでしょうけど……甘くってよ。あなたも仮にも飛行隊長なら、ここで覚悟を決めなくてはならないのではなくって?」

「な!? か、勝手なこと言わないでよ、だ、誰がそんな考えを!」

「……へえ、魔女木さん。言いましてよね?」

「! え、ええ言ったわよ!」


 マリアナの挑発めいた言葉に乗ってしまった青夢は、割合軽はずみに声を荒げてしまった。


「……では、これで本当に異論はなくってよね皆さん?」

「は、はい! 私に異論など元々、あるはずがありません!」

「あ、ああ……俺も、異論はない!」

「ええ……決まりね。」


 マリアナの言葉に法使夏、剣人も大きく頷く。


「はーあ、矢魔道さんに癒してもらいに行こうかな……」


 青夢はそんな飛行隊員たちの裏でそう考え。

 この話合いの後、矢魔道に会う為聖マリアナ学園の整備場に向かったが。


「さあ急いで! 少し作業が遅れているよ! ……さて、龍魔力財団に送った技術資料はうまいこと役に立ってるかな……しっかし、あのスフィンクス艦て……結局、どんな仕組みなのか分からないなあ! ああ、時間があればその構造を……」


 凸凹飛行隊の強力な機体整備――その中でも、幻獣機がそのまま融合した状態のルサールカ、クローリーの機体再構成作業に忙しく。


 また、一人魔男のオーバーテクノロジーに思いを馳せていて部下の整備員ですら近寄りがたく会えなかったのだった。


 さておき。


 ◆◇


「ええ、そうよ……ええ、後はよろしく。」


 一方その頃、王魔女生グループ社長尹乃は。

 何者かと連絡を取り、ほくそ笑んでいた。


 ◆◇


「はあ、はあ……」

「な、何してらして飛行隊長! そ、そんな弱腰ではどうにもならなくってよ……」


 再び、宇宙作戦用訓練では。

 雨が降る山奥での、泥濘に塗れながらの訓練ということもあり。


 青夢や、彼女がへばった時に隙を窺おうとしていたマリアナも。


 その他の皆も、全員がへばってしまっていた。


「ほら、貴様ら全員何している!? 宇宙作戦には、参加したくないらしいな!」

「! な訳……ないでしょ!」

「! ええ、そうであってよね……わたくしも!」


 しかし、巫術山の飛ばした檄により。

 青夢もマリアナも、皆も奮起する。


「(ええそうよ……今に見ていなさい魔法塔華院に龍魔力! 所詮はまだまだ跡取りに、学生に甘んじているあんたらなんかとは違って私は! 王魔女生っていう企業を背負ってんのよ……!)」


 その中でも尹乃も。

 これまでの凸凹飛行隊や龍魔力の活躍を、指を咥えて見ているしかなかった歯がゆさを糧に自身を奮い立たせていた。




「ええ、まあ本日の訓練だが……貴様ら、実になっていないぞ! 本当にやる気があるのか疑わしいほどだな!」

「はい……」


 しかし訓練後。

 巫術山の言葉に、皆言葉を失う。


「……まあ、まだ見込みのある者はいるな! そこの唯一の男だ!」

「はい!」


 しかしその中でも。

 かつての魔男の訓練で既に鍛えられているためか、剣人は訓練について行けていた方であった。


「そいつは、元魔男と言ったな……なるほど! 私はここに、今魔女社会が魔男に脅かされつつあることの縮図を見た! 貴様らのような者がいるからこの魔女社会は軟弱になるんだ、元魔男に負けるほどの軟弱さ故にな! 嘆かわしい……私は、こんな奴らのお守りをしなければならないのか!」

「……っ……!」

「め、愛三!」


 耐えきれず、何人かは泣き出す。


「言っている側から軟弱さを見せるな! まったく、こんな奴らが我ら自衛隊を差し置いて活躍するとは……いいか! そんなことで貴様らの中にあるくだらないプライドも、一旦ドブにでも捨てろ! それは、貴様らが与えられた法機によるものだ、貴様ら自身の力ではない!」

「(何よ……偉そうに!)」

「(……)」


 巫術山のこの言葉には、その場のほぼ全員が怒りを抱く。


 ◆◇


「まったく、あんな教官に当たるとはついていなくってよね! 自衛隊が最近活躍できていないことに対する、わたくしたちへの僻みかしら!」

「……そうかな。」

「? ああ、ごめんなさい魔女木さん……あなたには分からなくってよね、あれを悔しいとも思わないあなたには!」

「……そんな言い方、ないでしょ。」


 その夜。

(言うまでもなく不本意ながら)マリアナとの同室となった自室コテージで。


 入るなり青夢は、マリアナからの愚痴と嫌みに晒されることとなった。


「何が言いたいのであって魔女木さん? はっきりと言えばよくってよ!」

「……あの教官の言うこと、ある程度は本当のことよ魔法塔華院マリアナ。」

「……なるほど、言うに事欠いてあの教官の肩を持って平静を保つつもりであってね魔女木さん?」

「……あんたは! 何でそういう考え方しかできないのいつもいつも!」


 マリアナと青夢は、言い争いの末に睨み合いとなる。


 と、その時だ。


「! ふん、ちょっと休戦よ……もしもし? ……!? な、何ですって!?」

「……何?」


 当然というべきか、ここにはスマートフォン持ち込みは禁止だが。


 マリアナの特例で持ち込まれていた緊急用スマートフォンに入った連絡に、彼女は顔を強張らせる。


 それは――


 ◆◇


「ウルグル騎士団長! 前方、敵部隊発見です!」

「うおおおん! ようし、さあクソアマ共をぶっ潰せ!」

「は、ははあ!」


 雄叫びと共に、口汚い言葉を吐き。


「ったく、あのアマ共お! てめえらに〇✖️△※◇」

「騎士団長……いかに敵といえど文章に起こせないほどのお言葉は」

「ああん!? 何の話だよまったく、いいだろう俺が何を言おうと!」

「……はい、申し訳ございません。」


 見かねた部下に諫められるウルグルだが、意に介した様子ではなく。


 部下は、深くため息を吐く。


「さあアマ共お! 今に〇△□%」

「騎士団長……ピー音ばかりになるので止めましょう」

「ああん!?」

「……はい、申し訳ございません。」


 元々の口汚さが、更に加速するほどの怒りを胸に。

 ウルグルは自艦隊も、加速させて行く。


 向かう先は、無論というべきか。

 青夢たちのいる、山奥である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