表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/72

十七話 奪還戦の開幕



 蝿の王の屋敷。その応接間で、蝿の王はある人物と顔を合わせていた。


「随分と彼女にご執心なのね。蝿の王」


 扇子で口元を隠してそう言ったのは、ミラエラだった。


「我が花嫁に会ったか」

「ええ。とても美味しそうだったわ」


 ミラエラが舌舐めずりすると、蝿の王が顔を顰めた。


「手を出したら……」

「分かっているわよ。うふふ。独占欲が強いのねえ」


 あっけらかんとしているミラエラに、蝿の王は調子を狂わされる。


「それで、何用か」

「ああ……一応、忠告にね。あなたも知っているでしょうけど、彼女は神器使いのレシアでしょ? キュスターの実験台の」

「…………それがどうした?」

「いえ。確か、彼女と一緒にいるのよね? 件のブラック」

「らしいな。我は会わなかったが」


 強いて言えば、去り際に戦った人間は、ブラックに該当したかもしれない。もう、死んでいるだろうがと、蝿の王はミラエラを見る。

 ミラエラは「まあ……私が心配性なだけね」と零し、座っていたソファから立ち上がった。


「それじゃあ、帰るわ。せいぜい、寝首だけは掻かれないようにね?」

「…………」


 蝿の王は、ミラエラの軽口に答えなかった。

 ミラエラは、つまらなさそうにしながら応接間を去ろうと――。

 ミラエラが眉根を寄せた。


「あら……この階層に、誰か来たみたいね」

「……そのようだ。花嫁の客人らしい」


 蝿の王も気づいている様子で口にする。


「……ゲートは破壊したはずだが、早いな」

「詰めが甘いわね。蝿の王。同じ魔将のよしみで、私が様子を見に行ってもいいわよ?」

「その必要はない。我が同胞達が、すでにもてなしている」

「あらそう」


 準備がいいのねと、ミラエラは肩を竦めた。





 アスファロストの転移魔法によって第300階層に転移した俺達は、早速虫モンスター達に歓待されていた。


「聞いていた場所と違くねえか? っと」

「転移の瞬間、魔法的な干渉を感じましたわ。そのせいだと思いますわ! 『フレア』!」


 俺は蜂モンスターを刀で斬り裂く。エレシュリーゼは、群れていた蟻モンスター達を魔法で焼き払った。


「はっはっはっ! そらあああ!!」

「あ、『アクアランス』!」


 ラッセルとモニカも視界の端でモンスターと戦っている。

 俺達が転移した場所は、荒野の真っ只中だった。周囲には何もない。アスファロストの話では、直で蝿の王の屋敷に転移するはずだったのだが……。

 エレシュリーゼの言う魔法的な干渉によって、転移場所がズレたらしい。


「だああああ! 鬱陶しいなあ! 全員伏せろ!」


 俺が叫ぶと、三人は一様に地面に伏せる。それを見届け――。


「絶剣五輪……! 『旋風せんぷう』!」


 体を一回転させると同時に刀を振るう。刹那――怒涛の爆風が刃となって、周囲を取り囲んでいたモンスターの大群を、全て一刀両断にする。

 風が止むと、周囲には俺達しかいなかった。


「さすがオルトさんですわね」

「うわあ……ちょっと気持ち悪い……」


 賞賛するエレシュリーゼの傍で、ちょっとエグい死骸の数々にモニカが顔色を悪くさせている。

 俺は頭を掻きながら、


「おいおい、大丈夫かよ? モニカ?」

「う、うん……は、早くレシアさんを助けなきゃだもんね。こんなところで立ち止まってる場合じゃないよね……!」

「その通りであるな。モンスターは、まだまだ湧いているようだしな」


 ラッセルが指を差した方向に目を向けると、虫モンスターの群れが、再びこっち向かって来ているのが見えた。厄介な上にしつこい。あと、数が多くて面倒臭い。

 だが、この敵の向こう側にレシアはいる……。


「そこを退きやがれ!」


 俺は刀を肩に担いだ。

面白かったから、是非ブックマーク、ポイント評価の方、よろしくお願いします。

やる気……出ます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