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ウィッチエアクラフト 〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜  作者: 朱坂卿
第三翔 龍魔力財団対空システム
46/193

#45 マルタの魔女

「ふん、こいつが……幻獣機を従えるという魔女か!」


 バーンは目の前の幻獣機二機――の合体による空飛ぶ法機(ウィッチエアクラフト)マルタを睨み、叫ぶ。


 空賊との戦いが終わり一か月ほど後。

 空戦訓練のため、再び法機母艦(ウィッチーズマザー)に乗艦していた青夢たち凸凹飛行隊だが。


 幻獣機リバイヤサンの出現の報により、出撃を余儀なくされていた。


 が、幻獣機と凸凹飛行隊の交戦中。

 これを離れた場所から見ていた、龍魔力(たちまな)四姉妹の編隊より誘導銀弾が放たれ。


 彼女らとも交戦となる。


 しかし、その最中ミリアとメアリーによる魔男の部隊も攻めて来ており。


 中々に決着のつかぬ膠着状態となっていたのだが。


 突如として龍魔力(たちまな)四姉妹の長姉・夢零(むれい)が発動させた彼女らの専用機・蛇女殺し(ハルペー)に備わる"システム"の真髄。


 彼女ら曰く、"目"。


 それがどれほどのものかは底知れないが。

 果たしてその"目"によって、夢零以外その戦場にいる者は皆動きを封じられ窮地に落ち入る。


 しかし、凸凹飛行隊も魔男も自機の能力により窮地を掻い潜り。


 さらに夢零も勝手な判断により"目"を起動させてしまったことを、実は彼女の"目"付け役だった末妹愛三に咎められ撤退し戦いはひとまず終息した。


 そうして今回、魔法塔華院コンツェルンと龍魔力財団の新システム搭載艦コンペティションに参加した凸凹飛行隊だが。


 そのさなか襲来した超巨大な竜型幻獣機・幻 獣 機 (クリプティッド)父艦(ファザーフード)バハムートを前に一同は、動揺する。


 しかし、逆にこれを自社の新システム搭載艦・ゴルゴン艦のいい咬ませ犬になると睨んだ龍魔力四姉妹は。


 そのまま艦搭載のゴルゴンシステムを使い、幻 獣 機 (クリプティッド)父艦(ファザーフード)バハムートと交戦するが。


 予想外に幻 獣 機 (クリプティッド)父艦(ファザーフード)バハムートの力は強大であり、

 それに対し龍魔力姉妹はついに、"目"――ゴルゴニックアイズを使用。


 幻 獣 機 (クリプティッド)父艦(ファザーフード)バハムートを照準と同時に足止めし、これにより止めを刺せると龍魔力姉妹は確信。


 全艦隊より誘導銀弾を放つが。

 幻 獣 機 (クリプティッド)父艦(ファザーフード)バハムートは、何と不可能なはずの変形を行なって誘導銀弾を全て回避。


 英乃の座乗するゴルゴン二番艦を自滅に近いやり方で葬ったことを皮切りに、二手乃のゴルゴン三番艦をも敗る。


 そのまま事態を重く見た自衛艦隊も出撃するが、これもあっさりと返り討ちにしてしまった。


 が、その直後に青夢ら凸凹飛行隊擁する法機戦艦の主砲からの攻撃を受ける。


 これを脅威と見た幻 獣 機 (クリプティッド)父艦(ファザーフード)は、再び必殺技形態に移行し。


 そのまま青夢らが自機を接続した法機戦艦と、必殺技撃ち合いとなり。


 かろうじて痛み分けに終わったその戦いだったが、そこへ幻獣機を従える能力を持つ法機使い・魔女辺赤音が攻めて来たために幻 獣 機 (クリプティッド)父艦(ファザーフード)は撤退する。


 そうしてそのひと月ほど後。

 再び現れた幻 獣 機 (クリプティッド)父艦(ファザーフード)を迎え撃つべく、改修された法機戦艦(アームドマギ)一隻とゴルゴン旗艦・四番艦による魔法塔華院・龍魔力連合艦隊が出陣したのであった。


 しかし幻 獣 機 (クリプティッド)父艦(ファザーフード)は同乗させている騎士・ブラックマンによる新兵器・直撃炸(エクスプロージョン)裂魔弾(マジックブレット)により、法機戦艦・ゴルゴン艦らによる攻撃を相殺し。


