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ウィッチエアクラフト 〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜  作者: 朱坂卿
第七翔 暗黒通神衛星ネメシス大戦 
124/193

#123 王都パレス奪還作戦

「先日より見られております電賛魔法(リソーサリー)システムへの接続障害は、日本のみならずアメリカ、中国・韓国でも見られています。現在、世界の国々は連携しこの事態の調査を」

「ふう……どうやら、これが世界の現状のようであってよ皆さん。」

「はい、マリアナ様……」

「ああ、そうだな……」

「……」


 もはや凸凹飛行隊の拠点と呼べる縦浜の別邸では。


 テレビからの話に、マリアナたちがため息を漏らしていた。


「そうして事態の調査は、今世界でなされていてよ。だけれど……わたくしたちにできることは、本当に何もなくって?」

「! それは……」

「ううむ……」


 マリアナが容赦なく投げかけて来た問いに、法使夏や剣人は黙り込む。


 しかし。


「まあ対症療法にしかならないだろうけど……また、あのドラゴンが出て来ればこの蒼さんと法機イザボー・ド・バヴィエールで対処はできるわ。」

「はい、その通りです!」


 青夢は徐に口を開き。

 その言葉に蒼も、にこりと微笑む。


「ええ、確かにそうではあってよ……でもね、魔女木さん。それは本当に対症療法にしかならなくってよ、だから! 何とかして、あのドラゴンの先手を取れるような策がわたくしたちは欲しいの。お分かりであって?」

「なるほど……まあ、確かにそうね。」

「! はあ、相変わらず調子が狂ってよね魔女木さん……」

「ええ、魔女木がマリアナ様に嫌味の一つも返さないという普通のことができるなんて……」


 自身のやや意地悪な発言も受け止める青夢に。

 マリアナや法使夏は、少々引いている。


「え? 私、嫌味を言った方がいい?」

「い、いえそうではなくってよ……もういいわ、魔女木さん。」


 その二人の言葉にきょとんとする青夢に、マリアナはますますやりづらさを感じるが。


 もう、突っ込むことは止めにした。


「……さあて、どうしたものであってかしらね……ん!?」

「!? こ、これは!」


 が、その時だった。

 突如として脳内に異変を感じ。


 マリアナ・法使夏・剣人は驚く。


「ま、マリアナ様これは!?」

「ええ……このドメインは……」


 彼女たちの脳内には、一つのURLが浮かんでいたのだ。


 hccps://zodiacs.mc/palace



 ◆◇


「パレス奪還作戦……それは、私たちの悲願でもあります陛下!」

「うむ……ならば話は早い。我らが王都を、パレスを今こそ奪還しようではないか!」


 目の前に跪くペイルとアンヌに、シャルルは嬉々として話す。


 ネメシス星フラン星界北部ランカスの国教会にて。

 戴冠式を終えた後のシャルルは彼女たちと謁見し、大願とも呼べる王都の奪還をこうして話し合っていたのである。


「(とうとうここまで来た……待っててお父さんお母さん!)」


 ペイルが心の中に、決意を抱いたその時だった。


 ――本当にいいのかしら?


「(!? だ、誰!?)」


 突如ペイルの頭に、何やら声が響く。

 ペイルは一瞬、戸惑いながらも。


「(分かる……この声の主、知ってる! でも、誰なの……)」


 声の主を思い出そうとするが、できない。

 しかし、確かにこの相手のことは知っているのだ。


 いや、知っているなどというレベルではなく、確実にいつも一緒にいた相手であることは間違いなく――


「(誰? 誰なの!? ……くっ、うっ!)」

「! ぺ、ペイル!?」

「だ、大丈夫か!?」

「……アンヌ、陛下……」


 しかしそこでペイルは、はっとする。

 気づけば、アンヌとシャルルは心配そうに自分を覗きこんでくれていた。


「大丈夫?」

「う、うん、大丈夫……」

「すまぬな、そなたらには最近重荷を背負わせ過ぎたやも知れぬ……急いて事をし損じては元も子もあるまい。少しは休ませねば」

「! い、いえ陛下! 私は大丈夫でございます!」

「! ペイル……」


 シャルルは心配の声をかけるが。

 ペイルはここで引いてはかなわぬと、気丈に振る舞う。


「(そうよ……誰だか知らないけど、私を誑かそうなんて……)」


 ――本当にいいのかしら?


