表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウィッチエアクラフト 〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜  作者: 朱坂卿
第八翔 魔男の黄昏
169/193

#168 魔女男世界大戦

「こ、これは!?」

「はははあっ、これは愉快だよお! 邪魔者が一気に増えただなあ!」

「まったくまったく……これだから魔女たちというものは!」


 真の争奪聖杯の、真の最終決戦。

 それは魔女たちによるあらゆる妨害をものともせぬ、生き残った魔男の三騎士団による戦いだったが。


 いや、だったはずなのだが。


 今ここには海外の人にまで与えられた法機すら揃い。


 さながら魔女男による、日本を舞台とした世界大戦となったのである。


「皆……来てくれたんだ!」


 青夢も周囲を見渡し、顔を明るくする。


「ヒミル殿よ……まだ勝負は終わっていないぞ! やるならばとことんやらねばなあ……」

「おうやおや……どこまでも腹立たしいものだねえ君は!」


 法機パンドラ及びヘルからは、盟次の声が聞こえて来る。


 ――さあ、私たちの分もやってくれないとマージン・アルカナ!


「く……ああ、その名前はもう止めてくれと言っているだろう呪法院レイテ! だが今は頼みを聞かざるを得ない……後で覚えておけ!」


 盟次が勇んで法機を駆る所へ響いたのは。


 先の戦いで、法機モーガン・ル・フェイの能力を半ば強制的に分け与えてくれたレイテの声だ。


「네……あ、あの時! よくも私たちの国を!」

「是……もうここにはいないけど、私も国を! 朋友が……女夭(ヌーヤオ)がいる国を襲われた!」

「! お前たちは……何だ、いたのか!」


 法機九尾狐(クミホ)を駆る陽玄(양현)と、法機西王母を駆る鬼苺(グイメイ)もいた。


「まったく……本当に、本当に目障りだよ諸君! まあいいだろう……この僕が、直々に相手取ってあげるよおお! hccps://baptism.tarantism/、セレクト ビーイング トランスフォームド イントゥ  光鎧形態フォーメーションエインヘリャル エグゼキュート!」

「む!? またあの形態か!」


 そんな法機たちに応えるかのごとく、半人半艦の死爪艦は。


 ヒミルの命に応え、迅雷を全身に纏う。


 ◆◇


「Yes! 私も……Mr.アントンたちの仇を取らせてもらわないとね、Mr.アロシグ!」

「おやおや……ありゃ、いつかのヘリ(ダストデビル)じゃあないだか!」


 法機シルフから響くマギーの声に、アロシグも反応する。


 アメリカで決着をつけ損なった法機だ。


「しっかし……甘いだよおお! そんな単機で、俺たちの父艦トールに挑もうだなんてええ! さあ、父艦ヨルムンガンドおお!」


 アロシグは吼えて父艦トールに命じる。

 すると、右腕の父艦ヨルムンガンド部分も吼え。


 毒を周囲に、撒き散らす。


「負けられないわ……私をここまで行かせてくれたデイブのためにも! hccps://sylph.wac/、Select 風元素(エレメンタルウインド)! Execute! ……Well、Storming!」


 しかしマギーも、すぐさま法機シルフに命じ。

 たちまち大気操作を駆使して、周囲に嵐を纏い。


 撒き散らされた毒を蹴散らしながら、マギーは法機シルフでもって父艦トールへて肉薄して行く。


「さあ……接近しているわよ!」

「ふんっ! そんなんでえ勝ったつもりになるんじゃないだよ! セレクト 、巨人の炎インモータリックフレイム!」


 が、アロシグも更に即応し。

 父艦トールに命じ、全身より獄炎を放とうとする。


 と、その時。


「hccps://andromeda.wac/、セレクト 流星弾(メテオバレット) エグゼキュート!」

「ぐう! クソ!」

「!? こ、これは……」


 突如として宇宙から弾幕が展開され。

 父艦トールは、狙い撃ちされた。


 その主は。


「Oui……私もまだヨーロッパが心配だから宇宙からだけど、魔男あなたたちを許さないわ!」


 初花だった。


 彼女は宇宙から法機アンドロメダで東京湾を狙いつつ言う。


 ◆◇


「Yeah……オーストラリアでの時はお世話になったわね! よくも……よくも私たちの国を!」

「おやおや……あの時の法機か! よくぞ来たなああ!」


 一方、父艦ニーズヘッグ座乗のバーンは。

 自身に向かい来る法機エインガナと対峙する。


 いや、法機エインガナのみならず。


「あの時の爆発、そもそもあなたの母艦型幻獣機が起こしたんだったわね!? 許さないわ、龍男の騎士団!」

「おやおや……あの時の自衛官か!」


 何気に規律違反だが、怪我を押して法機滝夜叉を駆るのは力華である。


「ふふ……ちょうどいい、飛んで火にいる夏の虫だ! ブラックマン」

「hccps://graiae.wac/edrn/fs/stheno.fs?eyes_booting=true――セレクト ブーティング "(ゴルゴニックアイズ)"! ロッキング オン アワ エネミー エグゼキュート! やっちゃえー!」

