表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウィッチエアクラフト 〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜  作者: 朱坂卿
第八翔 魔男の黄昏
146/193

#145 その名は九尾狐(クミホ)

「くっ、これは何なんだい?」

「安心しろ、ヒミル殿! ……fcp> get LaplacesDemon.hcml……全知之悪魔(ラプラシーズデモン)!」


 突如蝙蝠男と魔男連合騎士団の死爪艦(ナグルファル)を襲った混乱。


 そんな中でもアルカナは、至極冷静に対処するが。


「くっ、すまんヒミル殿……! どうやらあのダークウェブの女王が噛んでいるようだ!」

「な、ダークウェブの……くっ、さすがだねえ、我々をどこまでも邪魔したいわけだ!」


 予知を駆使しても原因が分からず、アルカナもヒミルも歯軋りする。





「hccps://kumiho.wac/、セレクト! 九尾(ナインアーツ)――傾城の美女コンフュージングチャーム エグゼキュート! (좀기다려(待ってて)어머니(お母さん)!)」


 その死爪艦(ナグルファル)後方より、技を放ち艦内のアルカナたちを惑わせているのは。


 陽玄(ヤンヒョン)が駆る法機、九尾狐(クミホ)である。


 ◆◇


어머니(お母さん)……」


 時は少し前。

 長崎の浜辺から海を見ながら陽玄は、今まさに魔男により蹂躙されそうになっていた。


 ――……力が、欲しいのね?


「!? ぬ、누구예()!?」


 と、その時。

 陽玄の脳内にも、アラクネの言葉が響き渡る。


 これは――


 ――あらごめんなさい、日本語じゃない方がよかったわよね? じゃあ……힘을 갖고 싶지요?


「아、아니아니(いえいえ)! 이、일본어로도(日本語でも) 괜찮아 (大丈夫よ)! ……あ、いえ日本語でも大丈夫よ!」


 陽玄ははっとして、アラクネに返す。

 すると。


 ――어머(あら)고마워(ありがとう)! ……なら、今のあなたの気持ちを改めて伝えて! hccps://baptism.tarantism/、サーチ!


「せ、セイビング マイカントリー! ……!? 이、이레(これは)!?」


 アラクネの言葉に続き、陽玄の口から出て来た言葉。


 自分の国を救いたい。


 その言葉は彼女を、誘って行く――


 ◆◇


「……여、여기는(ここは)!?」


 ふと陽玄は、見慣れぬ場所で目を覚ます。


 ここは、どこか。


 見れば、真っ暗な空間に。

 光の線で繋がれた網のようなものが下に見える。


 ここは――


「ようこそ……ダークウェブへ。」

「!? ……あ、あなたは?」


 そう、ここはいつも通りというべきかダークウェブの最深部である。


「음양형씨――陰陽玄さん、ね。」

「얘、얘! ……あ、は、はい!」


 アラクネは敢えて韓国語で話かけ。

 陽玄もそれに思わず韓国語で答え、それに気づき日本語でやり直す。


「ふふ、いいのよ……そんなに固くならないで。」

「は、はい……」


 優しそうに微笑むアラクネに。

 陽玄は思わず、赤面する。


 しかし、どこかで見たことがあるような。

 そのことを陽玄が、聞こうとした時。


「ふふふ……さあて、話していたい所だけど。あなたには、やるべきことがあるんだったわね?」

「예、당신은(あなたは)아름답다(美しい)……」

「あらありがとう……でも陽玄さん。아름답다――()()()()()()じゃないわ、あなたには、やるべきことが()()()()()()わね?」

「뭣!? あ……す、すいません!」


 うっかり韓国語を日本語に聞き間違えていたようだ。

 陽玄はまたも赤面する。


「ふふ、いいのよ……さあ、またあなたのやるべきことを聞かせて! hccps://baptism.tarantism/、サーチ!」

「せ、セイビング マイカントリー! ……!? 이건(これは)!?」


 気を取り直し陽玄が検索術句を唱えると、URLが眼前に出て来た。


 hccps://kumiho.wac/


「kumiho……九尾狐(구미호)!? こ、これが私に与えられた力……?」


 陽玄は戸惑う。

 これは、一体。


「躊躇うことないわ、これはあなた自身に与えられた力……さあ! 胸を張って選びなさい、自分の運命を!」

「は、はい! ……セレクト、hccps://kumiho.wac/! ダウンロード!」


 陽玄がそのURLを、選ぶ。

 すると、彼女は光に包まれ――


 ◆◇


「……ん? !? 여、여기는(ここは)!?」


 ふと陽玄が目を覚ますと。

 何と彼女はいつの間にか、(一般機体の)法機に乗っていた。


 しかも誰が着せたか、飛行服まで着て。


 ――お目覚めのようね、음양형씨!


「! 얘、얘! ……こ、ここは?」


 陽玄は更に、また聞こえて来た声に驚く。

 それは、他ならぬアラクネの声。


 ――あなたに与えられた法機、九尾狐よ。


「! これが、私の……?」


 アラクネの声に、陽玄は操縦席を見渡す。

 しかし見た目は、何の変哲もない一般の機体である。


 ――しかしごめんなさいね……一般の機体しか用意できなかったから、あなたには作戦を伝えるわ。


「!? え、さ、作戦?」


 アラクネはそれでも、一計を案じる。

 そうしてそれを、陽玄に伝えた。


 ◆◇


「く、敵機影見当たりません!」

「何? く、幻影に遮られているのか!?」

「さ、捜すんだ早く!」


 そして、今に至る。

 死爪艦(ナグルファル)内は、未だ見つからぬ陽玄とその機たる九尾狐を見つけようとしててんてこ舞いになっていた。


「くそ、小癪な女王め……どこに魔女を!?」


 アルカナはもはや使い物にならない予知能力を使わず。


 ただただ、歯軋りしていた。


 ――今よ、陽玄さん!


