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ウィッチエアクラフト 〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜  作者: 朱坂卿
第五翔 円卓第十三席争奪聖杯 
80/193

#79 六方面攻防戦③

「み、ミリア!」

「やったね、ミリア! これでこの東京湾方面は突破だよ!」

「はい、姐様!」


 幻獣機母艦(クリプティッドマザー)カリュブディスにより、東京湾方面を守っていた自衛隊ウィガール艦隊は壊滅し。


 ミリアとメアリーは、誇らしげである。


 生徒会総海選より数日後。

 事の起こりは無論、少し前に魔男の元騎士団長にして再び返り咲いたアルカナによる魔女社会への宣戦布告だった。


 ――聞くがいい、魔女社会の諸君! 我ら魔男の12騎士団は諸君らに対し、全面戦争を布告する!


 それに伴い市街地には、自衛隊の防空態勢が取られ。


 まさに魔女社会は厳戒態勢に入っていた。


 そんな中。

 なんと青夢と法使夏は自ら専用機を駆り。


 魔男側を誘い出していた。

 そうして現れた第十三の騎士団・女男の騎士団。


 その保有艦たる幻獣機母艦(クリプティッドマザー)スキュラ・幻獣機母艦(クリプティッドマザー)カリュブディスを率いて同騎士団所属のメアリーとミリアは、青夢と法使夏に挑んだ。