「!? な! こ、これは!」

「! え、これって!」


 が、その時。


 突如どこかから響いた術句により、父艦ニーズヘッグは動きを止められる。


 その声の、主は。


「間に合った……! さあお姉さんたち、動きは止めたよ!」

「ええ……ありがとう愛三!」

「これは……まさか貴様か! スフィンクスの艦!」


 声の主はウィガール艦の戦列の隙間より踊り出た、ギリシアンスフィンクス艦の中にいた。


「わたしは……特にあなたとは因縁ないけど、どいてー! お姉さんたちは因縁あるみたいだから、ひとまず相手してもらうよー!」


 愛三はギリシアンスフィンクス艦から、高らかに宣言する。


 ◆◇


「リオルの騎士団長さん……ごめん、私……」


 東京のホテルの一室にて、またも悲しみに沈む愛三である。


 話は、愛三がギリシアンスフィンクス艦にて出撃する少し前に遡る。


「愛三! 聞こえているかしら愛三!」

「! む、夢零お姉さん……?」


 しかし、そんな所に。

 愛三の脳内へと、長姉の言葉が響き渡る。


「愛三……あなたに、お願いがあるの!」

「! お、お姉さん……で、でも私……」


 愛三は長姉の言葉に、口籠もる。


 今の自分は、戦力にならないだろうと思ってのことである。


「うん愛三……あなたの気持ちは察してる! あのリオルの意思を継ぎたかったけど、虎男の騎士団長のことを気に病んでいるのよね……」

「! う、うん……」


 しかしそんな末妹の心を察して。

 夢零は敢えて、踏み込む。


「それでもね、愛三……あなたがここで諦めたらリオルさんのみならず、虎男の騎士団長の意思も無駄になってしまうわ! だから愛三……お願い!」

「り、リオルの騎士団長の意思も……?」


 愛三も夢零の言葉に、はっとする。


「そうよ愛三……お願い! 私もあなたたちと一緒に戦って魔男たちを退けたいの! だからあなたのギリシアンスフィンクス艦に私たちの法機グライアイを接続してほしいわ!」

「お、お姉さん……でも、私ができるのかな……」


 夢零の頼みに、愛三はまだ思い悩む。


「めーでーみ! 安心しろ、お前ができなくたって! 姉ちゃんたちが助けてやるよ。妹助けんのが姉、当然だろうが!」

「そ、そうよ愛三! だから心配することない!」

「え、英乃お姉さん……二手乃お姉さん……」


 そんな愛三に、次姉と三姉も声をかけて激励する。


「そうよ、愛三! さあ……お願いするわ、私たちの妹!」

「うん……お姉さんたち! hccps://sphinx.wac/ セレクト、大いなる謎モーニングデイタイムクリーチャー エグゼキュート!」


 愛三は意を決して、ギリシアンスフィンクス艦に命じる。


 ◆◇


「ふん……所詮姉妹の力を合わせたと言っても、この場にいるは末妹ただ一人! いいだろう、いい繋ぎだあ!」


 そうして、今に至る。

 バーンは座乗艦のニーズヘッグが動きを止められていることに激しい屈辱を覚えていた。


「Yeah! 今がChance! hccps://eingana.wac/、Select! 虹の彼方(オーバーザレインボー) Execute!」

「くっ! 法機エインガナもか!」


 しかしバーンがギリシアンスフィンクス艦を睨みつける間。


 それを隙と見て、ミシェルも法機エインガナから虹の火線を放たせる。


「私も、いいえ! 私たち自衛隊も忘れてもらっちゃ困るわ……hccps://takiyasya.wac/、セレクト! 髑髏剣(スカルズブレード) エグゼキュート!」