 さらにゴルゴン艦に搭載されているものと同じ"ゴルゴニックアイズ"を起動し。


 魔法塔華院・龍魔力連合艦隊を照準し、動きを止める。


 が、そこへ。

 海中を法使夏の乗機ルサールカの能力により飛び回る凸凹飛行隊のうち、青夢の乗機ジャンヌダルクより放たれた光線により幻獣機父艦は妨害を受ける。


 かくして幻獣機父艦は、目標を海中に定め。

 さらにはアルカナの予知により、青夢は予知を妨害され。


 更に、それにより幻獣機父艦はアルカナの予知の恩恵も受けて凸凹飛行隊を再照準し出す。


 が、青夢の策により法使夏のルサールカに仕込まれていた不確定要素満載の暴走プログラムが起動し。


 それにより暴れ出し、予知された凸凹飛行隊の行動パターン数が膨大になり処理できなくなったアルカナは、逆に無力化されてしまった。


 それにより幻獣機父艦と凸凹飛行隊は、純粋な力によるぶつかり合いをしていたのだが。


 実は単一の巨大兵器ではなく、幻獣機の群体であった幻獣機父艦がその艦体を最小単位である幻獣機群に分解し。


 その状態で放たれた雷の罠(ケラウノスネット)により凸凹飛行隊は捕われてしまい、窮地に陥っていた。


 が、なんと龍魔力四姉妹は。


 ファイティング ウィズ アワエネミー バイ アワセルフ――自分たちの敵と、自分たちで戦う。


 その望みを胸に、アラクネによって齎された新たな空飛ぶ法機(ウィッチエアクラフト)グライアイ。


 その能力により、一度は破られた"ゴルゴニックアイズ"


 それを強化し、再び避けられた誘導銀弾第一陣の後に誘導銀弾第二陣を見舞うことにより。


 見事に幻獣機父艦バハムートを、撃破したのである。

 が、その直後だった。


 突如として現れた、巨竜型エネルギー体。

 それは龍男の騎士団長バーンの専用機・アンフィスバエナとブラックマンに与えられた新たな幻獣機ステノー、エウリュアレーを中核とする擬似的な幻獣機父艦であった。


 その双頭を活かした隙なき攻撃の前に、凸凹飛行隊と龍魔力姉妹は再び苦戦を強いられるが。


 それでも、彼女らが作り出した隙を活かすべく出現したのが。


「さあて……こっからはあたしの出番やな!」


 マルタの魔女――赤音だった。


「まったく……遅いっつーの!」


 青夢は法機戦艦から、叫ぶ。


「なるほど……まあ、約束を守るという当然のことは分かっていたってことね!」


 マリアナもこの様子を法機戦艦から見て、赤音に叫ぶ。


「ふふふ……もう勝ったとでも思ってか! だが、そうはいかない……hccps://baptism.tarantism/、セレクト ツインストリーム エグゼキュート!」


 が、バーンもまた素早く自機たるアンフィスバエナに命じる。


 たちまちアンフィスバエナは二つの頭部を自身の前後に向けて放つ。


「うおっと! ……hccps://martha.wac/、セレクト! アンアサンブリング 空飛ぶ法機(ウィッチエアクラフト)マルタ エグゼキュートやねんで……っ!?」


 これを見た赤音は、急ぎ空飛ぶ法機(ウィッチエアクラフト)マルタの機体に合体している幻獣機二機を分離させるが。


「ははは、貴様の策略などお見通しだ! 幻獣機二機の合体機体を目眩しに、背後から本体をやって来させたのだろう?」

「くっ、お見通しかいな……」


 バーンが先ほど、自機アンフィスバエナより放った二方向への光線。


 その一つは幻獣機二機の分離により回避されたものの、もう一つはそれとは逆方向より向かって来た通常の法機に当たり。


 爆散させた。


「ははは! 所詮は貴様らなど」

「ば、バーン騎士団長!」

「! 何だブラックマン、何を……!?」


 が、悦に入っていたバーンがブラックマンの指差す方向を見れば。


「今よ、雷魔法使夏!」

「オッケー、魔女木! ……hccps://rusalka.wac/…… セレクト 儚き(バブリングパニ)(ッシュメント) エグゼキュート!」

「っ!? よし……行くよ、マルタの魔女!」

「っしゃあ、行くでえ!」


 何と、いつのまにか法機戦艦の前には水の竜巻のようなものができており。


 それは法機戦艦から放たれた泡の爆発を推進力に変え、そのままバーンとブラックマンの陣営へと突っ込んで来る。


「ば、バーン騎士団長!」

「狼狽えるな、ブラックマンは直撃炸(エクスプロージョン)裂魔弾(マジックブレット)発射だ! ……hccps://baptism.tarantism/、セレクト ツインストリーム!」

