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ウィッチエアクラフト 〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜  作者: 朱坂卿
第九翔 七人の吹き手
175/193

#174 第二の喇叭

「う、宇宙に……魔男の飛行艦(チャリオット)が!?」


 青夢は尚も幻獣機バルバトス騎乗のラディーナを追いかけつつ。

 自衛隊からの連絡に目を丸くする。


 尚も耳障りな喇叭の音が響く中、それが気にならぬくらいの驚きであった。


「ふん……隙ありだ!」

「くっ! ……私が行きます! 私が、この法騎を、戦乙女の宙飛ぶ法騎スペースライドオブワルキューレに変えて!」


 ラディーナが再び幻獣機バルバトスに命じる中。

 青夢は通信で、自ら宇宙に赴くことを進言する。


「いや待て! 動力源は問題ないとして、人間はどうだ! 宇宙装備がなければ、宇宙へは行けないだろう?」

「! そ、そういえば……」


 通信を通した巫術山の言葉により。

 青夢ははっとして自分の身なりを見直す。


 当然宇宙服は、着ていない。


「どうした! 隙ありだぞ!」

「くっ、ジャンヌダルク回避い!」


 青夢は法騎ジャンヌダルクを駆り幻獣機バルバトスから放たれる、再びの矢による攻撃を回避する。


「ははは、しかしいつまでそうしていられることやら! このままでは貴様ら、ジリ貧だぞ?」

「くっ、そうね……」


 青夢は尚も攻撃を躱し続けながら歯軋りする。


「法機戦艦、主砲塔旋回ですわ!」

「マリアナ様、敵機群捉え切れません!」

「くっ、この!」

「ダメだわ、"(ゴルゴニックアイズ)"でも捉え切れないぐらいの速さなんて!」

「あ、姉貴!」

「お、お姉様!」

「お姉さん!」


 そうする内にも。


 燃え盛る父艦ユグドラシルから炎に包まれた幻獣機スパルトイ群が剥がれて飛来するが、法機戦艦座乗の凸凹飛行隊もギリシアンスフィンクス艦座乗の龍魔力四姉妹もそれらを捉え切れずにいた。


 悔しいが、今ラディーナが言った通り。


 このまま地上で戦い続けても、その間に宇宙から――


「hccps://sylph.wac/、Select 風元素(エレメンタルウインド)! Execute!」

「!? な!?」

「ん!? こ、これって!」


 が、その時突如として聞こえた術句と共に。

 法騎ジャンヌダルクと幻獣機バルバトスの間に、暴風が吹き荒れる。


「シルフの……魔女か!」

「Yes……さあMs.魔女木! 早く、宇宙へ!」


 幻獣機バルバトスはその攻撃から逃げ回り。


 ヘリ(ダストデビル)型の法機シルフの中より、搭乗しているマギーの声が響いている。


 マギーは所属する米軍と共に未だ沖縄に駐留しており。


 そこから法機を飛ばしてここにやって来たのだった。


「し、シルフの魔女さん! で、でも」

「No Problem! 私の法機は大気を操って機内の気圧から酸素濃度まで自由に調整できるの。だから宇宙装備なしでも、宇宙に行けるわ!」

「! そ、そんな力が……?」


 青夢はマギーの言葉に驚く。


「それに……私の祖国アメリカが被害に遭ったら宇宙からの方が援護しやすいし! 私にとってもいいことだらけなのよ!」

「シルフの魔女さん……でも……」


 青夢はちらりとマリアナらをまた見る。

 やはり彼女たちは、まだ父艦ユグドラシルの構成機群に苦戦しているようだが。


「行けばよくってよ、魔女木さん! 高々あなたの一人や二人欠けた所であんな者たちなど!」

「そ、そうよマリアナ様を舐めたら許さないわ!」

「魔女木、あいつらなどお前が相手するまでもない! 俺たちでも充分だ!」

「あら……ミスター方幻術、それはどういう意味であって?」

「そうよそうよ!」

「あんたたち……」


 他ならぬ彼女たちが、背中を押した。


「分かったわ……よろしく、シルフの魔女さん!」

「O、K! さあ、行きましょう! hccps://sylph.wac/、Select 風元素(エレメンタルウインド)! Execute! さあ、Thundering Cloud!」

