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ウィッチエアクラフト 〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜  作者: 朱坂卿
第八翔 魔男の黄昏
163/193

#162 因縁の各戦線①

「マージン君か……」

「もはや汚点にしかならん名をよくも呼んでくれたものだなあ、ヒミルう!」


 中部方面、蝙蝠男と雪男が対峙する戦場では。

 今しがたその雪男を破りあわや相討ちかと思われた爆煙の中から踊り出た死爪艦が。


 その余韻にひたる間もなく、突如現れた法機パンドラと相対していた。


「ははは……ああ、君も苛立っているねえ! だけど……僕はもおっーと苛立っているんだけどなあああ!」


 盟次からの叫びを受けヒミルは、負けじと返す。

 そうだ、自らを裏切ったこの者には復讐しなければ。


「そうだな……その決着をつけるために私はやって来た! さあヒミル!」

「ああそうさ……睦み合う時間ではない! もはや余計な言葉など捨てて、ここは死に合おうじゃあないかあ!」

「くっ! レイテ様、あの法機が!」


 もはやレイテたちなど完全に蚊帳の外とばかり、盟次とヒミルは戦闘を開始する。


「hccps://hel.wac/、セレクト 地獄誘い(ゴートゥーヘル)! エグゼキュート!」

「むう! これは……君が僕を裏切った時のあの炎かあああ!」


 盟次は乗機たる法機パンドラに内包している、法機ヘルの能力を使い火線を放つ。


 それを父艦ロキの上半身が持つ槍で防ぎながらヒミルは、それが盟次が法機ヘルを手に入れた際自身に向けられたものと気づき更に激昂する。


「ああ……そして、君も求めたあの法機ヘルの力でもある! どうかな、自分が手にするはずだった法機の力で蹂躙される気分は!」

「はははは……ああそうだなあ、返す返すも屈辱じゃあないかあ!」


 敢えて盟次は、ヒミルを挑発し。

 ヒミルはますます、激昂していく。


「(そうさ……私が憎いだろうブラド・ヒミル! 憎んで憎んで憎むのだ……! いずれ裏切るつもりだったとはいえ、はっきり言ってあまり望まぬ終わり方だったからな……)」


 盟次は敢えて自身に対しヒミルが抱く憎しみを強めている。


 それは彼にどこかしら、贖罪の気持ちがあるからでもあった。


 ◆◇


「め、メアリー姐様……く、クラブ騎士団長が」

「ああ……アラクネ姐様から聞いたよ。そうかい、あんたも聞いたかい。」


 近畿方面を守るミリアとメアリーは。

 中部方面でのクラブの死を知り、驚いていた。


「クラブ騎士団長……あんたには色々世話になったね。ゆっくりお休みな……」

「ええ……クラブ騎士団長……」


 メアリーは法機キルケ・メーデイアのキルケの中で手を合わせ。


 ミリアもそれに倣い、手を合わせる。


 ――まだ、戦いは三箇所で継続中よ……だけどごめんなさい、あなたたちにはひたすら待機させることになってしまって。


 そんな二人の脳内に、アラクネの声が響く。


「アラクネ姐様かい……ああ、まあかなりもどかしいが仕方ないねえ。」

「法使夏……」

「おうや、ミリア。お友達のことがやっぱ気になんのかい?」

「! な、わ、私……ち、違いますメアリー姐様!」


 しかしミリアは、知らぬ内に法使夏の名前を口にしておりはっとする。


 ――そう、やっぱりあなたたちにも忸怩たる思いがある……法使夏さんも、今戦場に向かえないもどかしさに震えているわ。


「……はい。」


 アラクネの言葉にミリアは、真顔になる。


 ――……さて。あなたたち以上に心配な人が私にはいる……ごめんなさい、赤音にもお願いしたけれど。引き続き持ち場の守りは任せたわね!


「あいよ、アラクネ姐様!」

「はい!」


 アラクネのこの言葉に、メアリー・ミリアは快く応じる。


 ――そう、いるのよ……本当は謝りたいくせに、敢えて自分を恨ませて戦いの決着を着けるという形で贖罪を果たそうとする困った人がね!


 アラクネは二人には聞こえぬようにだが呟く。

 無論その"困った人"とは、盟次である。


 ◆◇


「くうっ、離すザンス!」

「離す訳……ないでしょ!」


 東北方面では。


 牛男の父艦グリブルンスティをその背面より湧いて出て抑え込む餓者髑髏(ギガントスカル)を操りながら、力華はボーンに叫ぶ。


「妖術魔さん! そこから離れてください、今からその母艦型幻獣機を照準します!」

「! 夢零さん……でも駄目よ! 今私が離れたら、この母艦型幻獣機は枷から解き放たれてしまうもの!」


 夢零は力華に通信で密かに告げるが、力華は動かない。


「hccps://graiae.wac/deino、セレクト グライアイズアイ エグゼキュート!」

「hccps://graiae.wac/enyo、セレクト グライアイズファング エグゼキュート!」

「くっ……邪魔臭い!」


 一方、英乃と二手乃も。


 それぞれの法機グライアイ計二機を駆り立てて父艦ニーズヘッグ周囲を飛び回りつつ。


 艦体を照準し、自衛艦隊との連携で誘導銀弾(シルバーブレット)群を放ち攻撃していく。


「まったく、鬱陶しいな! だが懐に飛び込もうとは愚かなり……hccps://baptism.tarantism/ セレクト、ビーイング トランスフォームド イントゥ 雷雲形態フォーメーションクラウド! セレクト ファイアリング 雷の雨(サンダリングストーム) エグゼキュート!」

