#169 騎士団救出
「くっ……この! 離せアロシグ!」
父艦ニーズヘッグの司令室を兼ねる輸送型幻獣機ドラゴニックスパルトイ内にて。
その父艦諸共捕らえられた龍男の騎士団長バーンは歯軋りする。
「ああまったくだ……離したまえゴーグ君! これでは勝負にならない!」
同じく父艦たる死爪艦諸共に捕らえられたヒミルも、もがく。
「いんや、何言っとるだあ? ここは元から俺たちだけの戦場だよお……さああ!」
しかしアロシグは意に介さず。
捕らえた父艦たちに、誇らしげに叫ぶ。
「そんな……これじゃあ」
法機ジャンヌダルクで飛び回りつつ、青夢は歯軋りする。
このままでは、やはり魔男たちは救えない――
が、その時。
「んぐっ!?」
「くっ、これは!」
「これは……空から何か!」
ふと空から降り注ぐ弾幕が、父艦トール本体をピンポイントで襲う。
「ま、まさかこれって!?」
青夢は空を見上げる。
◆◇
「hccps://vouivre.wac/、セレクト デパーチャー オブ 金剛鎌弾! エグゼキュート! ……さあ、法機アンドロメダ! 頼んだわ!」
「Oui! さあ地上の魔男たちい……私の流星弾もおまけしてお見舞いするわ!」
沖縄から放たれて大気圏を突破した金剛鎌弾を、宇宙に浮かぶ法機アンドロメダが受け取り。
「hccps://andromeda.wac/、セレクト 流星弾 エグゼキュート!」
先ほどの宣言通り、自機の攻撃も上乗せした上で地上に放ち魔女たちをサポートする。
◆◇
「ぐうっ! hccps://baptism.tarantism/、セレクト 巨人の炎! さあ、空まで焼いてくれるだよおお!」
その宇宙からの攻撃に対し。
座乗する父艦トールから、アロシグが術句と怨嗟を叫ぶ。
「hccps://jehannedarc.wac/、ビクトリー イン オルレアン エグゼキュート!」
「hccps://crowley.wac/、セレクト アトランダムデッキ! 月――月の軌跡 エグゼキュート!」
「ぐう! まあただか、魔女の戦艦!」
しかし、そうはさせじとばかり。
青夢と、北海道からの遠隔で法機を繋げている剣人による命令で法機戦艦から砲撃が放たれて父艦トールを襲う。
「さあて……だけど空からの弾幕も法機戦艦からの艦砲射撃も所詮は時間稼ぎにしかならないわ! どうすれば……」
青夢は戦場を見渡す。
囚われは魔男たちだけでなく、愛三のギリシアンスフィンクス艦や自衛艦隊の艦も多数いる。
無論、誰であろうと囚われている者たちは助けるのが青夢の願いである。
故に救う者を選ぶという選択肢は、最初から彼女にはなかった。
「だけど、やるしかないわ……全てを救うためには!」
青夢はより、決意を固める。
◆◇
「愛三、大丈夫愛三!?」
「ん……む、夢零お姉さん……」
その囚われのギリシアンスフィンクス艦の中で。
愛三はふと、聞こえて来た長姉の声に気がつく。
「無事なようね、よかった……」
「! そ、そうだ! とにかくギリシアンスフィンクス艦を動かさないと……ぐっ!」
愛三はその言葉に、はっとし。
急いで、ギリシアンスフィンクス艦を動かそうとする。
「待って愛三! 今あなたたちは巨男の母艦型幻獣機が伸ばした枝に囚われているの! そこから抜け出すには、巨男の本体を叩くしかないわ!」
「! い、今ギリシアンスフィンクス艦が……そ、そういえば……」
しかしそこにまたも響いた長姉の言葉に、愛三ははっとする。
そうだ、今は巨男の艦に捕まっていた。
ならば拘束を、まず解かなければ。
「さあ行くわ、愛三!hccps://graiae.wac/edrn/fs/stheno.fs?eyes_booting=true――セレクト ブーティング "目"! ロッキング オン アワ エネミー エグゼキュート!」
「うん……お姉さん!」
夢零はそうして、父艦トールに向けて。
"目"を発動し、照準する。
◆◇
「くっ! これは、動きがあ!」
「! あれは!」
そうして照準され、身動きがとれなくなった父艦トールからはアロシグの苦悶する声が響き。
それはこの場にいる多くの者たちに、千載一遇の好機として映る。
「よおっし! 英乃お姉さん、二手乃お姉さん!」
