#58 魔男・対立候補連合艦隊
「これは……まさか……」
青夢の頭の中では、一つのパズルが組み上がりつつあった。
次期生徒会のメンバーを、VR艦隊シミュレーションゲーム・WFOによる海戦の結果で決める総選挙・生徒会総海選。
その緒戦が、ギリギリまでマリアナたち現職艦隊に有利だったものの、劣勢の対立候補艦隊提督レイテ自ら最前線に出て一発逆転勝利を決めるという結果に終わった日の夜。
敵戦闘飛行艦―― フォール曰く、幻獣機飛行艦夢魔之騎馬が突如現れたが、何故か自衛隊機の攻撃を受けてもこの戦闘飛行艦は無傷という不可解な事態となっていた。
そこへ凸凹飛行隊が駆けつけ、彼女らとの交戦となったが。
こちらも戦うどころか、機体が何やら言うことを聞かないという不具合に見舞われ。
結局は取り逃してしまい、その数日後。
聖マリアナ学園では第二海選の日となっていた。
まずこの第二海選は、現職艦隊に数の不利がある。
しかしそれを予測済みだった彼女たちは、作戦を展開していた。
そうしてその作戦通り、現職と対立候補両艦隊の旗艦同士の一騎討ちとなっていた。
その結果は現職艦隊の勝利に終わり、両軍共に一勝一敗という状態で。
この日――最終海選の日を迎えた。
最初こそ、現職艦隊が優勢ではあったのだが。
そこに突如現れたのが、それぞれ多数の駆逐艦大の巨大馬型幻獣機及び、巡洋艦大の巨大海馬型幻獣機――魔弾駆逐父艦と魔弾巡洋父艦であった。
しかしその姿は、青夢ら凸凹飛行隊にしか見えないのだと言う。
それらはどんな手を使ってでも勝とうというレイテの策略だった。
レイテは外からは分からないようにこれらの艦隊を自陣営に引き込み。
その上でWFOのシステムそのものを掌握し、凸凹飛行隊以外にはシステム障害によって最終海選がリセットされてしまったと思わせていたのだった。
その上でレイテは、凸凹飛行隊の面々に自機のデータをWFOにコンバートするよう求めるが。
当然この状況においても違反をする訳にはいかないマリアナたちはこれを拒否し。
「では……駆逐父艦・巡洋父艦! 直撃炸裂魔弾を浴びせなさい!」
今駆逐父艦・巡洋父艦を動かさんとするレイテ率いる魔男・対立候補連合艦隊との戦いとなっていた。
「ま、マリアナ様!」
「悔しいけれど……全艦隊後退であってよ! このままではあのデトネーション何とやらを食らった時と同じになるの。」
「は、はい! 全艦隊後退!」
とはいえ魔男の駆逐父艦・巡洋父艦に対する戦略も戦力もない今とあってはどうすることもできず。
現職艦隊は、ひとまず後退することしかできなかった。
「レイテ様、奴ら臆病にも逃げて行くだけです!!」
「ええ、いい格好ね……ならば、もっと震え上がらせて差し上げるわ! 直撃炸裂魔弾弾幕展開!」
「ははは、奴らもこれで形なしですねレイテ様!」
レイテと共に現職艦隊の後退に笑い転げる武錬・雷破・ジニーは彼女の口から聞き覚えのない単語がいくらか出ていることにも気づかず。
駆逐父艦・巡洋父艦からは容赦なく、直撃炸裂魔弾の弾幕が展開される。
「ま、マリアナ様! 敵母艦型幻獣機群より弾幕が」
「こちらも誘導銀弾で応戦しつつの後退であってよ、駆逐艦・巡洋艦!」
「分かってるっての! ……でさ、魔法塔華院マリアナ」
「ああ、行くぞ魔女木!」
マリアナの指令により、現職艦隊前衛の駆逐艦・巡洋艦は誘導銀弾の弾幕を展開するが。
「きゃああ!」
「くうう!」
「くっ、これどうすればいいの?」
現実世界か仮想世界かという違いこそあれ、青夢たちも直撃炸裂魔弾の弾幕をまともに受けるのはこれが初めてであり対処に窮する。
その爆発は、とても誘導銀弾大の兵器由来のものとは思えないほど強い。
それこそ火炎誘爆砲の爆発をやや局所的に抑えたような――いわば、火炎誘爆砲のカートリッジ版ともいうべきものである。
青夢も先ほど組上がったパズルの結果をマリアナに報告しようとするが、敵弾の威力がそこまでは意図しないながらも彼女の報告を妨害する。
