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ウィッチエアクラフト 〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜  作者: 朱坂卿
第八翔 魔男の黄昏
148/193

#147 その名はアンドロメダ

「初花……さあ、行ってちょうだい!」

「Oui! 管制塔、発進許可をお願いします!」


 フランスにある航空基地にて。

 アラクネの命を受けて空軍のエースパイロットである初花は、自機に乗り。


「発進許可、Merci(ありがとう)! ……hccps://andromeda.wac/、セレクト デパーチャー オブ 空飛ぶ法機(ウィッチエアクラフト)アンドロメダ!」


 そのまま自機たるアンドロメダに命じ、発進準備に入る。


「さあ術里さん! やってあげて、例のものを!」

「はい! hccps://vouivre.wac/、セレクト デパーチャー オブ 金剛鎌弾(アダマンティンサイズ)

 hccps://vouivre.wac/GrimoreMark、セレクト デパーチャー オブ 金剛杼アダマンティンシャトル エグゼキュート!」


 アラクネは更に、沖縄の術里にも術句を伝えた。

 たちまち術里のヴイヴルが繋がるウィガール艦からは、生成された多数の金剛鎌弾(アダマンティンサイズ)が飛び出し。


 かと思えばそれは、空中でより集まり形を成して行く。


 それは金剛鎌弾(アダマンティンサイズ)により構成された杼船(シャトル)金剛杼アダマンティンシャトル


 そうしてそれは、急加速により。

 明後日の方角へと飛んで行く。


 目的地は。


「初花、そろそろそっちに杼船(シャトル)が到着するから融合お願い!」

「Oui! さあ……行くわよ、私のアンドロメダ!」


 初花のいる、ヨーロッパだ。


「Mademoiselle、行かせていただきます! あなたにいただいたこの力で!」


 初花は操縦桿を握りながら、決意をより強める。



 ◆◇


「……あなたは、誰?」


 時は、一年前。

 飛行訓練中に初花は、その人と出会った。


「あなたが、初花・アリス・バリーさんね。」

「え、ええ……」


 初花が駆る法機と、空に浮かんだアラクネの幻影は対峙していた。


「……これを見てちょうだい。」

「え……? !? Quoi()!」


 アラクネはふと、手を前に翳す。

 するとそこには日本の景色が、映し出される。


「これは、法機なの!? で、でも……」


 初花はその光景に釘付けとなる。


 まだ、海外でも日本の魔男被害が報じられる前である。


 その日本の景色には自分より年下の日本人少女たちが、見たこともない異能を駆使する法機を駆り。


 これまた見たこともない怪物のような機体に騎乗した男たちと、戦う光景だった。


「驚いたでしょう? 日本にはもう、こんな法機もあるのよ。」

「s、Sensationnelすごい! だ、だけどこれじゃ」


 初花は次には、心配になる。

 これだけの脅威を抱える日本は、いずれ自分が属するEU空軍に牙を剥くのではないか――


「そうね、そうかもしれないわ……なら! あなたもこんな法機で戦いたいんじゃない?」

「! o、Oui! ……え、ま、まさか手にできるの!?」


 が、初花はアラクネのこの言葉に驚く。

 まさか。


「ええ、私ならね! さあ……あなたの願いを聞かせて! hccps://baptism.tarantism/、サーチ!」

「コンピーティング ウィズ ジャパン! ……!? こ、これは!」


 アラクネに言われるがまま初花は、検索術句を唱える。


 すると初花は、何やら異空間に引き込まれていく感覚を覚え――


 ◆◇


「……ん? ここは……」


 初花が目を覚ますと。


 見れば、真っ暗な空間に。

 光の線で繋がれた網のようなものが下に見える。


 そう、もはやここは言わずもがな。


「ようこそ、初花さん。」

「! あ、あなた」


 アラクネのいる、ダークウェブの深奥である。


「そ、そう言えばあなたのお名前は」

「ああ、ごめんなさい名乗り遅れたわ。私はアラクネ。あなたに法機を授けられる者よ。」

「!? p、Pardon(何ですって)!」


 アラクネは改めて名乗りを上げ。

 初花はそれに対し、これまた改めて驚く。


「ええ、ただし……一つ、条件があるの。」

「じ、条件?」


 が、アラクネは。

 やや前のめりになっていた初花を制する。


「あなたにはヨーロッパだけじゃない……いずれさっきの娘たちとも共同で戦うことになる。だから、その時は力を貸してくれないかしら?」

「Pardon!? え、わ、私が!? に、日本と張り合うために今法機が欲しいっていうのに!?」


 初花はアラクネに、更に驚かされる。

 そもそも、日本にはあんな強力な法機が数機はあるのだ。


 自分が力を貸す必要などないと思うが。

 しかし、初花のそんな心中を見透かしたように。


「……お願いよ、初花さん! これは私が法機を与える人たち一人でも欠けたら駄目なことなの! だから……あなたにも!」

「m、Mademoiselle……」


 アラクネは、必死に懇願する。


「o、Oui……いいわ、Mademoiselle。だけど……私が本当に優先するのは、あくまでこのヨーロッパだから!」


 やがて、初花も折れる。


「ありがとう、初花さん……さあ、これを!」

「! こ、これは……」


 アラクネがそう言って指し示したのは、毎度お馴染みというべきか法機のURLだった。


 hccps://andromeda.wac/


「さあ初花さん……また検索術句を! そうしてこれを持って行きなさい!」

「o、Oui! ……hccps://baptism.tarantism/、サーチ! コンピーティング ウィズ ジャパン! セレクト、hccps://andromeda.wac/! ダウンロード!」


