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記憶障害少女の感情は   作者: 坂城 誠
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第2章 言葉と仕草は②

「まあ、この場にいない人は後で自己紹介してもらうとして…君は誰かな?」

ケインズは、笑顔だけどただの笑顔ではなく、奇妙な笑顔で訪ねてきた。


「わからない…。」

その言葉だけが浮かんだ。

思い出そうとすると、霧がかかったように邪魔をしてくる。


思い出したいのに…。思い出せない。

うつむいていたその瞬間、どこからか声が聞こえた。


〈本当にそう?〉

疑いをかける声になぜか、聞き覚えがあった。


〈確かに、あなたは記憶がない。でも、思い出そうとしても無駄〉

少女は、うつむきながら目を閉じた。


(なんでだっけ?どうしてだっけ?)

すると、続きの声が聞こえた。


〈だって、あなたは、()()を拒んでしまうんだから。〉


()()』とは何のことだろう。

ふっと不気味のような声が頭の中で響く。


〈まあ、それは〝今”ではない。いつか、知ることになる。〉

その言葉を発すると声が遠のいていった。


なんでなんだろ…。意味が分からないよ。

思わず、耳を塞ぎ目をさらにギュッと強くつぶる。


すると、手のほうからほんわかと温かみが伝った。

耳に当てていた手をどかされた。

びっくりして見上げてみると、そこには『ノア』がいた。

ノアしか見えなくなった。


そのわけというほどでもないが、耳に当てていた手がどかされた瞬間、目の前が輝いて見えたからだ。

ノアの周りも人達も、困惑したような目だった。

というよりも、『心配』なのだろうか。

心が温まる感覚で、何かが違うと思った。


「どうした!?頭が痛いのか?」

周りの人たちもそんな声を出してくれた。


ああ、心配してたんだ。

さっきの声は、何のことなのか全く分からない。…〝今〟は。


「大丈夫。」

今はこの一言でいいんだ。


すると、ケインズがさっきの質問をしてきた。

「もしかして君、記憶がないのか?」


コクンとうなずいた。

目を下に向けていて、顔は見えなかった。見たくなかった。

今、どんな顔をしているか見るのが少し『怖い』気がしたから。


「な…なんて、かわいそう…。」

フィーは、鼻声になりながらも声にした。

周りからも「かわいそう」などの言葉が飛び交う。


どんな顔してるんだろうな…私。

それでも、フィーは私を抱きしめてくる。


「大丈夫よ…。一人じゃないわ。」

抱きしめてくる力が少しだけ強くなった。


こんな時どんなことをすればいいのか、わからない。

でも、この暖かさは悪くはないと思えた。


「この子、私たちが預かろうよ!」

唐突に驚きの言葉だった。

その場の空気がしんっとなったが、すぐに周りから喜びの声が聞こえた。

その喜びの声は、昨日いた男たちの声でずっと前からいたようだった。


「…ちゃんと面倒が見えるのかい?」

試すような口振りでフィーネに尋ねる。

フィーネは、さぞ当たり前のように話す。

「もちろん!それに、記憶がない子なのに追い出すなんて私にはできないし。」


ケインズは、私を追い出す気なんてないみたいだった。

これはただの憶測ではあったが、本当にフィーネを試していたようだった。


「今、もしかしたら危険な状態になっているのだから気を付けてね。…というか、まあ、追い出す気はないけど、反応が面白そうだったからさ。意地悪しちゃったよ。」

ケインズは、クスクスと笑ってた。


「「「…趣味悪。」」」

三つ子が、声をそろえて言った。

あっはっはっは、とリーファは笑いそのほかの人もつられて笑っていた。


フィーネは戸惑っていたが、なんだかほっとしたように見えた。

これが、平和ということなのかなとも思えた。


「…あっ!そういえば、この子の名前、どうする?」

気づいたが、私には名前がなかった。


「クロ!」「シロ!」「カズハ」「フワリ」などたくさんの名前が出てくる。

どこから思いついたものなのか少しだけ疑問になった。

どれもいまいちで、私の望みは『ノア』がつけてほしいと思っていた。

「ミライ」その言葉が聞こえた。

つぶやいた声が私には聞こえた。


私は、彼の元へ行って手を握った。

「それ、好き…。」

言葉が簡単に出た。


もう一回行ってくれるように頼むと恥ずかしがっていたが、言ってくれた。

「ミライ」そんな言葉は、甘く聞こえる。


「私は…ミライ。」

うれしいあまり、『ノア』に抱き着いてしまった。

『うれしい』は、胸が苦しくなると感じるみたいで感情も理解はするようにしている。


「えー、では、これからよろしくな。ミライ!」

ケインズが代表として、歓迎してくれた。


ふわふわした感情で、頬が少しばかり硬直したが「うん」とうなずいた。

「さて、これからの彼女…『ミライ』の世話係として…」