「ぐうっ! 雷雲か!」


 青夢の返事を受け、マギーは法機シルフの力をまたも発動し。


 雷雲を呼び出して自機と法騎ジャンヌダルクを守る。


「でも、あなたの法機……宇宙まで飛べるの?」

「No Problem! 見ていて……hccps://MaggieICFoster:********@libra.mc/libra.engn、Select Connecting! Downlod 電使翼機関(ジェットエンジェン)、Execute!」

「! ……あらまあ。」


 その雷雲の中で、法機シルフは。

 そのプロペラ部を折り畳むと、機体下部から爆炎を噴き出す。


「Well、私のSylphはBodyも幻獣機でできているし、大気を操れる……どう?」

「ええ……不足はなさそうでより安心したわ! hccps://AomuMameki:××××××@ophiuchus.mc/ophiuchus.engn、セレクト、コネクティング! ダウンロード 電使翼機関(ジェットエンジェン)、エグゼキュート!」


 そのまま青夢も、法騎を戦乙女の宙飛ぶ法騎スペースライドオブワルキューレへと変え。


「さあ行きましょう……シルフの魔女さん!」

「of course! ええ……Let's Go!」

「ぐっ!? く……逃したか!」


 戦乙女の宙飛ぶ法騎スペースライドオブワルキューレジャンヌダルクの後ろに宙飛ぶ法機シルフは連結し。


 そのまま電使翼機関(ジェットエンジェン)二基を連結し、空高く飛び上がる。


 緯度的な問題で地球の遠心力利用はまったく見込めないが、電使翼機関(ジェットエンジェン)の前にそれらはまったく問題ではなく。


 連結された法騎と法機は、苦もなく大気圏を突破して行く。


「マリアナ様!」

「ええ……さあわたくしたちはこちらを!」


 それを見送ることもそこそこに。

 マリアナたちは、父艦ユグドラシルの相手に没頭する。


 ◆◇


「おやおや……これはこれは、客人ではないか!」


 宇宙にて。

 新たなる雪男の騎士団長グランドは、突如として躍り出た法騎と法機を前に叫ぶ。


「それは、前の雪男の騎士団が使ってた……その母艦型幻獣機を使ってどうするつもり!」


 青夢は通信を相手方たるグランドに飛ばす。


「ははは、この父艦バーサーカーズマーチは燃え盛る山となり! 地上に降って海を穢す……それが第二の喇叭により齎される災いだ!」

「! ぼ、母艦型幻獣機が!」


 グランドが言うが早いか。

 父艦バーサーカーズマーチは、その艦体を燃え上がらせる。


 それは今しがた、グランド自身が明かしたように。

 まさしく燃え上がる山と呼ぶべきものである。


「さあ……そこを退いてもらえないかな? これからは我らの災いなのでね!」


 グランドは穏やかに見えて、その実激情をもって青夢たちに呼びかける。


「なるほど、あんたたちが地上に災いを齎すというなら……私たちは! あんたたちの災いになってあげるまでよ!」


 しかし青夢は、グランドの言葉を無碍に拒む。


「なるほど、あくまで戦うというか……ならば! 先にこのバーサーカーズマーチによる小手調べに付き合ってもらわなくてはねえ!」


 グランドは自艦に命じる。


 すると父艦バーサーカーズマーチからはその艦体を構成する怪物が何体か、分離し。


 炎を纏ったまま、法騎と法機を突撃させる。


「……シルフの魔女さん」

「Yes……hccps://sylph.wac/、Select 風元素(エレメンタルウインド)!」

「hccps://jehannedarc.row/GrimoreMark、セレクト! 大気摩擦熱波(エアパッション) エグゼキュート!」

「!? くっ、何だ父艦バーサーカーズマーチの一部たちが!」


 しかしグランドが差し向けた構成機群は。

