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ウィッチエアクラフト 〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜  作者: 朱坂卿
第三翔 龍魔力財団対空システム
47/193

#46 艦隊戦明け

「くっ、これが敗北とは……ははは!」


 幻獣機ディアボロスに騎乗しながら。

 魔男の騎士団長マージン・アルカナは、敗北の味に耐えかねていた。


◆◇


「さあて、彼らは……」

「ひとまず、わたくしたちの法機戦艦へ連行しなくってはよ!」


 法使夏からの言葉に、マリアナは自分たちの法機戦艦を指差す。


 彼女たちの法機の後には先ほど赤音が無力化した幻獣機三機が、今同機上に縛り上げられたバーンとブラックマンと共に鹵獲・(カーミラの遠隔操作により)無線で曳航されている。


「いいわ……hccps://jehannedarc.wac/!」

「hccps://camilla.wac/!」

「hccps://crowley.wac/!」

「hccps://rusalka.wac/!」

「サーチ! コントローリング 空飛ぶ法機(ウィッチエアクラフト)! セレクト ランディング オブ 空飛ぶ法機(ウィッチエアクラフト)、エグゼキュート!!!!」


 青夢たちは彼らを連行すべく、法機に法機戦艦への着艦を命じる。


 たちまち法機四機と幻獣機三機は、法機戦艦の艦後部飛行甲板へと回り込む。


 しかし周知の通り、法機戦艦の飛行甲板は法機母艦の半分しかなく。


 発艦はカタパルトにて大丈夫であっても、着艦は不可能に見える。


 が、法機戦艦飛行甲板は。


 艦前部との継ぎ目とも言える艦橋後部煙突周辺の中央部が凹み、さながら艦内部へと続くスロープを形成する。


「へえ……改めて見てもやっぱり荘厳な景色ね!」

「おーほほ! ええ、そうでしょう!」

「はい、マリアナ様!」

「すごいな……これが魔法塔華院の技術力か!」


 青夢たちの法機群は、縦一線で後部飛行甲板中央に降下し。


 先ほど現れたスロープ――ひいては、そこから覗く艦内飛行甲板目がけて滑走していく。


「凸凹飛行隊、全機並びに鹵獲敵機群・搭乗者無事着艦!」


 青夢は安全確認の結果を、声高に叫ぶ。


 これにより、本当に戦いは終わったという達成感があった。


 空賊との戦いが終わり一か月ほど後。

 空戦訓練のため、再び法機母艦(ウィッチーズマザー)に乗艦していた青夢たち凸凹飛行隊だが。


 幻獣機リバイヤサンの出現の報により、出撃を余儀なくされていた。


 が、幻獣機と凸凹飛行隊の交戦中。

 これを離れた場所から見ていた、龍魔力(たちまな)四姉妹の編隊より誘導銀弾が放たれ。


 彼女らとも交戦となる。


 しかし、その最中ミリアとメアリーによる魔男の部隊も攻めて来ており。


 中々に決着のつかぬ膠着状態となっていたのだが。


 突如として龍魔力(たちまな)四姉妹の長姉・夢零(むれい)が発動させた彼女らの専用機・蛇女殺し(ハルペー)に備わる"システム"の真髄。


 彼女ら曰く、"目"。


 それがどれほどのものかは底知れないが。

 果たしてその"目"によって、夢零以外その戦場にいる者は皆動きを封じられ窮地に落ち入る。


 しかし、凸凹飛行隊も魔男も自機の能力により窮地を掻い潜り。


 さらに夢零も勝手な判断により"目"を起動させてしまったことを、実は彼女の"目"付け役だった末妹愛三に咎められ撤退し戦いはひとまず終息した。


 そうして今回、魔法塔華院コンツェルンと龍魔力財団の新システム搭載艦コンペティションに参加した凸凹飛行隊だが。