「(ええ、当然よ……いいに決まっているじゃない!)」


 ペイルは再び問うて来た声に、心の中で威勢よく返す。


 しかし。


「(くっ、無視するのね!)」


 声はもう、返って来なかった。



 ◆◇


「何!? 誠か?」

「はい! 敵軍がこのパレスに来るのも時間の問題かと……」

「……くっ!」


 一方、今やブリティ星界占領下となっているその旧王都パレスでは。


 フラン星界軍がそこを奪還しようと軍の準備を進めていることが知らされ。


 ブリティ星界王太子・ブラックプリンス――尹乃の黒騎士たるイース・シュバルツは驚愕する。


「ううむ……かくなる上は」


 シュバルツの脳内には、さまざまな懸念が浮かび。

 ややあってから、彼はため息を吐き。


「……すまぬ。少しの間、一人にしてはくれぬか?」

「! はっ、ブラックプリンス殿下……」


 従者たちに、席を外させる。


「……申し訳ございません姫。このままでは、またあなた様のお力をお借りすることに」


 そうして彼が呼びかけるは、現実世界で控える彼の姫――王魔女生グループのうら若き社長・尹乃である。


 ――それは仕方ないわ。しかし……どうやら偶然ではなさそうね。


「? な、何がでございますか?」


 ――あら……あなたにしては迂闊ねシュバルツ。この一連の電賛魔法(リソーサリー)システムへの接続障害と、そのネメシス星とかいうメインシステム内の仮想空間内での何者かによるシステム奪還……これは、偶然ではないんじゃない?


「!? そ、それは……」


 シュバルツは尹乃の言葉に、はっとする。

 そうだ。


 これまでネメシス星で起きていた、ブリティ星界占領地のフラン星界による奪還――それらと前後して、各所での電賛魔法(リソーサリー)システムへの接続障害。


 この二つの事象が時期として前後していたのは、果たして偶然だろうか。


 いや、そうは考えづらい。


「や、やはり姫……」


 ――ええ……まさか、やはり魔男の仕業かしらね。私たちがこの電賛魔法(リソーサリー)システムを掌握しようとしていることに気づいて妨害しようとしているのかしら。


「ええ、あり得る話です……」


 思えば、あの第二電使の玉座(スローンズ)を掌握すれば電賛魔法(リソーサリー)システムを全て掌握できるとの内容も、シュバルツにより魔男側から盗聴したものだったのだ。


 ――くっ、まさかあの情報はわざと盗聴させたものじゃないでしょうね……まったく!


 尹乃の声は苛立つ。

 魔男の計画を利用するつもりが、今や先回りされているのはこちらだ。


「申し訳ございません、姫。私が気づくべきでしたのに……」


 ――もういいわ、シュバルツ。何はともかく、奴らにそのパレスだけは取られないようにしなくてはね。さあて……ん!?


