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十一話 魔人の策略



 ラッセルの話によると、全身が無数の蟲によって構成された魔人に、レシアは連れ去られたのだという。

 聞いてすぐに、助けに向かおうとしたが、ラッセルに止められた。


「待つのだオルト。こういってはあれだが、相手は俺が死にかける強敵だ。生半可な準備では、オルトでも死ぬぞ」

「うるせえ!」


 ラッセルの生死も振り払い、レシアが連れ去られたという第300階層に行くため、ゲートへと向かう。

 俺達は先日、第299階層まで攻略を完了させた。今なら、第300階層へ行くことが可能だ。

 ゲートに向かって走っている途中、進行方向に煙が立ち上っているのが見えた。俺の中に、嫌な想像が駆ける。

 暫くして、ゲート前に到着すると――。


『ギイギギイイイイイ!』

「う、うわあああ!?」

「っ!」


 ゲートの前で、二メートルを超えるクモの姿をしたモンスターが暴れていた。

 ゲートを守護していたであろう兵士が尻餅をつき、叫んでいる。


「な、なんでモンスターがこんなところに!? い、いやだあああ! 殺されるっ!?」

『ギギイイイイイ!!』


 クモモンスターは、兵士を殺そうと鋭い前脚を振り下ろす。

 刹那――刀を抜き放った俺は、兵士とモンスターの間に割り込み、振り下ろされた前脚を刀身の腹で受け止める。硬質な音が響き渡り、風が吹いた。


「あ、あなたは……!」

「下がってろ! 邪魔だ!」


 俺が言うと、兵士は腰を抜かしながらもなんとかこの場から逃げ出す。

 横目に確認したが、ゲート――上層へ転送するるための装置が滅茶苦茶に壊されていた。

 レシアを連れ去った魔人は、無数の蟲で体を構成しているだという。ラッセルはその魔人が操る蟲にやられた。なら、このモンスターもその魔人が操っているのだろう。


「やってくれたなあ……!」


 怒りのままクモの前脚を上方に弾き、空かさずクモを縦に一刀両断する。クモの肉は二つに割かれ、グチャっと地面に臓物が撒き散らされる。

 これでクモモンスターは倒した。しかし……まさか、これで終わりなはずがない。

 すぐに街中から悲鳴や煙が上り始める。

 ゲートを破壊したのは、追っ手を防ぐためだ。そこまで頭の回る相手なら、当然ゲートを破壊するだけでは終わらないはずだ。


「街を蟲に襲わせりゃあ、それだけレシアの救出が遅れるからなあ……いや、本当に。やってくれたなあ……」


 遠方の方では、炎が上がっている。エレシュリーゼの炎だろう。その炎は、すぐに水で鎮火されている。エレシュリーゼとモニカが協力して、街に出現したモンスターを倒しているのだろう。


「…………っ」


 どのみち……このままではゲートが使えず、第300階層へ向かうことができない。


「ちくしょう……!」


 俺は歯噛みしながら、街中に現れたモンスター達の殲滅に加勢した。

 モンスター達の殲滅が終わったのは、夜が明けた頃だった。迅速な対応により、奇襲にも関わらず被害はほとんど出なかった。

 死者もなし。行方不明者もなし。強いて言えば、レシアがいない……。そして、ゲートが壊されてしまった。


「…………」

「オルトさん……」


 ゲートの前で立ち尽くす俺に、エレシュリーゼが声をかける。


「……ゲートの修理には、最速でも三日かかるそうですわ」

「なんとか……ならねえのか?」

「ゲートの装置には特殊な金属が使われていますわ。それを加工するのに時間が……」


 敵は少なくともレシアを殺すつもりはない。連れ去ったということは、そういうことだ。しかし――。


「くそっ! な、なにか手は……!」


 俺はぐるぐると思考を巡らせる。

 ゲートが使えない。

 なら、ここから迷宮で第300階層に――いや、時間がかかりすぎる。そんなことをしている間に、レシアがどうなるか分からない。

 ただ、俺の中に他の手段が見つからなかった。


「ど、どうしよう……早く、レシアさんを助けないといけないのに……!」

「ううむ……すまん。俺が油断していなければこんなことには……」


 モニカやラッセルも暗い表情を浮かべる。

 まずい……手がない。打つ手がない。見つからない。


「ラッセルは……悪くねえ。もとを辿れば、俺がレシアとくだらない喧嘩なんかしてなきゃりゃあ!」

「その通りだ。あの夜、彼女と喧嘩をしなければ……彼女は蝿の王に連れ去られなかっただろう」

「……!」


 その声にハッとなって振り返ると、視線の先にアスファロストが立っていた。

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やる気……出ます!

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