十九話 輪舞の魔人
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レシアがいると思われる蝿の王の屋敷に向かって走る俺の視界に、その屋敷が見え始めた頃だった。
「あれか! あそこにレシアがいやがるんだな!」
「な、なんだか不気味な雰囲気がするね……」
「いかにもな雰囲気で分かりやすくて助かりますわね!」
走りながら会話していた折、俺の直感が回避を促した。咄嗟に、俺は叫んだ。
「エレメンタルアスペクト!」
「「っ……『エレメンタルアスペクト』!」」
俺の声を聞き、二人は反射的に『エレメンタルアスペクト』――流動化を発動する。モニカの体は水に、エレシュリーゼの体は炎に変質。
俺は『建御雷』で全身を硬化させる。と、次の瞬間。数多の光線が、空より雨が如く降り注ぐ!
「これは……!」
「な、なに……?」
エレシュリーゼとモニカは、突然降り注いできた光線に驚愕する。
やがて、光線の雨が止むと、宙に人が――否、魔人が現れた。
「……奇襲。避けた……。面倒……」
背中から蛾の翼を生やした魔人は、女の姿をしていた。頭には短い触覚が生え、全身に鱗粉を纏っている。肌色は灰色だが、所々が明るい蛍光色で彩られていた。
「また魔人のようですわね……」
「うう……」
「本当に邪魔くせえなあ……!」
こっちが急いでいるというのに、目の前を浮遊する魔人はそれを気にも留めずに、眠たげな目で俺達を見据える。
「……わたし、蝿の王様を守る四天王……その一人。『輪舞の魔人』……モンシロ……。ここから先には……行かせない……」
『輪舞の魔人』と名乗ったモンシロは、そう言って自身の周囲に鱗粉を振りまく。すると、宙を舞った鱗粉が集まり――光線となって俺達に向かって放たれた!
俺が刀で弾こうとすると、
「『アクアシールド』!」
モニカが展開した水の障壁によって光線が打ち消される。
魔人は自分の攻撃が、気弱そうなモニカに打ち消されたからか、眠たげな瞳を見開いた。
モニカは俺の前に出ると、気弱な瞳に闘志を込めてモンシロを睨んだ。
「そこを……通してくれないかな。モンシロさん」
「……できない。相談」
「まあ、そうだよね……」
モニカは苦笑を浮かべると、こちらを振り向く。
「オルトくん……ここは私に任せてくれないかな」
その一言で、モニカがさっきのラッセルと同じことを言っていることが分かった。俺が口を開くよりも先に、エレシュリーゼが声を荒げる。
「き、危険ですわ! 相手は魔人ですのよ!?」
「うん……でも、時間がないですよね……? 多分、ラッセルさんのやり方が一番、効率がいいと……私は思います」
「それは……し、しかし……!」
それでも、言い繕うエレシュリーゼに対して、モニカが首を横に振った。エレシュリーゼは押し黙り、モニカの視線が俺に向けられる。
「それじゃあ、レシアさんをよろしくね」
「……分かった。任せた!」
「……ご武運を!」
俺とエレシュリーゼはモニカにモンシロを任せ、走り出す。モンシロは俺達を行かせまいと、鱗粉を撒いて光線を放つ。
しかし、それらの光線を全てモニカの展開した水の障壁が防いだ。
「あなたの相手は、私だから……余所見、しないでくれるかな?」
「……邪魔。消えて」
背後で激しい爆発音が聞こえたが、俺はモニカを信じて振り返らず、ただ屋敷に向かって走り続けた。
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やる気……出ます!