 そのさなか襲来した超巨大な竜型幻獣機・幻 獣 機 (クリプティッド)父艦(ファザーフード)バハムートを前に一同は、動揺する。


 しかし、逆にこれを自社の新システム搭載艦・ゴルゴン艦のいい咬ませ犬になると睨んだ龍魔力四姉妹は。


 そのまま艦搭載のゴルゴンシステムを使い、幻 獣 機 (クリプティッド)父艦(ファザーフード)バハムートと交戦するが。


 予想外に幻 獣 機 (クリプティッド)父艦(ファザーフード)バハムートの力は強大であり、それに対し龍魔力姉妹はついに、"目"――ゴルゴニックアイズを使用。


 幻 獣 機 (クリプティッド)父艦(ファザーフード)バハムートを照準と同時に足止めし、これにより止めを刺せると龍魔力姉妹は確信。


 全艦隊より誘導銀弾を放つが。

 幻 獣 機 (クリプティッド)父艦(ファザーフード)バハムートは、何と不可能なはずの変形を行なって誘導銀弾を全て回避。


 英乃の座乗するゴルゴン二番艦を自滅に近いやり方で葬ったことを皮切りに、二手乃のゴルゴン三番艦をも敗る。


 そのまま事態を重く見た自衛艦隊も出撃するが、これもあっさりと返り討ちにしてしまった。


 が、その直後に青夢ら凸凹飛行隊擁する法機戦艦の主砲からの攻撃を受ける。


 これを脅威と見た幻 獣 機 (クリプティッド)父艦(ファザーフード)は、再び必殺技形態に移行し。


 そのまま青夢らが自機を接続した法機戦艦と、必殺技撃ち合いとなり。


 かろうじて痛み分けに終わったその戦いだったが、そこへ幻獣機を従える能力を持つ法機使い・魔女辺赤音が攻めて来たために幻 獣 機 (クリプティッド)父艦(ファザーフード)は撤退する。


 そうしてそのひと月ほど後。

 再び現れた幻 獣 機 (クリプティッド)父艦(ファザーフード)を迎え撃つべく、改修された法機戦艦(アームドマギ)一隻とゴルゴン旗艦・四番艦による魔法塔華院・龍魔力連合艦隊が出陣したのであった。


 しかし幻 獣 機 (クリプティッド)父艦(ファザーフード)は同乗させている騎士・ブラックマンによる新兵器・直撃炸(エクスプロージョン)裂魔弾(マジックブレット)により、法機戦艦・ゴルゴン艦らによる攻撃を相殺し。


 さらにゴルゴン艦に搭載されているものと同じ"ゴルゴニックアイズ"を起動し。


 魔法塔華院・龍魔力連合艦隊を照準し、動きを止める。


 が、そこへ。

 海中を法使夏の乗機ルサールカの能力により飛び回る凸凹飛行隊のうち、青夢の乗機ジャンヌダルクより放たれた光線により幻獣機父艦は妨害を受ける。


 かくして幻獣機父艦は、目標を海中に定め。

 さらにはアルカナの予知により、青夢は予知を妨害され。


 更に、それにより幻獣機父艦はアルカナの予知の恩恵も受けて凸凹飛行隊を再照準し出す。


 が、青夢の策により法使夏のルサールカに仕込まれていた不確定要素満載の暴走プログラムが起動し。


 それにより暴れ出し、予知された凸凹飛行隊の行動パターン数が膨大になり処理できなくなったアルカナは、逆に無力化されてしまった。


 それにより幻獣機父艦と凸凹飛行隊は、純粋な力によるぶつかり合いをしていたのだが。


 実は単一の巨大兵器ではなく、幻獣機の群体であった幻獣機父艦がその艦体を最小単位である幻獣機群に分解し。


 その状態で放たれた雷の罠(ケラウノスネット)により凸凹飛行隊は捕われてしまい、窮地に陥っていた。


 が、なんと龍魔力四姉妹は。


 ファイティング ウィズ アワエネミー バイ アワセルフ――自分たちの敵と、自分たちで戦う。


 その望みを胸に、アラクネによって齎された新たな空飛ぶ法機(ウィッチエアクラフト)グライアイ。


 その能力により、一度は破られた"ゴルゴニックアイズ"


