#76 女男の旋風
「行くよ、ミリア!」
「はい、姐様!」
「行くべ!」
「さあ腕が鳴るっしょ!」
「戦いザンス!」
「ワシらの天下に!」
「……勝利上等。」
女男・巨男・魚男・牛男・馬男・虎男の六騎士団は。
各方面より迫りつつ、それぞれに手柄を上げることに燃えていた。
生徒会総海選より数日後。
事の起こりは無論、少し前に魔男の元騎士団長にして再び返り咲いたアルカナによる魔女社会への宣戦布告だった。
――聞くがいい、魔女社会の諸君! 我ら魔男の12騎士団は諸君らに対し、全面戦争を布告する!
それに伴い市街地には、自衛隊の防空態勢が取られ。
まさに魔女社会は厳戒態勢に入っていた。
そんな中。
なんと青夢と法使夏は自ら専用機を駆り。
魔男側を誘い出していた。
そうして現れた第十三の騎士団・女男の騎士団。
その保有艦たる幻獣機母艦スキュラ・幻獣機母艦カリュブディスを率いて同騎士団所属のメアリーとミリアは、青夢と法使夏に挑んだ。
そうして一時、彼女らはミリア率いる幻獣機母艦カリュブディスに翻弄されながらも。
加勢して来たマリアナや剣人の力もあり、何とか撃退に成功する。
しかし、それから数日後のことだった。
巨男の騎士団が擁する巨人型の幻獣機父艦が大挙し、さながら巨人の群れを成していた。
それを空飛ぶ法機グライアイ三機とゴルゴン旗艦により龍魔力四姉妹が、迎え撃っていた。
その激戦の末、最終的には四姉妹の四女・愛三とアロシグの一騎討ちとなり愛三の勝利に終わった後。
アルカナの提案によりこうして魔男側の攻勢競い合い――争奪聖杯に参加している六騎士団が一斉攻撃を仕掛けることになったのだった。
しかし。
「おうや? あれは……自衛隊だねえ、ご丁寧にもおもてなししてくれるみたいだ!」
こうして東京湾方面より迫る幻獣機母艦カリュブディス・幻獣機母艦スキュラを率いる女男の騎士団だが。
ふと目の前に、立ちはだかる影を見る。
それは東京湾上に並ぶ、自衛隊擁するウィガール艦数隻である。
が、それだけではない。
「……hccps://rusalka.wac/ 、セレクト ゴーイング ハイドロウェイ エグゼキュート! ……神様、感謝します。私の受け持ち方面に女男の騎士団――ミリアを来させていただけたことを!」
空飛ぶ法機ルサールカを操り法使夏も。
海中より、密かに女男の騎士団を迎え撃とうとしていた。
◆◇
「な!? ろ、六方面から!?」
「ええ、さあて……事は一刻を争ってよ皆さん。」
この戦いの少し前、縦浜の魔法塔華院別邸にて。
マリアナはメイド伝に聞いた自衛隊からの情報を話しながら、持って来させた地図を広げながら言う。
「今、魔男が迫っている方面はこうであってよ。」
マリアナは地図上にピンを置き、具体的な六方面の内訳を示す。
東京湾方面
神奈川方面
茨城方面
千葉方面
埼玉方面
山梨方面
「……これは当初の予定通り、戦力を分散するしかなくってよね魔女木さん?」
「……ええそうね、魔法塔華院マリアナ。」
マリアナのやや底意地の悪い光が宿る視線を受けながら、青夢はその言葉に頷く。
まだ何か考えがあると言わんばかりに自身の口元に拳を当てたままの青夢だが、マリアナはそんな彼女に構わず話を続ける。
「では皆さん。わたくしなりにではありますが、各方面に誰を配置するかを決めてみましてよ。」
「! なるほど……英乃、私とあなたはこの配置に異議はないわよね?」
「……ああ、姉貴。」
マリアナが更に差し出した紙の内容を見た夢零は、長妹にそれを回し。
英乃もそれを見て、妹たちに紙を回す。
「……え、ええ! め、愛三。私たちも文句言わないわよね?」
「うん、りょーかい!」
二手乃と愛三も快諾し、次は法使夏に回す。
「……マリアナ様。その……女男の騎士団は」
「やはりそこであってなのね、雷魔さん。……女男の騎士団どころかどの騎士団がどこから迫っているかも、自衛隊の方も混乱していて掴めなくってよ。」
「……はい、なら贅沢は申しません。私もこの配置で問題ないです。」
「……そう。」
法使夏の言葉にマリアナは。
ミリアと決着を自らつけたいという彼女の意図を察しつつも。
把握できていない情報は無論教えられる訳もなく、正確にその旨を伝え。
法使夏もその言葉に頷きつつ、紙を剣人に渡す。
「……ああ、これでいい。元々俺は、選んでられる立場じゃないからな。」
「……そう。」
剣人も二つ返事で了承し、青夢に紙を回す。
「さあ、最後はあなたであってよ飛行隊長。」
「……そうね、これなら大丈夫そうね。」
「あ、あの〜? あたしはどこなんや?」
最後に見た青夢が了承した様を見て。
赤音は、彼女に尋ねる。
「……魔女辺赤音さん。あなたはこの魔法塔華院マリアナが決めた所によれば後方待機となっています。私もそれが適任だと思います。」
「……ホンマかいな!」
青夢は努めて冷静に、赤音に返す。
赤音は当然というべきか、不本意そうだ。
こうして作戦会議の結果、凸凹飛行隊及び龍魔力四姉妹の戦力を六方面に分散することとなった。
東京湾方面 法使夏
神奈川方面 愛三・二手乃
茨城方面 剣人
千葉方面 夢零・英乃
埼玉方面 マリアナ
山梨方面 青夢