「ああ愛三、だけどお前が仕切るなよ! hccps://graiae.wac/deino、セレクト グライアイズアイ エグゼキュート!」
「わ、分かったわ愛三! hccps://graiae.wac/enyo、セレクト グライアイズファング エグゼキュート!」
「01CDG/、デパーチャー オブ 誘導銀弾 エグゼキュート!」
その隙をまず突いたのは、作り出した張本人たる龍魔力四姉妹であり。
たちまち今空から降り続いている金剛と流星の弾幕に、銀弾の弾幕を追加して行く。
「ふん、舐めるなだよお! さあレーヴェブルク、力を貸すだあ……ふん、ふんん!」
が、アロシグもすぐさま反応し。
たちまち今展開している枝から、天を衝かんばかりに縦に伸びる枝を展開して弾幕を防いでいく。
「な!? あ、あれってこっちの弾の動きを見て……? まさか、リオルの騎士団長さんの力を!?」
愛三はそれを見て驚く。
器用に弾幕を防衛するその形はまさに、レーヴェブルクの能力そのものだったからだ。
「はっははー! こんなんで負けはしないだよお!」
「……セレクト 楽園への道 エグゼキュート!」
「hccps://kumiho.wac/、セレクト! 九尾――一尾一閃 エグゼキュート!」
「hccps://xiwangmu.wac/、セレクト! 死鎌爪 エグゼキュート!」
「ぐうっ!? くっ……蝙蝠男の死爪艦があ!」
しかし。
盟次の法機パンドラと、陽玄の法機九尾狐、鬼苺の法機西王母が踊り出て。
ヒミル座乗の死爪艦を捕らえていた枝を切り裂き、同艦を解放する。
「ほう……どういう風の吹き回しだい飯綱法盟次! 僕を救ったりして、今更」
「ああヒミル殿、提案だ! まずはあの巨男の父艦を共に倒さないか?」
「……何?」
ヒミルは盟次の急な提案に、驚く。
「ぐう……ブラックマン! もはや一か八か直撃炸裂魔弾を!」
「! ば、バーン騎士団長……しかし……」
一方、こちらは同じく囚われた父艦ニーズヘッグ座乗のバーンは。
ジリ貧となりつつある現状を、何とか打開できないかと考えていた。
と、そこへ。
「hccps://eingana.wac/、Select! 虹の彼方 Execute!」
「hccps://takiyasya.wac/、セレクト! 髑髏剣 エグゼキュート!」
「むっ!? ぐう! ……あれはオーストラリアの法機と、自衛官の法機か!」
法機エインガナと法機滝夜叉が飛来し。
父艦ニーズヘッグを捕らえている枝を切り裂き、同艦を解放する。
「さあて後は……この辺にある枝、利用させてもらうわ! hccps://takiyasya.wac/、セレクト 餓者髑髏 エグゼキュート!」
「むっ! あ、あの時の巨大な骸骨か!」
更に力華は。
自衛隊専用機アマゾネスベースの法機滝夜叉から光線を周囲の枝――無論父艦と同じく幻獣機スパルトイで形成されている――に浴びせ。
それにより、先の東北方面防衛戦での時の巨大な骸骨を生成し法機に纏わせる。
「く……それで、私とやり合おうというのか!」
「まさか……今は僚艦を救出するのが先よ! そちらのオーストラリアの法機さんと龍男の母艦型幻獣機さんは、悪いけどあの巨男の母艦を防いで!」
「な……」
が、力華は今囚われている自衛艦隊を救出しようとして父艦ニーズヘッグには目もくれない。
「Yeah! 了解したわ!」
「く、勝手に! しかし……これは好機か!」
法機エインガナ搭乗のミシェルは快諾し。
バーンは不満顔ながらも、やはりこの好機は逃すまいと父艦トールに目を向けている。
「ふう……各騎士団の母艦型幻獣機は大丈夫そうね……さあて。」
「魔女木さん、さあ! 今わたくしたちはどうすべきか指示を出してくれなくってはよ!」
そんな戦場の様子を、飛び回りつつ見るは。
法機ジャンヌダルクを駆る青夢と、法機カーミラを駆るマリアナである。
「そうね……私たちは、巨男の母艦型幻獣機の本体を狙うわ! さあ魔法塔華院マリアナ、早く雷魔法使夏の」
「!? お、お待ちになって魔女木さん! あ、あれは!」
「え……っ!? な!」
しかし指示を出そうとした青夢がマリアナに言われ。
振り返った先には――