 そうして一時、彼女らはミリア率いる幻獣機母艦(クリプティッドマザー)カリュブディスに翻弄されながらも。


 加勢して来たマリアナや剣人の力もあり、何とか撃退に成功する。


 しかし、それから数日後のことだった。


 巨男の騎士団が擁する巨人型の幻獣機父艦クリプティッドファザーフードが大挙し、さながら巨人の群れを成していた。


 それを空飛ぶ法機(ウィッチエアクラフト)グライアイ三機とゴルゴン旗艦により龍魔力四姉妹が、迎え撃っていた。


 その激戦の末、最終的には四姉妹の四女・愛三とアロシグの一騎討ちとなり愛三の勝利に終わった後。


 アルカナの提案によりこうして魔男側の攻勢競い合い――争奪聖杯に参加している六騎士団が一斉攻撃を仕掛けることになったのだった。


 しかしその内、五騎士団はそれぞれの方面で突如不具合を起こし。


 少しの間動きが乱れるが、その隙を突くかのごとく。


「さあ……このまま! 首都へ攻め込み、我ら女男の騎士団がその壊滅を果たすわ!」


 上記の通りミリア率いる幻獣機母艦(クリプティッドマザー)カリュブディスが、東京湾方面の防衛線を突破したのだった。


「ミリア!」

「おっと! ……hccps://baptism.tarantism/、セレクト ヘプトヘッズ エグゼキュート!」

「くっ! ……グレンデルの騎士!」


 その有り様を見た、海中の自機ルサールカに乗る法使夏は自機を飛び出させ首都方面に行こうとするが。


 首都へ向かうカリュブディスとルサールカの間に立ち塞がったのはやはりというべきか、メアリー率いるスキュラだった。


「あの娘の邪魔――いや、あたしたちの邪魔は誰にだってさせやしない! ようやく掴んだこのチャンス、死んだって離せやしないんだからさ!」

「そう……なら私も!」


 立ちはだかるメアリーに、法使夏も改めて覚悟を決め。


 ルサールカを、突撃させる。


 ◆◇


「くっ、魔男が!」

「力華……いや、妖術魔二等空曹! 息してる?」

「! 術里……いや、白魔二等空曹!」


 一方。

 先ほどのカリュブディスによる攻撃で壊滅したウィガール艦隊だが。


 法機たるアマゾネスの部隊はまだ健在である。


「早く首都にいる地対空部隊にも連絡を! このままじゃ首都が!」

「了解!」

「そして私たちも……奴を追撃する!」

「り、了解!」


 力華も、まだ諦めず。

 仲間を鼓舞し、首都へと突っ込んで行くカリュブディスを追撃すべく突撃を仕掛ける。


 ◆◇


「! 東京湾方面が突破された!? ……分かったわ。」


 一方、山梨方面の青夢は。

 東京湾方面の女男の騎士団防衛線突破の報告を受けて驚く。


 それとは裏腹に、自身が受け持つこの防衛線も含めて。


「く……た、態勢を立て直せ!」

「よく分からないが……今こそチャンスだ! 地対空誘導銀弾(シルバーブレット)群多数発射!」

「了解!」

「…… hccps://jehannedarc.wac/ 、セレクト ビクトリー イン オルレアン エグゼキュート!」

「ぐっ! 魔女共めえ!」


 他の五方面ではむしろ魔男部隊の戦列が尽く崩れているとの報告が入っており、東京湾方面とは大違いだからである。


「(まるで他の五騎士団を妨害して女男の騎士団をそう……誰かが意図的に勝たせようとしているかのような――)」


 青夢は不自然さを感じざるを得ず、攻撃を続けながら首を傾げていた。


 無論、だとすればそれを意図する相手も分かっているが。

 それがわかっても尚、青夢はやはり疑問をぬぐえないでいた。


 なぜ、そいつが元魔女である女男の騎士団を支援するのか――


 ◆◇


「何かわからないけど……この好機を逃す手はなくってよ、自衛隊の皆様!」

「り、了解! 地対空誘導銀弾(シルバーブレット)発射!」


 そんな青夢が考えることも待っていられないとばかり、六方面では戦いが未だ続いている。


 埼玉方面のマリアナは、他と同じく乱れた巨男の騎士団の戦列に。


 これを好機とばかり、自衛隊と共に攻撃を仕掛けた。


「あ、アロシグ騎士団長! 奴らから攻撃仕掛けて来ましただ!」

「くう……こっちが苦しんでいると思って舐めてくれとったらいかんべ魔女共お!」


 先陣を切った自身の旗艦が当然というべきか真っ先に誘導銀弾(シルバーブレット)による攻撃を受けるアロシグは、前の敵陣営を睨む。


「ここで終わってたまるべか……俺はあの龍魔力に借り返さなきゃならないだ、お前じゃないだ!」


 俺が求めていたのはお前じゃない。

 アロシグは、そう叫ぶ。


「ほほほ、まだ分かっていないようですわね…… hccps://camilla.wac/、セレクト ファング オブ ザ バンパイヤ エグゼキュート!」

「! くう!」


 そのアロシグの言葉には、これまた当然というべきか激怒したマリアナが。


 再びカーミラによるアロシグ旗艦を始めとする艦隊へのハッキングを、強める。


 それによりアロシグは、更に動きを封じられる。


 ◆◇


「め、愛三! 今がチャンスよ!」

「りょーかーい! さあ、目のいい虎さんたち……  ……01CDG/、セレクト、ブーティング "(ゴルゴニックアイズ)"! ロッキング オン アワ エネミー エグゼキュート!」


 一方、神奈川方面の虎男の騎士団もまた鳴動に動揺し。


 その隙を突き二手乃・愛三も反撃に出る。


「よおし、二手乃お姉さん!」

「わ、分かったわ! …… hccps://graiae.wac/deino、セレクト グライアイズアイ、セレクト グライアイズファング エグゼキュート!」

「セレクト、ファイヤリング 誘導銀弾(シルバーブレット)! やっちゃえ!」


 それによりゴルゴン旗艦より、誘導銀弾(シルバーブレット)群が発射され虎型幻獣機父艦クリプティッドファザーフード艦隊に迫る。


「れ、レーヴェブルク騎士団長!」

「……逡巡。最適解……」


 レーヴェブルクも旗艦に座しながら、策を思索する。


 ◆◇


「何か分かりませんがホスピアー殿……位置が分かるとあらば今しかありませんな! hccps://crowley.wac/ セレクト、アトランダムデッキ!  正義(ザ ジャスティス)――裁きの鉄鎚(ハンマーパニッシング) エグゼキュート!」

「くっ……ひ、人をモグラ叩きならぬ魚叩きするなっしょ!」


 その頃、茨城方面の剣人は。


 アルカナの起こした鳴動によりこちらも大地に潜った状態で悶えていた魚男の騎士団長ホスピアーの旗艦たるケートスを、その地にハンマーのごとき重力圧をかけて引き摺り出す。