「おお、一気に敵損耗率4割です! このまま押し切れば、僕たちの完全勝利は間近ですレイテ様!」
「ええ、完全勝利ね……」
相変わらず不正な手段とは知らずに、直撃炸裂魔弾による戦果を喜ぶジニーだが。
レイテは彼女の言葉に、少し違和感を覚える。
完全勝利――
そう、確かに完全勝利である。
あの、第二海選の敗北さえなければ――
「……くっ! ええ、忘れていた訳ではないけれど思い出したわ。あの惨敗さえなければ私は、私は!」
「れ、レイテ様!?」
「ど、どうされました??」
レイテは屈辱を思い出し、座乗するウィガール艦艦橋部で地団太を踏む。
それにはジニーも武錬・雷破も、驚きのけぞる。
「あ、ああごめんなさい……私としたことが。」
レイテは他の対立候補の言葉に、我に返る。
「だ、大丈夫ですか?」
「ええ。けれど……第二海選でも言いました通り。現職艦隊旗艦は私の獲物ですから、よろしくね♡」
「は、はいレイテ様!」
レイテのこの言葉に、ジニーたちは各自艦の艦橋部で跪く。
「くう! 何とかしないと、まずはあのことを魔法塔華院マリアナに伝えないと!」
青夢は尚も駆逐父艦・巡洋父艦からの攻撃に晒されつつも頭を捻っていた。
◆◇
「ううむ、これはこれは!」
「まさか、そんな作戦ザンシたとは……」
「うーん、一本取られたっしょ!」
その頃、こちらはWFOの世界を覗き見ている魔男の円卓である。
ここから見える景色は、凸凹飛行隊やレイテが見ているそれと同じである。
「ああ、その言葉が聞きたかった……あのダークウェブの女王とやらの息がかかった魔女の奴らはあの仮想世界に閉じ込めて抹殺する! その他龍魔力の姉妹共は、フォールが直々に始末してくれる!」
「おお、なんと頼もしいゲイリー君!」
鼻息も荒く作戦を説明する馬男の騎士団長チャットを、ヒミルが褒め称える。
「どうしましたか、お嬢さん方? 何もないならば……こちらから行きますよ!」
「! 二手乃、愛三!」
そうして、龍魔力四姉妹とナイトメアの騎士フォールが対峙する戦域では。
いつかの凸凹飛行隊よろしく身動きの取れない姉妹のグライアイとゴルゴン艦を前に。
夢魔之騎馬に座乗するフォールは、自艦の周囲に直撃炸裂魔弾を多数生成する。
「英乃! hccps://graiae.wac/pemphredo、セレクト グライアイズアイ! ……さあ、来なさい魔男! グライアイズファング用意!」
「分かってるっての! ……hccps://graiae.wac/enyo、セレクト グライアイズファング!」
無駄と思いつつも夢零は、長姉の務めとばかりに。
グライアイズアイを起動させようとし、英乃にも指示を出す。
しかし、やはり。
「くっ……何故なの!?」
「い、言うこと聞けよおい!」
夢零機・英乃機もこれまたいつかの凸凹飛行隊と同じく。
機体が全く言うことを聞かず、手も足も出ない。
「ふふふははは! 中々に滑稽ですね……hccps://baptism.tarantism/、セレクト、デパーチャー オブ 直撃炸裂魔弾!」
「ひいっ!」
「お、お姉さん!」
フォールはその様を嘲笑い、周りに展開した直撃炸裂魔弾を発射しようとする。
その光景に二手乃と愛三は、目を瞑る。
「二手乃、愛三!」
と、その時である。
「がああ!」
「!? あ、あれは?」
「おうや、あれは……マルタの魔女、とやらかな?」
一同が突如響いた咆哮に、その方向を見れば。
そこへ現れたのは、幻獣機ボナコンだった。
◆◇
「あ、あれは!?」
「待たせたわね、皆さん!」
「いや、別に待ってはなくてよ……だけれど、アラクネさん!?」
同じ頃、WFOの中でも突如咆哮が響き。
幻獣機リバイヤサンと共にアラクネの姿が空に浮かぶ。
「姐さん、何とか間に合わしてくれたなあ!」
赤音は海中の潜水法母よりこの光景を見て、微笑む。