 それを強化し、再び避けられた誘導銀弾第一陣の後に誘導銀弾第二陣を見舞うことにより。


 見事に幻獣機父艦バハムートを、撃破したのである。

 が、その直後だった。


 突如として現れた、巨竜型エネルギー体。

 それは龍男の騎士団長バーンの専用機・アンフィスバエナとブラックマンに与えられた新たな幻獣機ステノー、エウリュアレーを中核とする擬似的な幻獣機父艦であった。


 その双頭を活かした隙なき攻撃の前に、凸凹飛行隊と龍魔力姉妹は再び苦戦を強いられるが。


 現れたマルタの魔女――魔女辺赤音擁する空飛ぶ法機(ウィッチエアクラフト)マルタ。


 その力によりバーンとブラックマンは乗機を無力化され敗北した。


「くっ……この!」

「魔女ごときが!」


 そうして、青夢たちは。


 法機戦艦後部飛行甲板上に、今縛られているバーンとブラックマンが引き立てその傍らに立っていた。


「ほほほ……何ですって? わたくしたち、魔女()()()があ?」

「ひいい! ば、バーン騎士団長!」

「ブラックマン、怯むな! ここで怯めば、奴らの思うツボだ!」


 バーンの言葉にカチンと来たマリアナの鬼気迫る様子に。


 ブラックマンは怯えるが、バーンは気丈に振る舞う。


「こら、魔男のくせに! マリアナ様に向かって何て口の利き方」

「ふん、魔男か……この敗北は、もはや魔男でなくなることを意味しているのだがな小娘たち!」

「な、何ですって?」


 が、バーンは法使夏の言葉には。

 自嘲気味な笑いとため息を漏らしつつ、諦めたように言う。


「ええ、バーン騎士団長……私も同じですが……お痛わしや……」

「ああ、ブラックマン……ふん、クランプトン! これで満足か?」

「! バーン騎士団長……」


 ブラックマンの言葉の次に、バーンは傍らに立つソードに対して言う。


 そう、周知の通りこれがラストチャンス。

 ならば、彼らはもう魔男には戻れないという末路を迎えることになるのだ。


 それを自覚しているためか、バーンもブラックマンもさほど抵抗は見せなくなった。


「はい、もしもし? ……魔法塔華院マリアナ、夢零さんがこの法機戦艦への着艦許可を求めているけど?」


 青夢はスマートフォンに夢零から来た着信の内容を、マリアナに告げる。


「そう……お通ししてよくってよ。なら、わたくしたちは甲板から移るとしましょう。」


 マリアナは二つ返事で了承しつつ、バーンとブラックマンを繋いでいたロープを引っ張る。


「痛た! お、おいお前」

「あら? お前とは、あなたご自身の立場をお分かりで?」

「ひいい!」

「だからブラックマン! 怯えるなと」


 またも引き立てられ、文句を言うバーンとブラックマンだが。


「いえバーン騎士団長……ここはどうか、おとなしくなさいませ。」

「! ふ、ふんクランプトン……お前ごときに言われたくない!」


 ソードに言われ、バーンは憤慨する。

 そうして飛行甲板脇に凸凹飛行隊がバーンたち諸共移動した後。


 法機戦艦上空を夢零が乗りその妹たちが遠隔で操る空飛ぶ法機(ウィッチエアクラフト)グライアイ三機が着艦体勢に入るべく旋回する。


 と、その時だった。


「!? あ、あなたは」


 ――な……あ、姉貴、これは!

 ――あ、アラクネさん!