 マギーと青夢が放った大気系の攻撃により、焼き尽くされてしまった。


 法機シルフの大気操作を、青夢が宇宙に行くまでの間に組み上げたグリモアマークレットで改変した大気の摩擦熱を放つ技である。


「さて後は……魔法塔華院マリアナ!」


 青夢は更に。

 地上のマリアナたち座乗の法機戦艦に向けても、通信を飛ばす。


 ◆◇


「まったく逃すとは我ながら、姫君や王より新たな騎士団長を拝命した身として不甲斐なし……ならば! 騎士共、あの二隻の艦と三つの法機群を狙え! せめてもの腹いせだ、潰せ!」


 その地上では。

 もはや八つ当たりとばかりにラディーナは、自軍に命じる。


 それに伴い法機戦艦やギリシアンスフィンクス艦による艦隊周辺に魔男の戦力が集中して行く。


「く、相変わらずちょこまかと!」

「ま、マリアナ様!」

「……主砲塔、全機旋回! 法機グライアイ群、空域を離脱してほしくってよ!」

「……え?」


 それを煩わしがる法使夏たちをよそに。

 マリアナは、自艦に命じ。


 力強く法機戦艦は、その主砲塔三基を振るう。

 そして。


「…… hccps://camilla.wac/、セレクト ファング オブ バンパイヤ エグゼキュート! 

 hccps://sylph.wac/、セレクト 風元素(エレメンタルウインド)

 hccps://jehannedarc.row/GrimoreMark、セレクト! 大気摩擦熱波(エアパッション) エグゼキュート!」

「!? な、これは……総員離脱せよ! ぐっ!」


 マリアナが命じるままに、法機戦艦の主砲は唸り。


 その艦砲射撃により繰り出された攻撃により周辺大気には摩擦熱が撒き散らされ、父艦ユグドラシルの構成機群は次々と焼き尽くされて行く。


「なるほど……いきなりでびっくりしてよ、だけど! 多くの法機によるネットワーク連携とそれによる技……これは、もはやわたくしのカーミラにしかできなくってよ!」

「ま、マリアナ様……?」

「ど、どうしたんだ魔法塔華院?」


 法使夏たちは今一つ、理解できない様子だが。


 マリアナは先ほど青夢から受けた通信に従い。


 法機ジャンヌダルクとシルフと、カーミラの能力でもって連携して今の技を繰り出したのだった。


「く……皆、一斉に! あの法機戦艦を狙え!」


 ラディーナは、他の騎士たちにも命じ。

 自身も幻獣機バルバトスに弓を構えさせて法機戦艦を狙わせる。


「! 今が狙い時よ妹たち……セレクト ブーティング "(ゴルゴニックアイズ)"! ロッキング オン アワ エネミー エグゼキュート!」

「く! しまった!」


 が、それを夢零は見逃さず。

 自機の能力により、立ち止まった木男の騎士団を狙い。


 たちまちラディーナとその自機たちは、足止めを食らってしまった。


 ◆◇


「くっ、中々やるじゃないか……ならば!」

「! 敵母艦分離ね……行くわよ、シルフの魔女さん!」

「of course!」


 そうして、宇宙では。

 グランドがやぶれかぶれとばかり、父艦バーサーカーズマーチを分離させる。


 青夢とマギーも、更に身構える。




「中々に頑張っているじゃない、魔女の人たちも。」

「はっ、姫君!」


 これも当然、ダークウェブからアリアドネやタランチュラ、ヴァイスが見ていた。


「さあて……三人目の喇叭の吹き手も、絶賛待機中よ……」

「はっ、姫君! この虎男の騎士団長にして幻獣機コロリの騎士、待ちかねております……」


 そのアリアドネの意思を感じ取り。

 新たなる虎男の騎士団長、幻獣機コロリの騎士は。

 今戦場となっている宙域から少し離れた場所にいたが。


 そこには双猫の戦車フレイヤーズチャリオットの姿が。

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