 初花はこうして、法機を手にし。


 その後はヨーロッパを守るために、こうして訓練などに励みながら魔男との戦いに備えていたのである。


 ◆◇


「……エグゼキュート!」


 そうして、現在。

 初花は法機アンドロメダを、フランスの基地滑走路から飛び立たせる。


「さあ来たわ、Mademoiselleが用意してくれた杼船(シャトル)が! 行かないとね……hccps://WuicaAliceBarry:xxxxxx@Poseidon.mc/Poseidon.engn、セレクト、コネクティング! ダウンロード 電使翼機関(ジェットエンジェン)、エグゼキュート!」


 初花が、術句を唱えるや。

 たちまち法機は、電使翼機関(ジェットエンジェン)を備えた宙飛ぶ法機ウィッチスペースクラフトへと様変わりする。


 そうして法機アンドロメダは、爆炎を機体後部より噴き出し。


 空――ひいては宙へと、繰り出して行く。


 ◆◇


「あーははは! これでもはや、地球が自転するのを待つまでもないわ……このタンガ・サロ様が、早くに灼熱地獄にしてやるからねっ!」

「ガルルルッ! クソカマがあ、大人しく喰われろお!」


 ――姫、このままでは!


「……そうね、私の大事な市場を!」


 一方、宇宙では。


 サロが自艦たる太陽車(ソールズチャリオット)の出力を上げることにより、地上を夜明け前に灼熱地獄にしようとしていた。


 と、その時。


「さ、サロ騎士団長! 地上から未確認飛行物体が!」

「ああん!? 何よお今更、さっさと」

「hccps://andromeda.wac/、セレクト 流星弾(メテオバレット) エグゼキュート!」

「ぐっ、み、未確認飛行物体より投射物あり!」

「いやああ! 何よお、また私の邪魔をするのお!」


 大気圏を突破した法機アンドロメダから、誘導弾状の武器が投射され。


 サロは、太陽車(ソールズチャリオット)を回避する。


 ――ひ、姫! あれは


「ま、まさか!? また新しい法機が!?」


 宇宙へと上がって来たアンドロメダに、尹乃は目を疑う。


「さあて……私が来たからには魔男! あなたたちにこれ以上の乱暴狼藉は許さない!」


 アンドロメダ座乗の初花は、高らかに告げる。


 ◆◇


「さあさあ、これでようやく俺のものかスフィンクス! いや……エジプシャンスフィンクスよ! まだ中の忌々しい魔女は排出できないが、まあよい。……さあ行くぞ!」

「く、法機スフィンクスが魔男に!?」

「……大儀也、リオル。」

「ありがたきお言葉、レーヴェブルク騎士団長!」


 一方、北海道では。

 リオルが激突の末に法機スフィンクスを幻獣頭法機(マジックノーズアーツ)エジプシャンスフィンクスへと変え。


 それを遠巻きに見る自衛艦隊や虎男の騎士団長レーヴェブルクも、それぞれに反応を示す。


王獣の戦車スフィンクシーズチャリオット! スフィンクス艦と融合するのだ、hccps://egiptiansphinx.mna/! セレクト、大いなる謎モーニングデイタイムクリーチャー エグゼキュート!」


 そのまま、リオルはエジプシャンスフィンクスに命じ。


 自艦であった王獣の戦車スフィンクシーズチャリオットのパーツ群で、スフィンクス艦を囲い込む。


「……さあ目を覚まして! スフィンクス艦ちゃん!」

「!? 何! くっ!」


 しかし徐に愛三が放った言葉に。

 リオルは、エジプシャンスフィンクスをスフィンクス艦から離脱させる。


 本来ならば、彼にとっては小娘のはったり又は悪あがきと受け流してもよさそうな言葉。


 だがリオルがそれでも脅威と受け取ったのは、二つの状況を鑑みてのことだった。


 一つは、乗っ取ったにも関わらず操縦席から愛三を追い出せないこと。


 そして何より、果たして愛三の言った通りにスフィンクス艦に異変が生じたためである。


 元より法機スフィンクスとはそぐわない、エジプト型の男性型スフィンクスを思わせていた艦橋部は。


 女性の胸から頭までを思わせる胸像のような形に変わり。


 何より、その艦橋部背後に幻獣機スパルトイ群が集まり巨大な両翼の形を取っている。


 それは。


「これはまさか、ギリシア型スフィンクスの形か!?」


 リオルはその有様を見て合点する。

 それはギリシア神話に登場する、女性型スフィンクスの形を取っていた。


「ふっ、ふーんだ! あなたがエジプシャンスフィンクスなら、私はギリシアンスフィンクス艦ちゃんだもんねー! さあ行くよ、ギリシアンちゃん!」

「くっ、小癪な!」


 小娘が、やってくれる。


 リオルは尚も忌々しげに、新たなスフィンクス艦――ギリシアンスフィンクス艦を睨む。

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