「お、お姉さんたち!?」

「な!?」

「ま、マリアナ様!」

「あれは……」

「あ、アラクネ!?」


 龍魔力四姉妹や、凸凹飛行隊が驚いたことに。

 急に空飛ぶ法機(ウィッチエアクラフト)グライアイ三機の旋回する輪の中心に、アラクネの幻影が浮かび上がったのである。


 ◆◇


「ええ、久しぶりね……いえ、まあそんな久しぶりではないかしら!」

「あ、アラクネさん?」


 驚く夢零らや凸凹飛行隊をよそに。

 アラクネは手に、光球を作り出し。


 そこから人工太陽とも言えるほどの眩き光を出して高空にかかる雲を払い除ける。


「!? ま、マリアナ様あれは!」

「あれは、確か……」

「ま、魔男の騎士団長!?」

「ああ、そうだあれは。アルカナ殿だ……」


 凸凹飛行隊も法機戦艦飛行甲板上でこれを見て、驚く。


 そこには、今も痛みに呻く幻獣機ディアボロス騎乗のアルカナの姿が。


「くっ、見つかったか……我が機ディアボロスよ、ここはお早く!」

「ぐうう……がああ!」

「お、お鎮まりください!」


 アルカナは乗機を促すが。

 今なお、先ほど青夢の策による後遺症に苦しむディアボロスは暴れている。


「いい気味ね、ダークウェブの王の腰巾着よ……でももうあなたの役割は終わりだわ、お逝きなさい!」

「!? ま、待ってアラクネさん!」


 アラクネは、かつて青夢たちを導いた時の様子からは想像もつかない冷酷な表情をアルカナに向け。


 そのまま手より、光線を放つ。

 青夢は戸惑いつつも、アラクネを必死に止めようとするが間に合わない。


「ふん……こんな所で!」


 アルカナは未だ悶えつつも、アラクネに憎悪を向け。

 臨戦体勢を取り始める。


 と、その時。


「サーチ、コントローリング 幻獣機! ……エグゼキュート!」

「あら。」

「! こ、これは……」


 突如として現れた幻獣機グレンデルがアルカナ騎乗の幻獣機ディアボロス前に割って入り、代わりに攻撃を受ける。


 幻獣機グレンデルは、その光線により破壊される。


「大丈夫かい? アルカナの旦那よ!」

「ん! メアリー・ブランデンか……」


 そこへやって来たのは。

 右肩にミリアを、左肩にメアリーを乗せた幻獣機ゴグマゴグであった。


「これは貸しにしとくよ!」

「ふん! 恩着せがましいな。」


 憎まれ口を叩きつつも。

 アルカナは、ふっと笑う。


「マージン・アルカナ……」

「魔女木青夢か……」


 飛行甲板上から、青夢は。

 先ほどまで、予知能力で競り合っていた相手を見上げる。


「み、ミリア!」

「法使夏……ふん! まだ生きてたのね。」


 法使夏もまた、上空に浮かぶ幻獣機ゴグマゴグ上のミリアを見上げる。


 ミリアは忌々しげに、法使夏を見つめている。


「あら……元々は魔女だった二人がそんな男を庇うなんて。」


 アラクネはミリアやメアリーに、微笑みかける。


「おやおや……反吐が出るねえ、ダークウェブの女王様とやら!」


 メアリーもまた忌々しげに、アラクネを睨み返す。


「あーら、恐い恐い!」


 アラクネは肩を竦め、やや心外そうにメアリーらを見る。


「アラクネとやら、そして……魔女木青夢ウ! 認めてやろう、今回は完敗だ! はははは!」

「!? な、あ、アルカナ殿!」

「な……?」


 が、このアルカナの言葉にはバーンやブラックマン、さらにソードや凸凹飛行隊・龍魔力四姉妹も呆気に取られる。


 まさか、こうもあっさりと敗北宣言をするとは。


「マージン・アルカナ! あんたなのね……私の能力を妨害していた奴は。」

「はははは……ああ、お前のおかげで私は今このザマさ! はははは!」


 青夢の言葉にアルカナは、また狂った笑い声を上げる。


 敗北に狂ったとは、まさにこのことか。


「アルカナ殿……」

「そうね……私も妨害されててすごくムカついたし! そんなあんたが今吠え面掻いてて清々してる! ……でも、あんたが今生きていることにも清々してる!」

「! え?」

「ま、魔女木?」

「何?」

「まあ……」

「ま、魔女木さん?」


 が、青夢の更なる言葉には。

 アルカナ本人のみならず、その場の全員が驚く。


「何を言っているんだ貴様は!」

「私は! ……あんたのことも救いたい! あんたも含めた全てを、救いたいの!」

「くっ……ぐっ!」


 それは皮肉でも生温い情けでもなく、青夢の本心だったが。


 アルカナは青夢の言葉に、屈辱を覚える。


「魔女の小娘ごときが、私を救う? ……ははははは、ふざけるなあ!」


 アルカナは青夢を、強く睨みつける。

 よくも、この私を愚弄して――


「まあ待ちな、アルカナの旦那! ……ここは一旦、撤退だよ。」

「メアリー姐様の言う通り。自衛隊艦隊も、既に迫っているし。」

「ふっ……ああ、そうだな……」


 が、メアリーとミリアに宥められたアルカナは。

 意外にも、すぐに矛を収める。


「これで終わると思うな、魔女共! 魔女木青夢、これは貸しにしておく! 首を洗って、機を待っていろ!」

「アルカナ……」

「じゃ、そういうことで♡ ……セレクト、ハイドロトーペッド エグゼキュート!」

「くっ!」

「大丈夫よ、皆!」


 アルカナの捨て台詞と共に。

 いつの間にやら再度復元されていたメアリーの幻獣機グレンデルは、水の魚雷を法機戦艦や空飛ぶ法機(ウィッチエアクラフト)グライアイ三機に向けて放つ。


 アラクネはこれを、右手を広げて放った光により全て破壊し防ぐ。


「……敵は消えたわ、皆。」

「! あ、ありがとうございますアラクネさん……」


 アラクネは振り向き、空飛ぶ法機(ウィッチエアクラフト)グライアイや法機戦艦に向け微笑み消える。


 かくして、魔法塔華院・龍魔力連合艦隊と龍男の騎士団の戦いは終焉を迎えた。


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