「ええ……これで、陸に上がった魚ですな!」

「くっ……元魔男の分際で、調子に乗るなっしょ!」


 剣人の言葉に、ホスピアーは怒り心頭である。


 ◆◇


 そして、千葉方面でも。


「くっ……何なんザンスかこれは!」

「姉貴!」

「ええ、行くわよ英乃!」


 自衛隊や夢零・英乃に角を向けて突撃を仕掛けんとしていた馬男の騎士団長ボーンの旗艦オドントティラヌスをはじめとする艦隊は、やはり鳴動に苦しんでおり。


 その隙を突き、夢零と英乃・そして自衛隊も再び攻勢に打って出ていた。


 ◆◇


「ははは、ここで終わるなど笑止! ……駆逐父艦(シューター)巡洋父艦(ドラグーン)幻獣機飛行艦(チャリオット)! もはや破れかぶれ、直撃炸裂魔弾エクスプロージョンマジックブレットを発射しつつ構成機群を四方八方に全面展開し魔女共にぶつけに行け! 決して止まるな!」

「! はい、チャット騎士団長! ……hccps://baptism.tarantism/、セレクト、ビーイング トランスフォームド イントゥ 各個形態フォーメーションロンリネス 、デパーチャー オブ 直撃炸裂魔弾エクスプロージョンマジックブレット エグゼキュート!」

「! く、敵艦が敵機に分かれて多数来襲!」


 しかし、女男以外の五騎士団もやられっぱなしではないとばかり。


 山梨方面の馬男の騎士団はもはや艦による攻撃は諦め構成機群に分離しての機動戦に移行し、本人の弁に違わず破れかぶれともいえる攻撃を仕掛ける。


「くっ、ちょこまかと! …… hccps://jehannedarc.wac/ 、セレクト ビクトリー イン オルレアン エグゼキュート!」

「ひゃーほー!」

「くっ!」

「この!」


 しかし青夢や自衛隊も、好機は逃さぬとばかり。

 尚も光線や法機、誘導銀弾(シルバーブレット)により応戦するも。


「ぐうっ、チャット騎士団長!」

「怯むな! ワシらの天下はすぐそこだ……強行突破だ!」

「応!」

「ひゃーほー!」


 騎士団長チャットに鼓舞された馬男の騎士団機動部隊は止まらず、僚機の損耗や直撃炸裂魔弾エクスプロージョンマジックブレットの手元での爆発も厭わずむしろ嬉々として青夢たちに迫って行く。


「こりゃあ……どうやら妨害しても意味はないみたいよマージン・アルカナ!」


 これを見た青夢は。

 恐らく高みの見物を決め込んでいるだろう先ほどの妨害の主に、伝わるとは思えないながらも呼びかける。


 ◆◇


「あ、アロシグ騎士団長!」

「くう……この戦線はどうしても突破しなきゃいけないだ! 皆……俺に、皆の幻獣機父艦(ファザーフード)構成機群を分けてくれだ!」

「あ、あいあいさー! オラたちの力、受け取ってくれだー!」


 再び埼玉方面でも。


 動きをかなり封じられながらもアロシグは、ここで負けじとばかり。


 部下たちにどこぞの西遊記主人公との同名キャラクターのような台詞で助力を乞い、部下たちもこれを快諾し。


 ぎこちないながらも自艦を、パーツたる幻獣機スパルトイ群に分離させて行く。


「ありがとうだ、皆ー!」

「隙だらけであってよ、巨男の騎士団さんたち! 自衛隊の皆様、更に誘導銀弾(シルバーブレット)を!」

「く、騎士団長!」

「焦んなだ、皆! 雷雲形態フォーメーションクラウドで、雷の嵐を巻き起こしながらこっち来るだ!」

「あ、あいあいさー! hccp://baptism.tarantism/、セレクト ビーイング トランスフォームド イントゥ 雷雲形態フォーメーションクラウド エグゼキュート!」


 しかし当然その過程で生じる隙を突こうと、マリアナは自衛隊に攻めを強くするよう促す。


 それによる攻撃で動揺する巨男の騎士団ではあるがアロシグの当意即妙な指示により、すぐに防御しつつの再構成へと切り替えて行く。


「くっ、しつこい方たちであってね!」

「さあ……俺の旗艦の右腕に皆の構成機をハメハメだー! hccp://baptism.tarantism/、セレクト ビーイング トランスフォームド イントゥ 雷鎚形態フォーメーションミョルニル エグゼキュート!」


