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ウィッチエアクラフト 〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜  作者: 朱坂卿
第七翔 暗黒通神衛星ネメシス大戦 
118/193

#117 王都陥落

「ブラックプリンス殿下。既にこのパレスは我らが手に落ちつつあります。」

「ああ、ご苦労。」


 フラン星界の王都パレス。

 ここを襲撃したのは、隣国ブリティ星界の王太子ブラックプリンスである。


 この王都は、すでにブラックプリンス自身が言うように既にほぼブリティ星界の手中にある。


 その際の戦火は周囲にも及んでおり、ペイルたちの村であるフトゥーコルスワもその煽りを受けた場所の一つである。


「さあ見えるだろう兵共! 前に見えるのが忌まわしき王城! あれを陥せばこの王都は完全に我らが手中に収まる……行くぞ!」

「エイエイオー!」


 ブラックプリンスは兵たちを促し。

 兵たちも将の言葉にもはや勝利は確定しているとばかり、勝鬨を上げる。


 ――どうかしら、私の騎士よ。


「!? はっ、姫。メインシステムは既に押さえつつあります。」


 と、その時。

 脳内に突如として聞こえて来た声に、ブラックプリンスは恭しく答える。


 ――そう、ありがとう。どうやら魔男から盗聴した内容は本当だったようね。さあそのまま、全て掌握しておしまいなさい!


「はっ、姫の仰せとあらば。」


 ――いい子だわ……シュバルツ。


「恐れ入ります。」


 そう、ブラックプリンスとは他ならぬ魔男の黒騎士イース・シュバルツであり。


 そして彼に指令を降す姫とは他ならぬ、王魔女生グループのうら若き社長・尹乃である。


 ◆◇


「王太子殿下、早くお逃げ下さい!」

「ならぬ、離せ! 何故ですか、何故俄かにこのようなお心変わりを!」


 一方、最前線たる王都パレスでは王太子シャルルが城外より城内に呼びかける。 


 呼びかける相手は。

 王太子たる彼がわざわざ敬語を使うような人物など、そうそういるはずもないので言うまでもないが。


「は、母上! これは一体」

「シャルル……もうこんな国は早く、ブリティ星界へと売り渡してしまいましょう!」

「! は、母上!」


 母たるクイーン・バベルだ。

 彼女が敵軍たるブラックプリンスの軍を王都に引き入れたのだ。


「どうされたのですか! 母上はそんなお方では」

「さあ、皆よ……あれぞ敵国の王太子である、狙え!」

「は、母上!」

「殿下! 至急お逃げ下さい!」


 尚も呼びかけるシャルルだが。

 バベルはもはや敵の戯言とばかり、弓兵に彼を狙わせ。


 慌てて親衛隊がシャルルを守る。


「ふふふ……部下に庇われて尻尾を巻き逃げるなどあなたはただの腰抜けね! ええ、腰抜けの王太子、二度と私を母などと呼ばないことね穢らわしい!」

「は、母上!」

「ぐっ!」

「ぐあっ!」


 シャルルを庇い親衛隊の兵士たちが何人か射殺される中、彼を乗せた馬車は素早く逃れていく。


「くそっ! このパレスをあんな奴らに渡さなければならないというのか! 母上……いや、バベル! よくも我が国を売ったな……」


 馬車の中でシャルルは、怒りに燃える。


 ◆◇


「まったく、あんな王太子のいる国では近く終わるわ……売って正解ね、こんな国。」


 バベルは城外を仰ぎ、ほくそ笑む。

 と、その時。


 ――どうだったかしら、女王様? こんなつまらない世界売ってやった気分は?


 バベルの脳内に誰かの声が響く。

 しかしブラックプリンスの時とは異なり、それは女であるものの尹乃ではない。


「ああ、あなたね……ええ、おかげ様でとても嬉しいわ! さあそちらには……もっといいものが待っているんでしょう?」


 ――ええ、勿論。


「そう、ならば行くわ……私の、()()()()さん。」


 蒼の騎士。

 そう、この声の主こそ空宙都市計画の際青夢に電使翼機関(ジェットエンジェン)を授けたあの人物。


 アルカナにも接触していた、あの人物であった――


 ◆◇


「何で……何でよ! 何で嘘ついたのよアンヌ!」

「ごめんなさい……ああ言わなきゃペイルは、絶対にあの火の海に飛び込んで行くだろうって思ったから。」

「飛び込んだわよ、そりゃあ! お父さんお母さんが死にそうなのよ!?」


 ペイルとアンヌが逃れた先、フラン星界南部フォートルジュ近郊にて。


 そこでペイルを待っていたのは、アンヌから告げられた残酷な事実。


 ペイルの両親はアンヌと彼女を逃がしたが、その両親が脱出する前に村は炎上してしまったという話だった。


「っ……!」

「どこに行くの、ペイル!」

「決まってるでしょ、フトゥーコルスワに! 私の生まれた村に帰るの! 私が生まれた村に帰って、何が悪いの!?」

「帰ったらあなたは死ぬ。もう、フトゥーコルスワは――王都は、ブリティ星界の手に落ちたのよ?」

「! ……でも、それでも……私は……うわあああ!」


 今避難している家から出ようとするペイルだが。

 アンヌの言葉に、その場に崩れ落ちる。


「ううう……うわあああ……」

「ごめん、ごめんねペイル……」


 泣きじゃくるペイルを抱きしめ、アンヌはせめてもの慰めと彼女の背中をさする。


「ペイル、今のあなたが少しでも癒されますように……hccps://AomuMameki:******@gea.tarantism/dream、ログイン、エグゼキュート!」