  「り、了解! ……hccps://baptism.tarantism/、セレクト デパーチャー オブ 直撃炸(エクスプロージョン)裂魔弾(マジックブレット)!」

「エグゼキュート!!」


 それを見てバーンは、慌てて体勢を立て直し。

 もはや照準は間に合わないと思ってか、ブラックマンには魔弾発射を命じ。


 自身は再びアンフィスバエナの双頭から、二方向に光線を放ちその一方を竜巻へと向ける。


 たちまち直撃炸(エクスプロージョン)裂魔弾(マジックブレット)と光線は、竜巻へと直撃する。


「くうう!」

「はははは! これで」

「……hccps://jehannedarc.wac/……セレクト、ビクトリー イン オルレアン! エグゼキュート!」


 が、すぐさまその爆発を切り裂くようにして。

 青夢が自機より放った光線が、バーンたちへと迫る。


「くっ! ば、バーン騎士団長!」

「焦るなと言っているだろう! ……ならば!」

「くっ、えいっ!」


 が、バーンも。

 こんなこともあろうかと先ほどから光線を出させておいているアンフィスバエナの尾を、再び青夢へと向ける。


 それによりジャンヌダルクにアンフィスバエナ、両者の光線がさながら剣の鍔迫り合いが如くぶつかり合う。


「くっ、このお!」

「ふん、どこまでも忌々しき魔女共が! さあこれで」

「今や、行くでえ!」

「くっ、マルタの魔女か!」


 が、その隙に。

 竜巻の中からジャンヌダルクとアンフィスバエナの光線による鍔迫り合いの下を潜り、一機の法機が。


 さあ、これで――


「行っけえ、マルタの魔女!」

「ふん、かかったな! ……hccps://baptism.tarantism/、セレクト、ブーティング "(ゴルゴニックアイズ)"! ロッキング オン アワ エネミーズ エグゼキュート!」

「!? くっ!」

「ま、まさか!」


 ――あ、姉貴!

 ――お姉様!


「お姉さん!」

「ま、マリアナ様!」

「くっ、ブラックマンの"(ゴルゴニックアイズ)"か!」


 が、またも魔女たちが勝利を確信したのも束の間。

 ブラックマンが発動した"(ゴルゴニックアイズ)"により向かって来た赤音の法機のみならず。


 青夢のジャンヌダルクも、凸凹飛行隊の三機も法機戦艦諸共、さらにはゴルゴン四番艦も旗艦も、さらには龍魔力姉妹のグライアイ三機も。


 照準により動きを止められてしまった。


「ははは、よくやったブラックマン! さあ、直撃炸(エクスプロージョン)裂魔弾(マジックブレット)で奴らに止めを!」

「はい、バーン騎士団長!  ……hccps://baptism.tarantism/、セレクト デパーチャー オブ 直撃炸(エクスプロージョン)裂魔弾(マジックブレット)!」


