#119 魔法への侵略
「ここは……」
「この夢の世界で戦力として使われている巨大な鳥――法機の蔵よ。」
時は更に、ペイルとアンヌが現実世界にいた頃に遡る。
アンヌによりここへと送り込まれせめてもの慰みを受けさせようとされていたペイルだったが。
フラン星界のことなどまったく関係ないこの世界の現実はむしろペイルの心を蝕み泣かせていた。
そこへ現れたアンヌは、ならばこの世界でブリティ星界に抗える魔法を手に入れようとペイルを鼓舞し今に至る。
「……ViewResourcery:hccps://jehannedarc.wac/VictoryInOlrean.hcml……」
「!? え、な、何アンヌそれは……っ!?」
と、徐に唱え出したアンヌの術句は。
法機の力を暴き出していた。
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dragon.fs?ovrht"></spiript>
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//--></spiript>
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tarasque.ArmouredSkin.strength=full;
tarasque.guard()
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「な……!? こ、これって!」
「この法機とかいう巨鳥に収まっていた魔法術句よ……あるとすれば、ここよ! 私たちのフラン星界を救う力!」
「! 分かったわ、アンヌ……もっと見せて!」
アンヌが見せるものを、ペイルが見て。
それにより。
「hccps://jehannedarc.wac/、グリモアマーク! VictoryInOlrean.hcml、エグゼキュート! hccps://jehannedarc.wac/GrimoreMark、セレクト VictoryInOlrean.hcml エディット! リネーミング ファミリアサモニング! リライティング URL、FamiliarSpiript:(faculty(){var a =witchery.open().document;a.write(!……
s.src="hccps://jehannedarc.wac/edrn/fs/
dragon.fs?summoned=true"…… s.src="hccps://jehannedarc.wac/edrn/fs/
tarasque.fs?summoned=true"……、コンプリート!」
魔法を、苦心惨憺しながら紡いで行ったのだった。
◆◇
「ぶ、無礼者! そのように危険な力を呼び出すなどと!」
「お下がりください、殿下!」
再び、王城に招かれたペイルたちの場面に戻る。
彼女たちが呼び出した二匹のドラゴンは、この場の全員に恐怖を呼び起こすには十分すぎた。
しかし。
「う、うむ……もう、少しよく見せてくれ……」
「で、殿下!」
近衛騎士たちが驚いたことにシャルルは恐怖で身体が引き攣りつつも、尚二匹のドラゴン――ひいては、ペイルとアンヌに向かい歩み出して行っている。
「ああ、危険かも知れぬ……しかし、危険な力であらば少なくとも我が敵国にとりても危険かもしれぬ! ならば見定めさせてもらうまでだ、我がフラン星界を救ってくれよう力を……!」
「で、殿下!」
シャルルを支えているのは、王太子――ゆくゆくはこの国背負う者としての覚悟と自負である。
そうして。
「……よくぞ、教えてくれたペイル、アンヌ。お前たちは神の使いであろうならば! その力をもって、ブリティ星界を打倒してくれ!」
「!? ……ははあ!」
尚も不満げな近衛騎士たちを放置し。
シャルルは、彼女たちに賭けてみることにしたのだった。
◆◇
「行くよ、アンヌ!」
「勿論!」
こうして、謁見より数日後。
二人は更に魔法でドラゴン二匹を融合させて騎乗し。
なんと軍の先頭に立ち、ブリティ星界に制圧された町・オルレアンへと出陣していた。
「大丈夫なのか? いくらあんなものを従えているとはいえあんな少女たちで」
「まあ……今は藁にも縋るしかないだろうよ。」
軍の士気は当然というべきか、高くはない。
そうして軍は、オルレアンの城壁へと辿り着く。
「さあ、ペイル。」
「うん! ……ブリティ星界の兵士たちよ! 私たちはシャルル王太子殿下より貴公らの討伐を命じられた身である!」
「な、何だあれは!?」
「ば、化け物に乗る女たちだ!」
