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ウィッチエアクラフト 〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜  作者: 朱坂卿
第八翔 魔男の黄昏
166/193

#165 因縁の各戦線④

「させないわあああ! さああ法機滝夜叉あ!」

「!? な、よ、妖術魔さん!」

「くうう! む、無茶苦茶ザンスう!」


 が、夢零が爆発に呑まれんとしたまさにその時。


 今抑え込む父艦グリブルンスティ諸共、餓者髑髏(ギガントスカル)――ひいては法機滝夜叉に乗る力華が、夢零機の前に割って入り。


 そのまま爆発を、直に食らう。


「くう! 駄目よ夢零さん……国を守るのは、私たち自衛隊なんだからああ!」

「妖術魔さん!」

「ん!? ……今ザンス!」

「むっ! な、グリブルンスティが!」


 餓者髑髏(ギガントスカル)が爆発に呑まれた隙に。

 ボーンは父艦グリブルンスティを駆り立て、離脱する。


「くっ……こんな所で終わるかあ!」

「こんな所じゃ終わらないザンス……」


 バーンもボーンも、そして先ほどのヒミルも考えていたのは同じこと。


 共に、真の狙いは。


「東京湾の……アロシグとレーヴェブルクの力を!!!」


 ◆◇


「……はっくしょん! 何だ誰か噂してるだか……まあいいだあ! さあ魔女共お!」


 翻って、その東京方面では。


 アロシグは座乗する父艦トールから戦場を見据える。


 前方には青夢らの法機戦艦と愛三のギリシアンスフィンクス艦が洋上に佇みながら、尚もトールに向けて砲撃を続けているが。


 それは全身から炎を噴き出し防壁とするトールには――ひいては、アロシグにはまったく痛痒とならずにいた。


「ははは、虚しい攻撃だよ魔女共お!」


 アロシグが尚も余裕を湛えていた、その時。


「近づいているわ! さあ……父艦トールを落とすのよ!」

「オッケー!」

「わたくしに指図しないでほしくってよ魔女木さん!」


 青夢たちは実は、法機戦艦とギリシアンスフィンクス艦には乗っておらず。


 父艦トールの水面下から、迫っていた。

 しかし法機ルサールカもなしに、何故海中に法機群がいられるのか。


 それは、彼女たちが王神の槍形態フォーメーショングングニルと呼ぶ新たなスフィンクス艦――とは言ってもそれは、ギリシアンスフィンクス艦とは似ても似つかぬ鏃型――の中に入っているからである。


 先頭に愛三の法機スフィンクス、中心にマリアナの法機カーミラが。


 そして最後尾に青夢が宙飛ぶ法騎スペースライドオブワルキューレに変形させたジャンヌダルクが、電使翼機関(ジェットエンジェン)の出力を絞り王神の槍形態フォーメーショングングニルのスフィンクス艦を推進させて行く。