そして赤音は。
後方待機 赤音
このように配置されることになったのだった。
◆◇
「魔男の母艦型幻獣機……たったの二隻か。」
「こら、白魔二等空曹! あれは一隻でも十分脅威。さあ……いくよ!」
「うん……了解!」
再び、六騎士団との戦場の内東京湾方面では。
自衛隊のウィガール艦上空より力華と術里が、迫る女男の騎士団の幻獣機母艦を睨み待ち構えていた。
「まあとはいえ……本官たちは海中の娘の引き立て役って所だったかしら?」
「……はあ、それ思うとなんかやる気削がれるな……」
力華と術里は、次には海中に目を落とす。
無論、そこにいるのは。
「さあミリア……今度こそ決着をつけましょう!」
先述の通り、空飛ぶ法機ルサールカを駆る法使夏だ。
「……ウィガール艦、誘導銀弾による弾幕展開!」
「了解!」
先に動いたのは、自衛隊だった。
たちまちウィガール艦より、誘導銀弾群が発射され迫る女男の騎士団の幻獣機母艦へと弾幕となり降り注ぐ。
「ミリア!」
「はい、姐様! ……hccps://baptism.tarantism/、セレクト 渦の迷宮 エグゼキュート!」
が、メアリー率いる幻獣機母艦スキュラを守るべく。
ミリアは自身が座乗する幻獣機母艦カリュブディスを立ちはだからせ、それにより渦を巻き起こし盾とする。
それにより弾幕は、渦に当たり。
爆発したかに見えればその爆炎もすぐに風に流れて消え。
まったく弾幕は意に介されない形で、渦を纏うカリュブディスが迫る。
「さあて……お目当てがいるとしたら、やっぱり海中かしらあ!?」
そうして空中の有象無象などもはや興味もないとばかり。
ミリアは直感により法使夏の存在に勘付き。
渦纏うカリュブディスを、そのまま着水させる。
「! ミリア……ええ、私はここよ!」
が、対する法使夏も動じはせずに。
海中に食い込み始めたカリュブディスの下部に、嬉々として乗り込んで行く。
「あらまあ……懐に真っ先に飛び込んで来るとは、舐められたものね!」
ミリアも、今度は直感ではなくレーダーに感知されたその動きを見逃さず。
そのまま纏う渦の勢いを、更に強める。
「くうう! でもミリア、ここで力負けしてる場合じゃないのごめん! ……hccps://rusalka.wac/ 、セレクト 儚き泡 エグゼキュート!」
「ん? ふん例の泡攻撃ね、そんなもの……ぐうう!」
しかし法使夏の放った攻撃に。
最初こそ余裕を湛えていたミリアだが、カリュブディスが鳴動したことに自身も少なからず同様する。
「どうしたんだいミリア! カリュブディスが揺らいでるよお!」
「す、すみません姐様! ……くっ、海中から渦の中心を狙い撃ちされました!」
メアリーの憂いの通信にミリアは、努めて冷静に伝える。
そう、着水したばかりでまだ海中に渦の橋頭堡を作れぬうちに。
法使夏がルサールカから放った儚き泡に中心核を狙い撃ちされたのである。
たちまちメアリーが指摘した通り。
カリュブディスの纏う渦は揺らぎ、艦体も傾いている。
「なるほどねえ……でも、早く立て直して」
「誘導銀弾を撃ちまくれ! 敵艦の体勢を立て直しさせるな!」
「くう!」
「! ミリア!」
メアリーもミリアに、早々の立て直しを命じるが。
そうはさせじとウィガール艦からは、再び誘導銀弾群による弾幕が展開される。
それはやはり、いくらかは先ほどと同様に防がれるが。
勢い弱まった渦の鎧は先ほどの比ではなく、その隙間をすり抜けた誘導銀弾群はカリュブディス艦体へと少なからずダメージを与える。
「第一戦闘区画機群被弾!」
「第三居住区機群まで被害波及!」
「姐様、すみません……でも! 私はあなたを守る任務、最期まで」
「くっ、ミリア!」
カリュブディスの各構成機群からは、被害状況の報が齎されて行く。
ミリアの必死の言葉に、メアリーも歯軋りする。
「よおし、各機これはチャンスよ!」
「第一飛行隊、突撃! このアマゾネスの力も見せなくっちゃね!」
それだけではなく。
これを好機と見た力華や術里所属の空飛ぶ法機アマゾネス部隊もまた、カリュブディスへと突撃を仕掛ける。
「まったく……調子に乗るんじゃないよあんたたちい! ……hccps://baptism.tarantism/、セレクト ヘプトヘッズ エグゼキュート!」
「! くう、総員転身!」
「! こ、攻撃が海中まで!」
が、メアリーもここでは退かず。
自身が操るスキュラの、七つの犬の頭全てより熱線を四方八方に放つ。
それにより自衛隊機群も一旦引き、また、海中のルサールカにまでその攻撃は届いておりこちらも少々後退を余儀なくされる。
「せっかくのメインディッシュだと思っている所、申し訳ないけどねえ……これはまだまだオードブルさ! 宴は始まったばかりなんだよ!」
「姐様……」
メアリーは鼻すら鳴らし、座乗するスキュラから叫ぶ。
◆◇
「ふふふ、いいぞ女男の騎士団。君たちには何が何でも勝ってもらわなければな、さて……他の五騎士団はどう料理すべきか?」
「はっ、まさにそれぞ問題にございます。」
この様子を高空域の座乗艦ベヒモスより見ていたアルカナは。
他の五方面を見つつ、思索にふけっていた。