「! あ、アン、ヌ……」


 更なるせめてもの慰めとして。

 アンヌは例えではない、魔法をかける。


 それにより、ペイルは。

 夢の中へと、落ちて行く――


 ◆◇


「……」

「だ、大丈夫青夢? 今日は一段と青いよ?」

「……ごめん、今日は部屋に戻るわ。」

「! あ、青夢!」


 カフェテラスで真白・黒日・青夢――いや、ペイルは。


 談笑し――ようとしていたが。

 ペイルはそんな気分ではないと、すぐにその場を後にする。


 宇宙作戦終了より、数日後。

 失敗に終わったその作戦について凸凹飛行隊がマリアナ母から呼び出されたその日から見れば翌日。


 ペイルは途中で目覚めたためにマリアナ母の話は知らないが、今はそんなことなどどうでもよかった。


「何……で! 何でよ……」


 ペイルは部屋に行く途中、立ち止まる。


 夢の中はこんなに平穏だ。

 まるであんなことなど、初めからなかった様に。


「そりゃあ夢だし、仕方ないよね……だけど!」


 ペイルはその場に崩れて涙を流す。


 ――なるほど……それで、あなたはどうしたい?


「!? だ、誰? アンヌ……違う、声が」


 その時。

 ペイルの脳内にふと、何者かの声が響く。

 それは聞き覚えはあるが思い出せない声だ。


 ――あら、私はアンヌというあなたの親友よりも更にあなたに近い存在よ。思い出せない?


「? え、ええ何も……」


 ペイルは脳内の声の主を思い出そうとするが、できない。


 確かに声の主の言う通り、とても近い人物であることは分かるのだが――


 ――まあいいわ、あなた自身の気持ちは私が代わりに言ってあげる。お父さんお母さん心配よね? あんなことしたブリティ星界が許せないわよね? だったら……仇を取りなさい!


「! か、仇? そ、それはどういう」

「ペイル! 大丈夫?」

「!? あ……アンヌ?」


 ペイルは声の主に問うが。

 その声の主から言葉が返る前に、目の前には。


 なんと、アンヌの姿が。


「ええ、私もあなたと同じ夢を見ているの。ゲーの、夢を。」

「あ、アンヌも! じゃあやっぱりさっきの声は……いいえ、違うわね。」

「? どうしたのペイル、さっきの声って?」


 アンヌは、まったく心当たりがない様子だ。


「う、ううん何でもない! ……! そうか、アンヌ! この世界なら、ブリティ星界を倒せる力が見つかるかもしれないわ!」

「!? え、ほ、本当?」

「うん、きっと!」


 ペイルはふとこの世界のあることに気づき、アンヌに嬉々として話す。


 そう、この世界にもフラン星界と同じく魔法があり。

 しかし技術は、この世界の方が段違いに高いことに気づいたのだ。


 ◆◇


「もう、一体何であって? 要領を得ないお話ね……」

「は、はいまったくですマリアナ様!」

「ああ、何だろうな正体不明のものとは?」


 それから数日後のある日。

 突如一般市民からの謎の要請により、青夢たち凸凹飛行隊は自機を駆り現場へと急ぐ。


 それは先述のマリアナの言葉通り、要領を得ないものだった。


 正体不明のものに突如襲撃されたので助けてください、などという。


「まあいずれにしろ、私たちはそういう類の敵専門なんだし! やるしかないでしょ?」

「あら。いつになく乗り気であってよね魔女木さん。」

「本当ですね……やっぱり宇宙で何かありましたか?」

「まあ、色々ありましてよ。……雷魔さん。あなた、人の傷口を抉る気であって?」

「! い、いえそんな滅相もございません!」

「ま、まあいいだろ! 飛行隊長がこう言っているのなら。」


 いつも通りというべきか、軽口を叩き合うマリアナたちだが。


 その時だった。


「!? じ、11時の方向よりエネルギー反応――敵の攻撃よ、全隊回避!」

「!? くっ!」

「くう!」

「くっ!」


 突如として凸凹飛行隊を攻撃が襲い。

 青夢がそれに気づき慌てて全員回避する。


「い、今のはこ、光線?」

「まったく、このマリアナに随分なご挨拶であってよ……な、何あれは!?」

「! な!?」

「え!? あ、あれは!?」


 が、次の光景にマリアナや法使夏、剣人は驚く。

 目の前に現れたのは、何やらドラゴンの形をした"もの"。


 それをただ口頭でのみ聞けば、幻獣機(エイドローン)かはたまた幻獣機父艦クリプティッドファザーフードかと思われるだろうがさにあらず。


 それは、ドラゴンの形をした"もの"というより。


「ほ、本物のドラゴンが!?」


 ドラゴンそのものである。

 明らかに生物のそれを思わせる鱗に覆われた肌の中に鎧を思わせる他よりも分厚い凸凹の部分があり。


 鋭い鉤爪や牙。


 更には、目を剥き吼える凶暴な形相。


「(そう、それでいいの……そうやってあなたは馬鹿みたいに戦えば! 私の筋書き(スクリプト)通りにね!)」


 しかし凸凹飛行隊のメンバーが驚く中で。

 唯一青夢は、涼しげ――いや、それどころかほくそ笑む。


「な、何あれは? ミスター方幻術、あれはご存知?」

「い、いや知らん! 俺は」

「!? 皆、再び回避!」


 が、凸凹飛行隊が混乱する中でも。

 ドラゴンはその眼を剥き、再び口より光線を放つ。


「(あっちの私、一つ教えてあげるわ! 誰かにとっての神は、他の誰かにとっては悪魔かもしれない……そう、覚えておくといいわ。)」


 青夢は更に不可解なことを考え、ほくそ笑む。

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