ペイルが慣れない言葉遣いで呼びかけると、ブリティ星界軍も気づき。
フラン星界軍の先頭に立つドラゴンを前に、戸惑う。
「……しかし! 私はできれば無益な戦いはせず、貴公らの命も救いたい! よって……無駄な抵抗は止め、オルレアンを明け渡して欲しい!」
「! ぺ、ペイル……」
「な、何い!?」
「ふ、ふざけるな! ……皆、惑わされるな! あんな化け物は張り子か何か、コケ脅しである!」
が、ペイルの呼びかけに。
ブリティ星界軍からは、猛抗議が返る。
「お、おい何を言ってるんだ!」
「せ、戦場でそんな理屈! 通る訳ないだろ!」
「やっぱり、女なんかに戦場を任せたら駄目だったんだ!」
いや、敵軍ばかりではなく。
味方の軍からも、猛抗議が返る。
「ええ、無理なのは百も承知! でも……それでも私は!」
ペイルは、今度は軍の長として意識したものではないある程度生のままの喋り方をする。
――全ての人を、お前が救え。
そう、あの父――今は母と共に生きているかも分からない父が、いつ言ってくれたかは知らないが遺してくれた言葉だ。
その言葉に縛られ過ぎている訳ではない、あくまでペイル自身がそう望み全てを今救おうとしている。
「……交渉決裂とあらば仕方ない。行くよ、レッドドラゴン!」
ペイルはしかし、交渉だけでは状況は動かせないと感じており。
自身が騎乗する二匹のドラゴンの融合である、レッドドラゴンに呼びかける。
するとレッドドラゴンは、すかさず応じ。
その首を、オルレアンの城壁に向ける。
「ひ、ひいい!」
「狼狽えるな! あの化け物と女たちをひたすら長弓で狙ええ!」
「ぶ、部隊長!」
「何だ!? ……ぐああ!」
レッドドラゴンに畏怖するオルレアンのブリティ星界軍は、そのレッドドラゴンに長弓を向けるが。
彼らが矢を放つより前に、レッドドラゴンの口からは光線が出て――
「ひいい! 逃げろー!」
「ひ、ひい……ん? こ、光線が!」
しかし、ブリティ星界軍の恐れとは裏腹に。
レッドドラゴンの光線は、空高く飛ぶ。
「……さあ、ブリティ星界軍! このレッドドラゴンの威力をしかと見ただろう? ならば、今すぐ降伏せよ!」
「ふ、ふざけるなあ!」
「くっ、まだ足りないのね……ならばもう一発!」
「ぐああ!」
「ひ、ひいい!」
いわゆる威嚇により降伏を求めたペイルだが。
ブリティ星界軍は未だ応じず、やむなくこれも威嚇ながらも光線を宙に放つ。
「怯むな! 皆よ、どうやら敵軍は威嚇ばかりでこちらに攻める気はないらしいぞ! ならば!」
しかし、逆に。
ブリティ星界軍はこれによりむしろ勢いづき。
長弓に矢を番え直して狙う。
「ペイル、次こそあちらの攻撃が来るわ!」
「大丈夫! ならレッドドラゴンをもっと」
と、その時だ。
「……くっ!」
「!? ぺ、ペイル!?」
急にペイルは頭痛を感じ、俯く。
―― hccps……セレクト……イヤ エグゼキュート……
「!? こ、これって!?」
が、それはただの頭痛ではない。
その目には、あのゲーの夢で見た法機の群れに取り囲まれている有様が浮かび。
更に何やら、呪文も聞こえた。
さらに、法機の群れのうち一機が爆炎を放ち――
「今だ、矢を放てええ!」
「くううう! 私の後ろにいる兵士たちには当てさせないいい!」
「ぺ、ペイル!」
ペイルは、頭痛を振り払い。
法機の爆炎が放たれた像を見た時と、そして城から矢が多数放たれた時をほぼ同じくして。
レッドドラゴンより再び、光線を放つ。
「な、矢が! ……っ!? ぐああ!」
その光線は、たちまち迫る矢の大群を一掃し。
また宙に伸びるが。
先ほどまでとは比べ物にならないほど眩く、その光は炸裂し――
「はあ、はあ……ひいい! そ、総員撤退いい!」
「ぎゃあああ!」
やがて、光が止んだ後。
もはやブリティ星界軍に、戦意はなく。
たちまち部隊長の命令により、一目散に砦から撤退して行く。
「や、やったぞ!」
「今まで近づくことすらできなかったこのオルレアンの砦が、陥ちた!」
「やはり神の奇跡だ、ブルーメにタルクージュ!」
フラン星界軍からは、たちまち勝鬨が上がる。
「や、やったねペイル!」
「う、うんアンヌ!」
ペイルとアンヌも、やや戸惑いつつも。
共に勝利の余韻に、浸る。
◆◇
「魔法塔華院会長、この通信障害は一体何なのでしょうか?」
「只今調査中ですが……サイバー攻撃を受けたものと思われます。」
「例のテロリストグループ、魔男ですか?」
「調査中です。」
しかし、凸凹飛行隊とドラゴンの戦いより数日後のことだった。
ゲーの夢――もとい、現実世界にて。
その戦場周辺で電賛魔法システムへのアクセス障害が頻発しているとの報告が入ったのだった――