 そうしてブラックマンの騎乗する幻獣機ステノーと、幻獣機エウリュアレーの周囲には。


 多数の直撃炸(エクスプロージョン)裂魔弾(マジックブレット)が、生成される。


 これで、魔女共も終わりだ。

 そう考えブラックマンも、発動術句を唱え始める。


 よし、これで――

 その時。


「! な、何だあの幻獣機スパルトイ群は?」

「? ……おお、あれは! 恐らく、我らへの援軍ですバーン騎士団長!」


 突如3時の方向に現れた幻獣機スパルトイの群れにバーンは驚くがブラックマンは喜ぶ。


「ひい! ま、マリアナ様、また新手が?」

「……違いますわ、あれは!?」


 が、バーンとマリアナは違和感に気づく。

 何とその中に、幻獣機リバイヤサンとボナコンがいたのである。


 そう、これは赤音が従えて来た幻獣機スパルトイの群れ。


 恐らくは先ほど壊滅した幻獣機父艦を成していたものの残党から、拝借されたものである。


「!? くっ、まさか…… セレクト ツインスト」

「はっは、油断したなあ! 行くんや、あたしの幻獣機群!」

「ぐうっ!」

「くっ、ぐわっ!」


 しかし、バーンの行動はもはや時すでに遅し。

 たちまち、幻獣機スパルトイの群れは大挙してバーン騎乗のアンフィスバエナとブラックマン騎乗のステノー・エウリュアレーを襲う。


 発射直前だった直撃炸(エクスプロージョン)裂魔弾(マジックブレット)は、襲来した幻獣機スパルトイの内何機かに当たり爆発する。


「ば、バーン騎士団長!」

「く、り、離脱せよ!」

「隙ありやあ! ……hccps://martha.wac/、セレクト! 処女の慈悲(ディバインアクア)、エグゼキュートやリバイヤさん、ボナたん!」

「ぐああ!」

「がああ!」

「くっ!」

「ぐっ!」


 が、慌てて離脱した幻獣機アンフィスバエナの頭上を幻獣機リバイヤサンが。


 幻獣機ステノー・エウリュアレーの頭上を幻獣機ボナコンが。


 通過しざまに処女の慈悲(ディバインアクア)――幻獣機を従える波動の技を放ち。


 それによりバーンとブラックマン両騎士は、幻獣機アンフィスバエナと幻獣機ステノー・エウリュアレーの三機のコントロールを奪われた。


 勝負は、あっという間に決まった。


「なっ、まさか!? …… hccps://baptism.tarantism/、セレクト ツインストリーム エグゼキュート!」

  「くっ、ステノー、エウリュアレー! ……hccps://baptism.tarantism/、セレクト デパーチャー オブ 直撃炸(エクスプロージョン)裂魔弾(マジックブレット) エグゼキュート!」

「……おのれえ!」


 両騎士は慌てて、無駄と知りつつも自機――であったもののコントロールを試みるが徒労に終わる。


「!? お、お姉さん! 艦が動くよ!」

「! や、やったわ英乃、二手乃、愛三! 私たちの勝利よ!」


 ――ああ、やったぜ姉貴!

 ――やりましたね、お姉様!


 ゴルゴン旗艦とグライアイ三機では、龍魔力四姉妹がこれを喜ぶ。


「ま、マリアナ様やりましたね!」

「ええ……でも、魔男たちはまだ残っていてよ皆さん! 第一主砲、第二主砲、全砲門敵幻獣機に向けなさい! これまでのお礼、この怒りと共にお釣りをつけてお返ししなくては」

「は、はいマリアナ様!」

「ま、待て魔法塔華院! バーン騎士団長たちは」


 法機戦艦でも、法使夏は喜ぶが。

 マリアナによる止めの命令を、ソードは受け入れ兼ねる。


「ええ、そうね……英乃、二手乃、愛三! 誘導銀弾の残弾全てを注ぎ込んででも、あの許し難い仇を葬り去るわよ!」


 ――ああ、姉貴!

 ――はい、お姉様!


「りょーかい、お姉さん!」


 龍魔力四姉妹も、まだ溜飲が下がらないとばかりに。

 再び、戦闘体勢に入り始める。


 が、その時である。


「待った、皆!」

「おや?」

「! 魔女木さん!」

「魔女木?」


 青夢は自機ジャンヌダルクを、もはや無力と化した幻獣機たちの頭上に飛行させながら叫ぶ。


「見て、自衛隊艦隊がもう到着するわ! 後は彼女たちに任せて、もう争いはいいでしょ?」


 それは、セイビング エブリワン――全てを救うという願いを、今度こそ叶えるための行動だった。


「魔女木……」

「魔女木さん……でも! 私たち姉妹は」

「待って龍魔力さん方! ……そうね、魔女木さんの言うことも()()()一理はなくって?」

「! マリアナさん……」


 しかし納得できない夢零は、声を上げるが。

 この場を収めたのは、それこそ()()()も、青夢の意見に同調したマリアナだった。


「わたくしたちは恐らく、自衛隊の方々よりお咎めを受けるでしょう。だから、もうよくってよ。そうでしょう?」

「……そうね、分かったわ。」


 マリアナの言葉に、ひとまず龍魔力四姉妹も凸凹飛行隊も戦闘体勢を解く。


 6時の方向には、自衛隊艦隊の進水するしぶきが見えた。


 ◆◇


「ふん、今回ばかりは完敗だ魔女たち……認めてやろう!」


 この戦場よりさらに高空では。

 青夢の策により弱体化させられ予知どころか戦闘もままならなくなったアルカナが、珍しく敗北の苦味に歯軋りしていた。

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