十話 正義の遺体
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俺はただジッと、レシアが帰ってくるのをリビングで待っていた。
エレシュリーゼとモニカも一緒に、重苦しい空気の中で、ただ待っていた。
レシアが帰ってきたら、真っ先に謝ろう。
確かに、よく喧嘩もするし、レシアが悪い時もある。しかし、今回は全面的に俺が悪い。だから、素直に謝ろう。
そう決めて、どうやって謝ろうか、頭の中でぐるぐると考え続けた。
レシアが帰ってくることを信じて。
しかし、レシアは帰ってはこなかった。
※
「遅いですわね……」
「探しに行った方が……」
「…………そうだな」
二人も帰ってこないレシアが心配なのだろう。俺が立ち上がると、二人とも喜色の笑みを浮かべた。
「そういいえば、帰ってこないと言えば、ラッセルさんも遅いですわね?」
「あ……そういえば。いつもはこのくらいの時間には帰ってきてたような……」
「まあ、あいつのことだから、どっかでお節介でも焼いてんだろうけどな」
俺達がラッセルを見つけたのは、そのすぐ後のことだった。
レシアを探して歩いていると、街灯の明かりの下で倒れているラッセルを見つけたのだ。
「なっ……」
「ら、ラッセルさん……!」
「ど、どうしたの……!? 大丈夫!?」
モニカがいち早くラッセルのもとに駆け付け、容態を確認する。遅れて、俺とエレシュリーゼが駆け付けると――モニカが目を見開いた。
「し、死んで……る……! ラッセルさんが……! し、死んで……!?」
「そ、そんな!? ほ、本当ですの!?」
「ま、間違い……ないです……! みゃ、脈が……」
モニカはラッセルの首筋に指を当て、脈拍がないことを確認したようだ。うつ伏せで倒れているラッセルの横顔には生気がなく、瞳孔が完全に開いていた。
「そ、んな……な、なぜラッセルさんがっ……」
「が、外傷がない……どうやって、ラッセルさんを……!」
涙を流す二人を他所に、俺はラッセルに近寄る。
よくその体を観察してみると、首筋のある一箇所だけが紫色になっていた。
推測できるのは、即効性の毒か……。
俺はモニカに、
「悪いけど毒消しの魔法を頼む」
「え……? で、でも、そんなことしても……」
「いいから」
「あ、う、うん……。えっと、『キュア・ポイズン』」
モニカのかけた魔法がラッセルの体を包み込む。すると、首筋にあった変色跡がなくなった。それと同時に、ラッセルが動き出す。
「はっはっはっ! 俺! 復活!」
「ええっ!?」
「ふええ!?」
エレシュリーゼとモニカが、同時に奇声を発して驚く。まあ、さっきまで死んでいたと思われていた人間が、突然復活したのだから無理もない。
「ったく、返事くらいしろよな? 俺も少しだけ心配になっちまったよ……ったく」
「はっはっはっ! すまなかったな! ちょっと余裕がなかったのだ! はっはっはっ!」
全く呆れた奴だ。
雪崩でも、溶岩でも、高所から落ちても死なない男が、毒で死ぬわけがない。限りなく死にかけてはいたようだが……。
「てめえが死にかけるったあ、穏やかじゃあねえな」
「ああ、実はだなあ――」
「って、なに普通に会話してますの!?」
「そ、そそそそうだよ!? わ、私さっき確かに――」
二人の驚きようにラッセルが首を傾げる。そんなラッセルに、脈がなかったことをモニカが言うと、
「ああ、それはそうであろうな。なにせ心臓を止めていたのだから。脈があるわけがない。はっはっはっ!」
「し、心臓を……!?」
「止めてた……!?」
これは俺の予想通りだった。
恐らく、心臓を止めることで血液の流れを止めていたのだから。毒が全身に回らないようにするための緊急措置だ。半分は死んでいたも同然である。
「まあ、俺のことはいい。それよりも、オルト。大変だ」
「おおう、なんだ?」
「レシア殿が攫われた……俺が不甲斐ないばかりに……」
「え?」
え?
その後、ラッセルから詳細を聞いた俺は……激しく自分の顔面を殴りたくなった。
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やる気……出ます!