「は、はい! ……hccps://kumiho.wac/、セレクト 殺生石(メディカルポイズン) エグゼキュート!」


 そのまま陽玄は、術句を唱える。

 すると。


「!? ひ、ヒミル騎士団長! な、死爪艦(ナグルファル)の艦体が! 何やら攻撃を受けた模様です!」

「何? ああ気にしなくてよいよ……この死爪艦(ナグルファル)は、如何なる攻撃も効かないからさ!」


 何やらダメージを受けた、爪が折り重なったような艦体の様子を見て憂う部下にヒミルは冷静に告げる。


 すると果たして、艦体は元に戻って行く。


「ほう、なるほどヒミル殿……死霊型幻獣機で構成されているが故に、死なないということか!」

「ああそうさマージン君……なんだけど。それは、僕が言いたかったなあ!」


 アルカナとヒミルは、軽口を叩き合う。


 ヒミルが先ほど余裕ぶっていたのはそういう事情によるものである。


 いや、そのはずだったのだが――


「ぐっ!? な、何だこの揺れはあ!」

「な……ば、馬鹿な!? 何故だ!」


 何故か死爪艦を、鳴動が襲う。


「か、艦体が! 朽ちていきます!」

「な、何い!? な、何故だ!」


 部下からの報告に、ヒミルは口を歪める。

 と、その時。


「か、艦体から勝手に構成機群が分離しました! そ、そうして構成機群が……法機の形に!?」

「何!? ま、まさか……この艦に潜り込んだっていうのか!?」


 部下からの報告にヒミルは、更に驚く。


 そう、これはアラクネの作戦でこの死爪艦に潜り込んでいた法機九尾狐――陽玄によるものだったのだ。


「ば、馬鹿な! だがどうしてだ、これは死霊であるが故に」

「ええ。アラクネッシからはそう聞いたわ、だから! 逆に回復させたのよ……殺生石(メディカルポイズン)――(ポイズン)ではなく、(メディカル)としての力を使ってね!」

「な!? くっ……何て奇策を!」


 今度は陽玄の言葉に驚くヒミルである。


「さあ……よくも私の国を!」

「くっ……か、回頭急げ!」


 陽玄は勢い付き、怒りに任せた突撃をかましてくる。

 これに驚いたのはヒミルであり。


 思わず死爪艦を、回頭させる。


「ヒミル殿おお! まだ諦めるは早いぞ。ここは私が動くとしよう!」

「! ま、マージン君が……?」


 しかしそこで待ったをかけたのは、アルカナだった。


「ああ、何のために手を組んだと思うのか! ここは我らの同盟のためにやらねばなあ!」

「あ、ああ……そう言ってくれてありがたいよマージン君。」


 ヒミルもやや戸惑いつつ、アルカナに礼を言う。


 ◆◇


「ジャンヌダルクの予知で見たわ。韓国は……アラクネさんが日本に留学してた韓国人の女の子に法機を与えて今戦わせてる! だから、大丈夫そうね……」

「そう……ということだそうです巫術山教官。」

「そうか……」


 その頃、日本では。

 青夢が韓国の陽玄について作戦本部に報告をしていた。


「はい、ですけど……まだ、予断を許さない状況ですね。」

「そうだな……」

「……!? な、これは……巫術山教官! ほ、北海道に!」

「! な、何!」


 と、その時。

 青夢は予知により、少し未来のことを知る。

 それは――


 ◆◇


「あーあ! 魔男さんたち来なくて平和だけど……つまんないなー!」


 北海道にて。

 青夢の予知から、少し後のこと。


 法機スフィンクスを核とするスフィンクス艦を擁する愛三は、この方面を自衛隊と共に守っていた。


 と、その時である。


「もしもし、こちら関東方面魔女木です!」

「! あ、ジャンヌダルクちゃん! どうしたの?」


 青夢から入電である。

 が、時同じくして。


「! れ、レーダーに敵戦闘飛行艦チャリオットエアシップ複数あり!」

「!? え、ま、魔男さんたち!?」


 スフィンクス艦内は、慌ただしくなる。





「……魔女艦隊、発見。」


 幻獣機飛行艦クリプティッドチャリオット双猫の戦車フレイヤーズチャリオット艦橋より虎男の騎士団長レーヴェブルクは、スフィンクス艦や自衛艦隊を睨む。


「忌々しきスフィンクス艦め……この前の借りと! 魔女ごときが軽々しくスフィンクスの名を使いし罰、きっちりとここで!」


 いや、レーヴェブルクだけではなく。


 双猫の戦車フレイヤーズチャリオットに随行している幻獣機飛行艦クリプティッドチャリオット王獣の戦車スフィンクシーズチャリオットに座乗するスフィンクスの騎士リオルも、海上の艦隊を睨んでいた。


 ここに二つのスフィンクス、再び相見える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