「きゃっ! お、お姉様!」

「一旦退がるぞ、二手乃!」


 しかし、バーンも父艦ニーズヘッグを変形させて周囲に雷を放ち。


 それにより英乃と二手乃は、乗機を離脱させる。


「ははは、所詮この程度か貴様らあ! なるほど、凸凹飛行隊とやらがいなければ何もできんのか! 雑魚共が!」

「くう、何だとお!」


 バーンはかつて魔法塔華院・龍魔力連合艦隊と対峙した時を思い出し英乃・二手乃を嘲る。


 そう、ここに凸凹飛行隊はいない。


 ならば、素早くこいつらは始末し新たに牛男をも始末せねば。


 バーンはそう考え始める。


「え、英乃お姉様!」

「ええ、英乃その気持ちは尤もよ……私たちだけではあなたを倒せないなんて、誰が決めたのお!」


 しかし夢零も、バーンの言葉に激昂する。


「ならいいわ、英乃、二手乃! もはや遠慮は無用よ……龍男の騎士団を叩き潰すわ! hccps://graiae.wac/pemphredo/edrn/fs/stheno.fs?eyes_booting=true――セレクト ブーティング "(ゴルゴニックアイズ)"! ロッキング オン アワ エネミー エグゼキュート!」

「ううむ、また"(ゴルゴニックアイズ)"を使うか腹立たしい! だが貴様らはもはや手詰まりだ…… セレクト、ビーイング トランスフォームド イントゥ 各個形態フォーメーションロンリネス! エグゼキュート!」


 夢零は自身の法機グライアイに命じて雷雲形態フォーメーションクラウド――既にパーツ毎に分かれた形態だ――を照準するが。


 ならばとバーンは、構成機たる幻獣機スパルトイ毎に完全に父艦を分離させて照準から逃れる。


「逃さねえぜ! hccps://graiae.wac/enyo、セレクト グライアイズアイ エグゼキュート!」

「ええお姉様! hccps://graiae.wac/deino、セレクト グライアイズファング エグゼキュート!」

「よし、誘導銀弾(シルバーブレット)群撃ちまくれ!」

「は! 発射!」


 しかしそれを英乃・二手乃機が再照準・誘導性の修正を行い。


 それに基づき自衛艦隊のウィガール艦たちから、弾幕が放たれる。


「くっ、この! どこまでもしぶとい奴らめ……回避を続けよ!」

「はっ、回避、回避い!」


 バーンは歯軋りしつつ。

 それでも今はこの攻撃から逃れることこそ先決と、構成機群を操り弾幕を回避して行く。


「ええ、しぶといわねあなたも!」

「ああそれでも! ここであたしらが負ける訳にゃいかねえんだよ!」

「え、ええ! そ、そうでなきゃ愛三が! 私たちの妹が安心して関東で戦えない!」

「ふん、知ったことかあ! 貴様らもそこの牛男も潰す! そうして私も首都方面に向かうのだ!」


 龍魔力の姉たちとバーンの思惑は、真っ向からぶつかり合っている。


「くっ、私が既に倒せる前提になっているとは屈辱ザンス! 私もさっさと……首都方面に向かわねばザンス!」


 一方座乗する父艦グリブルンスティを力華に抑え込まれているボーンも、自分が今や蚊帳の外であることに激しい怒りを抱く。


「おとなしくなさい!」

「くっ、自衛官! いい加減離れるザンス!」


 しかし力華も、尚グリブルンスティを抑え込む餓者髑髏(ギガントスカル)の力を強める。


 こうして東北方面の戦線は、膠着の様子を見せていた。


 ◆◇


「どうしただあレーヴェブルク殿お! 防いでばっかじゃ、守ってばっかじゃ戦いにはならないだよお!」

「ああ、然り。されど……今は防ぐより他なし!」


 そして、龍男・牛男の目指す首都東京方面の東京湾沖合では。


 相変わらず一歩も動かぬ巨男の半巨人半木の父艦トールに、虎男の飛行艦双猫の戦車フレイヤーズチャリオットは互いに熱波を放ち合いぶつかり合っている。


「! く、今度は雪男の騎士団が滅んだなんて……そんな……」


 一方、これを後方の法機戦艦(アームドマギ)より見ている青夢も。


 ジャンヌダルクの能力により中部方面で雪男の騎士団が滅んだことを知り愕然とする。


「そう、雪男が……ということは、今騎士団は五つになったということであってよね……」


 マリアナも青夢のその言葉を聞き、悲しげに呟く。

 と、その時。


「セレクト、デパーチャー オブ 誘導銀弾(シルバーブレット) エグゼキュート! さあ……貫いちゃえ王神の槍(グングニル)う!」

「! あ、アロシグ騎士団長! 二時の方向から敵弾多数!」

「ふん、なら……炎の舞(ファイヤーダンス)をもっと強く全方位へ飛ばすだあ!」


 突如誘導銀弾(シルバーブレット)群が多数迫り、アロシグは父艦トールからの攻撃を強める。


 その攻撃の主は、無論。


「リオルの騎士団長さん……私も! ここで皆のために戦う!」


 愛三座乗の、ギリシアンスフィンクス艦だった。


「あれは……愛三さんの!」

「ようやく来ましたわね……」

「スフィンクスの艦……助けになってくれるか。」


 それを見た青夢にマリアナ、レーヴェブルクはどこか安堵した。


 かくして戦いは、相変わらず続いて行く。

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