「!? ひ、姫?」


 が、突如。

 尹乃の頭には何やら、URLが浮かび。


 hccps://zodiacs.mc/palace


 彼女は驚く。


 ◆◇


「ほう……どうやらあなたの作戦は成功しているようですね、アルカナ殿。」

「は、滞りなく進んでおります姫君!」


 魔男の円卓にて。


 状況を見てアリアドネは、アルカナに珍しく褒めの言葉をかける。


「ふ、ふん! 所詮は部下の手柄を自分のものにしてるだけっしょ!」

「そ、そうザンス!」

「おやおや……やや口が過ぎるなあホスピアー殿、ボーン殿。」

「くっ……」


 ホスピアーとボーンからの言葉を、アルカナはどこ吹く風とばかり受け流す。


「まあでもそうね。彼らの言う通り……アルカナ殿ではなく、あの蒼騎士(あおきし)さんとやらが頑張ってくれたことが大きいわね今回は。」

「そ、そうザンス!」

「その通りでっしょ姫君! このアルカナ殿は何も頑張っていないでっしょ!」


 姫君から言動を肯定され。

 ホスピアーとボーンは、鬼の首を取ったようになる。


「……まあ尤も。今回も高見の見物を決め込んだ身で言い過ぎるその態度はあまり関心しないわねホスピアー殿、ボーン殿。」

「!! は、ははあ!」


 が、そんな彼らもアリアドネは窘め。

 二人は気まずそうに、頭を下げる。


「おほん! ……姫君。今にきっと、面白いものをお見せいたします……」

「ええ……楽しみねアルカナ殿……」


 アリアドネはアルカナの言葉に、笑みを浮かべる。


 ◆◇


「いよいよね、ペイル……」

「ええ……でも大丈夫よ! 私とアンヌ、レッドドラゴン! そして……フラン星界軍の皆がいれば!」

「おおー!!」


 そのままひと月ほど経ち、ネメシス星フラン星界にて。


 ペイルとアンヌはレッドドラゴンに乗り、後ろにフラン星界軍を率いて旧王都パレスを目指す。


「ペイル、今回は今までのようにはいかないわ。相手はブリティ星界軍の主力……如何なレッドドラゴンを擁した私たちであっても、今回は少し攻撃して敵を追い払うだけでは済まない。戦わなくちゃ!」

「……うん……」


 アンヌの言い聞かせるような言葉に、ペイルは不承不承といった様子だが頷く。


 ――全ての人を、お前が救え。


 かつて、いつだったかは忘れたが父が言ってくれた言葉。


 それは今や、父から言われたことという事実を抜きにしても叶えたい彼女自身の望みとなっていたのだ。


「……来たわ、ペイル!」

「うん……ん!?」


 そうして旧王都パレスを囲む城壁へと至るフラン星界軍だが。


 ペイルはそこで、ふと首を傾げる。

 なんと、そこには。


「貴様らが、フラン星界軍か! 我はブリティ星界王太子、ブラックプリンスなり!」

「ぶ、ブラックプリンス!?」

「て、敵将が自身の身を!?」


 ペイルだけでなくフラン星界軍全員が驚いたことに。

 城壁の上にわざわざ生身を晒して来たのは、こともあろうに彼らが敵将・ブラックプリンスだった。


「て、敵将だ! 射殺せえ!」

「!? ま、待って! あれは!」


 が、熱り立つ兵たちをペイルは止める。

 なんと、彼女が驚いたことに。


「がああ!」

「ぐるる!」

「な、あ、あれは……まさか!?」

「ペ、ペイルやアンヌのレッドドラゴンと同じく……使い魔か!?」


 更にフラン星界軍が驚いたことに。

 何と城壁からは次から次へと吸血鬼や人魚、獅子など怪物たちが多く顔を出す。


「て、敵も使い魔を!?」

「ああ、驚いてくれたようだな……さあ、ブリティ星界軍諸君! 目の前にいるはこの我らのパレスを破壊し尽くそうとする憎きフラン星界軍である! こいつらは我らを――ひいては世界中を脅かす敵そのものだ、心してかかれえ!」

「おおおお!!」


 城壁の上には更に、ブリティ星界の軍勢がおり。

 ブラックプリンスの鼓舞に応えている。


 ――さあ、これからその骨の髄まで染み付くように教えてあげるわ……誰かにとっての神が、他の誰かにとっては悪魔だということをねえ!


 ペイルの頭に響くは、ランカスの国教会でかつて脳内に響いた声だが。


「(こんな……でも、やるしかない!)」


 目の前の敵軍に決意を決めつつある彼女には、認識されていなかった。

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