 これにより父艦トールに、父艦ヨルムンガンドの力で撒かれたコンピュータウイルスを防ぎつつゆっくりと忍び寄っているのだ。


 そして。


「さあ愛三さん! くれぐれも作戦通りに」

「分かってるよジャンヌダルクちゃん! 先にあの蛇さんを狙う! 行っくよー、法機スフィンクスちゃあん!」

「ええ……行くわあ!」

「! くっ、な、これは何だあ!」


 スフィンクス艦は徐に、父艦トールの足元から躍り出て。


 そのまま向かう先は、父艦トールの右腕が変化し父艦ヨルムンガンドの姿をとる部分だ。


「行くよー! ……! こ、これ」


 そのままスフィンクス艦先端部で叫ぶ愛三だが、その時。


 法機スフィンクスの横に、リオルの姿が見える。


「リオル……よおし! 行っけええ!」

「? どうしたの愛三さん? ……まあいいわ、さあスフィンクス艦、群集形態フォーメーションクラスター!」


 愛三の様子を訝しみつつも青夢は、スフィンクス艦を構成機群に分離させる。


 それらはオルレアンの栄光弾ビクトリーインオルレアンカートリッジで包まれた、自律型エネルギー弾だ。


「くう……ヨルムンガンドお!」

「行っけええ!」


 愛三は自分たちを狙う父艦ヨルムンガンド部に、構成機群を率いて突き進む。


 傍らに浮かぶ、リオルと共に――


「ぐうう! このおお!」


 父艦ヨルムンガンド部には構成機群が多数体当たりを仕掛け。


 更にその他の構成機群も、その他父艦トールの胴部や父艦ユグドラシル部に攻撃を仕掛けて行く。


「今よ、皆離脱! さあ法機戦艦!」


 青夢たちは自機も含め三機全て離脱させ。

 そのまま、法機戦艦より。


「セレクト 、ビクトリー イン オルレアン エグゼキュート!」

「セレクト 、サッキング ブラッド エグゼキュート!」

「セレクト、王獣の守護(ファラオガーディアン) エグゼキュート!」


 青夢・マリアナ・愛三は、主砲撃を放たせる。

 三つの火線は、絡み合い。


 父艦トールに、追い討ちをかける。

 青夢の光線を愛三の防御が強化し、更にマリアナのエネルギー吸収により父艦トールを着々と侵食していく。


「ぐううう! このおお、魔女共お! レーヴェブルクう!」


 アロシグは恨めしげに、叫ぶ。


「くううう、えいい!」

「まだであってよ……まだまだ!」

「そうだよ……リオル、もっと力を貸してええ! 貫いちゃええ!」


 青夢たちも、手を緩めない。


「はあああ、分かっただあああ! ここはもう……出し惜しみしていられないだよおお!」

「!? き、きゃあああ!!!」


 ならばとアロシグも、応じる。

 たちまちその半木半巨人型にして蛇腕の父艦トールは、全身をより滾らせる。


 それは巨大な火柱となり、周囲に強力な衝撃波をもたらし。


 法機戦艦からの砲撃をたちまち、打ち破ってしまった。


「く……も、もう一度!」

「だ、駄目であってよ……主砲塔損傷、攻撃不能!」

「そ、そんな!」

「ははは……まだまだだよお!」


 アロシグは誇らしげに笑う。

 もはや彼の座乗艦は、巨大な火柱そのものと化して不気味に佇んでいる。


「く……まだ駄目なの!?」


 青夢は歯軋りする。

 このまま父艦トールを無力化し、アロシグも救おうとしたがこれではおじゃんである。


「ははは、さあて! レーヴェブルクう……早く出て来るだあ! 命をもらいたいだよお!」

「待つがよし、アロシグ!」

「! おんや……レーヴェブルクう! 何だ何だかあ、その形はあ!」

「! あ、あれは虎男の!?」


 そのアロシグの言葉を聞きつけ、レーヴェブルクが座乗する飛行艦(チャリオット)双猫の戦車フレイヤーズチャリオットを率いてやって来たが。


「我が命、くれてやるもよし……されど! それ即ち可能ならばの話!」


 レーヴェブルクは双猫の戦車フレイヤーズチャリオットの艦体を展開していた。


 その丸い艦体は輪切りのように三分割され。

 左から艦首部、艦後部、艦中央部と左右にそれぞれが並ぶ形でスライドして展開されている。


 そうして艦首部は狼の頭部型に変形し、艦後部の断面は赤熱し、艦中央部の断面は白熱し戦闘態勢に入っている。


「ははは、そう来なくっちゃあだなあレーヴェブルク殿お! ならこっちも……応じなきゃだなあ!」


 父艦トールは火柱を尚滾らせながら、双猫の戦車フレイヤーズチャリオットと対峙する。


 そして。


「魔女たちよ、リオルよ、汝らの恩に今報いよう……セレクト 巨猫の雷インモータリックケラウノス エグゼキュート!」

「ああ……セレクト 、巨人の炎インモータリックフレイム エグゼキュート!」

「! だ、駄目! リオルの騎士団長さあん!」

「そ、そうよ! 止めてえ!」


 レーヴェブルクは双猫の戦車フレイヤーズチャリオットへと、突撃して行く。


 たちまち、父艦トールの火柱をも上回る大爆発が起こり。


 青夢たちはこの光景に、目を開くこともできなかった。





 ――……騎士団長。


「……リオルか。申し訳なく思う、お前の好意を無駄に」


 ――いいえ、騎士団長。騎士団長は……愛三を守ってくれましたから。


「そうか……無駄にはならず、ならば……よし!」


 レーヴェブルクは爆発の中、リオルの姿に微笑み。

 そのまま爆炎に、呑まれていく――





「く……また、私は……」

「そ、そん……な……」

「な……虎男の騎士団長がわたくしたちを!?」


 青夢や愛三が歯軋りし、マリアナが戸惑う。

 爆発は収束していく所である。


 が、そんな所へ。


「今ザンスう! この時をどれほどに待ったか……さあさ、行くザンスよお!」

「! あ、あれは!」

「な……あれは牛男のであって!?」


 父艦グリブルンスティを駆り、ボーンが現れた。

 父艦の速力により、東北方面からわざわざ漁夫の利を得に来たのである。


 そう、今や狼男・鳥男・馬男・虎男・魚男・巨男・木男の七騎士団の力がここにあるのだから。


「さあて……いただきまあすザンス!」


 そのままボーンは、父艦グリブルンスティに大口を開けさせ。


 収束仕掛けている爆炎に、被りつく――


「ははは、なあんてなだよ! こんな小細工でえ、俺たちを倒せるなんて思われちゃあ嫌だなあ……!」

「くっ、は、離すザンス!」

「!? う、嘘……あ、あの爆発で!?」


 が、そうは問屋が卸さぬとばかり。


 かつて父艦ヨルムンガンドとあわや相討ちになりかけながらも耐え抜いた頑強さでもってあの爆発を耐え抜き、父艦トールは上体を伸ばし爆煙から出てグリブルンスティにつかみかかる。


「さあ……セレクト 、巨人の炎インモータリックフレイム エグゼキュート!」

「く……や、止めるザンスううぐあああ!」


 そのまま先ほどと同じく、父艦トールは火柱と化し。

 グリブルンスティを、呑み込んでしまった。




「そ、そんな……何、で、こんな……」


 ――……ボーン殿。


「! ホスピアー殿……ははは、なるほど。私には君ザンスか……まあ、悪くないザンス……」


 爆発の中でボーンは、最期にホスピアーの姿を見て笑みを浮かべ。


 そのまま、呑まれていった――




「そんな……牛男の騎士団まで……」


 青夢は俯く。

 これでまた、騎士団を救えなかった――


「……さあて、これで騎士団は三つに絞れたわね!」

「! な……あ、アリアドネ!」


 しかし、そんな青夢の心などお構いなしに。


 ダークウェブの姫君アリアドネが、空中に姿を投影し現れた。

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