ケインズが世話係として任命したのは、意外な人だった。


*********************************


「えーと、よろしく。ミライ。」

そう、案内することになったのはノアだった。

私は、おせっかいで危険人物のフィーが案内しそうだなと思っていた。


「案内していくな。」

スタスタと歩いていくノアについていった。

けれど、なぜか私と同じ歩幅に合わせてくれた。

難しいけど、優しいように思えた。

そんなことを考えていたら、最初についた場所に棒に布のようなものがまかれて立っていた。


若干使いこなされているような汚れだった。

「ここは、訓練場と言って、俺たちが日々鍛錬しているところだ。…あっ、俺以外って言ったほうがいいか。」

ノアはそう言った後に顔が暗くなったように見えた。


「…まあ、お前には関係ない話だ」

さっきまで暗い顔をしていたようだったのに、声を明るくしたようだった。

よくわからないことで、感情はやっぱり難しいと改めて思った。


そのあとの説明も聞いていた。

詳しいことはわからないけど、何かの敵?と戦うためにやっているそうだということ。

その、敵というのは何か聞いてみたけどやっぱり教えてくれなかった。

ただ単に「関係ない」の一言だった。


「さ、行くぞ。」

さっきより歩く速度を落として歩いていく。

ノアの暗い顔が何か嫌な感じがした。

少しばかりもやもやした感情になった。


「ここが、風呂場だ。こっちが男湯でこっちが女湯だ。」

お風呂…とは、疲れが取れる場所だと聞いたことがある。

「お前が入るのはこっちな」

ノアが指さした方向は、右のドアだった。

間違えて入ることがないように『女』と書かれていた。もちろん、左のドアにも『男』と書いてあった。


「そういえばお前…風呂入ってないんじゃないか?」

そうだっけな…?わからない。そんなに、お風呂?って大事?

私は、不思議に思う。


「いい機会だし。入ってこい。ここで待っててやるからよ。ゆっくり入ってくるといいんじゃねーか?」

お湯をかけるだけでもいいのかもしれない。

そんなこんなで、私はお風呂場に入った。

やっぱり優しい人だなと改めて思った。


私は、着ている服があの人たちより少ないので脱ぐのがラクだった。

ドアを開けると、世にいう露天風呂というやつらしい。…フィーネからさっき聞いたのである。

さすがにでかいほうなのかな?と思いつつ木の桶をもってお湯があるほうに向かって歩き、桶の中にお湯を入れた。


自分でも意外に思ったことがある。

それは、お湯がいい温度で温かかったことだった。

ぬるいくらいで普通な気がしたからだ。

ノアはゆっくり入ってこいって言ってたけど、そもそも入り方なんて知らないし、ルール?っていうのだってわからない。


よくわからなかったのでそのまま出ることにしようとしたら、フィーネとリーファが入ってきた。

「キャー!ミライちゃん!もう出るの?」

またしてもフィーネが抱き着こうとしていたが、ぴたっと止まった。


「おお、来ていたのか。」

リーファが抱き着くのを止めてくれたらしい。そう、殺気だけでフィーネは止まったのだ。

その殺気だけで、抱き着いたら最後そのあとがどんなことになるか察した様子だった。


「あ、あー、もしかしてちゃんと洗ってないでしょう?」

慌てたように話題を変える。

そのことにリーファも気づいたようでフィーネは、少しだけほっとしていた。

「ちゃんと洗おう!」

意味が分からなかったが、私が〝洗う〟の意味が分からないことを察したのか


「私に任せて!洗い方教えたげる!」


私的にはどうでもよかったのだが、そのことに不安を抱いたらしいリーファも手伝うこととなった。


~数分後~


「お持たせ…。遅れてごめん…なさい。」

「ん?…ああ、別…に…」

瞬間、時が止まったかのようにノアは固まった。

ノアが固まった理由は、多分、この服だ…と思う。


「ど…どうしたんだ、その服」

「私たちが着せましたー。かわいいでしょ?」

フィーネは女風呂から出てきてそうそうに言った。

なぜか出たら「似合うから!」と着せられたのである。


ノアは少し口をパクパクさせてから

「かわいい…な。」

そう、頬を赤らめながら言った。

なんだか、心がソワソワする。嫌な気分じゃない。


「あー!次行くぞ!」

気恥ずかしかったらしく、そそくさとそこから離れた。もちろん、私もノアについていく。

後ろを少し振り返るとフィーネの頬が少しピンク色で、今にもにやけそうな顔だった。


その後というと、早々に説明しザックリ過ぎるくらいだった。

なぜ、最初より説明が早いのか聞いてみたりする。

そのわけは、そんなに私が使う場所ではないし重要なところではないと判断したかららしい。

もう一つの理由は、いろんな人に会うので嫌だからということらしい。




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