 部下たちの幻獣機父艦クリプティッドファザーフード構成機群により既に雷鎚形態フォーメーションミョルニルと化している自身の旗艦右腕を、より柄が長く頭部も大型化したものへと再構成して行く。


「くっ、あんな巨大な!」

「無駄……とは言い切れない悪足掻きであってよ巨男の騎士団さんたち! でもこちらも……無駄と言い切れない悪足掻きをさせてもらうまでであってよ! hccps://camilla.wac/、セレクト ファング オブ ザ バンパイヤ エグゼキュート!」

「……そうだ、戦闘車両(ウォーワゴン)、地対空誘導銀弾(シルバーブレット)を発射し続けろ!」


 それを見た自衛隊もマリアナも、大きく動揺しながらも。


 未だ闘志は失わず、迎撃をし続ける。


「あ、アロシグ騎士団長!」

「心配要らないべ、皆! セレクト、ファイヤリング 巨人の鉄槌(ギガパニッシュメント) エグゼキュート!」


 尚も巨鎚を振り上げつつ攻撃を受け続けるアロシグ旗艦を、部下たちは心配するが。


 アロシグは構わず、やはりぎこちないながらも自身の旗艦に鎚を振りかぶらせる――


「そ、総員退避!」

「くう……わたくしは一歩も引きませんわ巨男の騎士団長!」


 自衛隊は退避を始めるが。

 マリアナは令嬢の誇りにかけてというべきか、未だアロシグと直接対峙を続ける。


 ◆◇


「……可視、可視、可視!」

「ええ!? ま、また全ての誘導銀弾(シルバーブレット)を」

「おお、やっぱりすごおい!」


 そして、神奈川方面でも。

 レーヴェブルクはやはりぎこちないながらも、未だその目をもって全銀弾を防いでいた。


 ◆◇


「おうりゃあ!」

「くっ!」

「ははは……完全に油断したなっしょ! このケートス、海のみならず地のみならず! 空まで泳げるんしょ!」

「なるほど……それは素晴らしいですね!」


 茨城方面でも。

 剣人により地から引きずり出されながらもホスピアーの旗艦は、さながら大鮫のごとく剣人のクロウリーに食いつこうとしていた。


 ◆◇


「オドントティラヌスは……角から雷も出せるザンスよさあ!」

「くっ、こりゃあ!」

「英乃、一旦離れるわ!」


 そして千葉方面も。

 隙を見せまいとボーンが放つ雷の網に、夢零や英乃も一時引かざるを得ない。


 こうして他の五騎士団も、悪足掻きを未だ見せていた――








































「ああまったく……だからこそ余計に気に食わないんだよ騎士団長諸氏! 時折織込み済みとは思えないほどに思い通りにならなくなる……無知集団のくせして!」

「れ、レーヴェブルク騎士団長!」

「ん……再度理解不能、事態急変か。」

「ほ、ホスピアー騎士団長!」

「な、何だこれはっしょ!」

「ま、またど、どうしたんだべこれは!」

「何度も……何ザンスかこれは!?」


 しかし、そうは問屋――もとい、アルカナが卸さず。


 またも各騎士団長たちは、違和感を感じる。

 それは、高速でこの五騎士団の各方面を()()が横切ると共に。


 途端に構成機群が、言うことを聞かなくなり出したためである。


 その()()は、やがて。


「……失礼。」

「!? あ、あなた様は!」

「おやおや……こりゃあこりゃあ初めて見る顔やな!」

「顔は……見えないでしょう?」

「ああそや、そやったなあ!」


 ちょうど東京湾方面より首都へ向かう幻獣機母艦(クリプティッドマザー)カリュブディスと、後衛にいて独断で出て来た赤音が遭遇する所へ。


 突如として両者の間へ、割って入る。


「……始めまして。私は女男の騎士団長スカーレット・フレイ。そしてこの娘は我が相棒、デモニックリバイヤサン。」

「ぐる、がるる!」

「ほう……何やらあたしのリバイヤサンと似とるなあ!」


 それは赤音の幻獣機リバイヤサンをより豪奢にしたような専用機デモニックリバイヤサンの背に立つ。


「騎士団長!」

「ああ……さあフレイ殿、思う存分に暴れるがいいよ!」


 顔こそフードで見えないが姿は見せた女男の騎士団長スカーレット・フレイだった。

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