「くっ、お前もか!」


 そこへ力華も、法機滝夜叉から威力を強化した誘導銀弾(シルバーブレット)を多数発射する。


「く……さ、左舷被弾!」

「舐めるなよ……セレクト! セレクト ビーイング トランスフォームド イントゥ  群集形態フォーメーションクラスター エグゼキュート!」


 負けじとバーンも、父艦ニーズヘッグを龍型のパーツ群と化して動かし始める。


「hccps://graiae.wac/deino、セレクト グライアイズアイ エグゼキュート!」

「hccps://graiae.wac/enyo、セレクト グライアイズファング エグゼキュート!」

「01CDG/、デパーチャー オブ 誘導銀弾(シルバーブレット) エグゼキュート!」

「くっ!? ギリシアンスフィンクス艦か!」


 が、そこへ狙いすましたように。


 ギリシアンスフィンクス艦から再照準・新たな誘導性付与を施された誘導銀弾(シルバーブレット)群が放たれて父艦ニーズヘッグを襲う。


「逃がさないよ、龍男の母艦型幻獣機!」





「hccps://jehannedarc.wac/、ビクトリー イン オルレアン エグゼキュート!」

「hccps://crowley.wac/、セレクト アトランダムデッキ! (ザ パワー)――重力圧殺(グラビトンサイド) エグゼキュート!」

「ぐっ! これは……あの戦艦からだか!」

「Well……力を貸してくれるということなのね!」


 そうして、父艦トールには。

 凸凹飛行隊の法機戦艦(アームドマギ)からの、接続されたジャンヌダルクによる光線とクロウリーによる重力波の砲撃が向けられる。


 いや、凸凹飛行隊による攻撃はこれだけではなく。


「さあ、近づいていてよ魔女木さん!」

「分かってるわよ魔法塔華院マリアナ! hccps://jehannedarc.wac/、セレクト ビクトリー イン オルレアン! hccps://jehannedarc.wac/GrimoreMark、セレクト オルレアンの栄光弾ビクトリーインオルレアンカートリッジ エグゼキュート!」

「くうう! これは……海中からだかあ!?」


 海中から父艦トールに向けられたのは光弾の連続攻撃である。


 そう、この攻撃は。


 ――マリアナ様、私のルサールカの力をどうぞ存分に!


「ええ存分に使わせてもらっていてよ……さあ次は右へ!」


 マリアナが法機カーミラにより、法使夏の法機ルサールカの力を借りて海中に水流を生成し。


 中に青夢の法機ジャンヌダルクを入れているのだ。

 先ほどの法機戦艦からの砲撃も、カーミラ経由で剣人の法機クロウリーを同艦に接続してのものである。


「くう……どこまでも邪魔臭いだなあ!」





「……セレクト 楽園への道ロードトゥーアヴァロン エグゼキュート!」

「ぐうっ! まったくちょこまかと……目障りなんだよお!」


 そして、死爪艦にも。

 盟次による法機パンドラによる法機モーガン・ル・フェイの能力を使ったレーザーによる斬撃が放たれる。


 いや、それだけではない。


「hccps://kumiho.wac/、セレクト! 九尾(ナインアーツ)――一尾一閃(テイルスラッシュ) エグゼキュート!」

「hccps://xiwangmu.wac/、セレクト! 死鎌爪(クローサイズ) エグゼキュート!」

「ぐっ! 仮にも雷鳴纏う今の死爪艦を……恐れ知らずだねえ!」


 陽玄の法機九尾狐からも鬼苺の法機西王母からも斬撃が発せられ死爪艦を襲う。


 更に。


「hccps://martha.wac/ セレクト! 子飼いの帯(パニッシングサッシュ) エグゼキュート!」

「hccps://circe.wac/!」

「hccps://medeia.wac/!」

「edrn/fs/gogmagog.fs?arts=TwinStreamーーセレクト !! ツインストリーム エグゼキュート!!」

「ぐっ、何だあこれは!?」

「くっ! ま、また邪魔者かい!?」

「くっ! これは何だ!」

「あれは……"姫"さんのワイルドハントのパーツ!」


 そこへ魔女側の新手として飛来したワイルドハントのパーツ群より、そこに接続された法機マルタと法機キルケ・メーデイアの技が放たれ。


 三騎士団長たちは尚も悶える。

 その中でも。


「まったく……まったくまったくう! どこまでも目障りだよお魔女たちい! 騎士団同士の戦いに口を挟んで来るなんて無礼だああ!」


 アロシグは特に、歯軋りする。

 自艦のみならず、相手方の父艦をも取り囲む法機群。


 それらは今、真の争奪聖杯の真の決戦を――聖戦を邪魔する者たち。


 もはや目障り以外の何者でもない。


「邪魔はさせないだよお……このまま、邪魔はあああ!」

「!? こ、これは!?」

「な……くう、あ、アロシグ殿お!」

「く……ご、ゴーグ君!」

「!? く、全機、全艦隊離脱して!」

「じ、自衛全艦隊回頭!」

「ぎ、ギリシアンスフィンクス艦ちゃんも回頭!」


 しかしアロシグは、己の怒りと共に父艦トールの艦隊を滾らせ。


 たちまち下半身の巨木部分は枝を迅速に無数に伸ばし、周囲の敵を捕らえんとして行く。


 そうして。


「め、愛三さん!」

「あれは……自衛艦隊も!?」


 身軽であった法機群は殆ど拘束を免れるが。


 身軽ではなかったギリシアンスフィンクス艦やウィガール艦隊の大半、更に死爪艦や父艦ニーズヘッグは父艦トールの枝に拘束されてしまう。


「はーっ、ははは! 見ただかあ魔女たちい、邪魔者は許さないだよ……この騎士団たちが集う、聖戦の!」


 父艦トールから、アロシグの笑いが響き渡る。

2020年は本当にありがとうございました!

ある日から毎日更新を続けて来ましたのは、最終話までの道のりが思い浮かんだからというのもありますが。


そもそも見てくださる人がいなければ書くことなどありませんでした。


おかげさまで本作は、今のところ先に完結した長編(京都の王)に比べて少ない話数でそのポイントを凌駕するという状況になっております。


いつになるかは分かりませんが、これからも完結まで走り続ける所存でございますのでよろしくお願いします!


よいお年をお迎えください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