二十八話 VS上級悪魔②
「ぎいいいい!」
ガルメラは歯を食い縛り、切り離された四肢を再生させる。
「高速再生か……。結構早いもんだな」
「くっ……! 我を見下すな! 人間の分際で!」
ガルメラは咆哮しながら、オルトに接近戦を挑む。
クロスレンジでの肉弾戦闘は、ガルメラが得意とする戦いだ。雷を纏ったガルメラの攻撃には電撃が付与され、雷速で繰り出される攻撃は避けるのが困難――。
しかも、ガルメラは頭に血が上ってがむしゃらに間合いを詰めた様に見えるが……実際は違う。
クロスレンジならば、ガルメラとオルトは肉迫する距離になり、刀を振るう隙間が無い。
「死ね!」
ガルメラは右拳で雷速の打ち下ろしを繰り出す。
オルトの顔面を目掛けて飛ぶ拳……普通、避ける事は不可能な攻撃だったが、オルトは首を傾げて躱す。
「馬鹿なっ……! くっ!?」
ガルメラは戦慄するが、直ぐに二手目、三手目と手数を増やす。
左右上下から稲妻が如き攻撃の嵐。
オルトはそれすらも、最小限の動きで躱す。まるで、ガルメラの拳が、オルトの肌の上を滑るかの様な……そう錯覚するが程、滑らかな動き――。
オルトはガルメラを見る目を細める。
「くそ! くそ! なんなのだ貴様はああああ!」
「…………『建御雷』」
オルトは右前腕を硬化させると、ゼロコンマ1秒も無い僅かな間隙を縫ってガルメラの懐に潜り込む。そして、唸りを上げる様に、オルトの拳がガルメラの腹部を下から掬い上げるが如く穿つ。
「がはっ!?」
刹那、衝撃波が一帯に走り、2人が立っていた地面が陥没。ガルメラは爆発音にも似た衝撃音と共に、1キロ程離れた山に激突。山腹に巨大なクレーターが生まれる。
ガルメラは口から相当量の血を吐いたが、高い魔力量でもって直ぐ様回復する。
「ぐう……人間があああ!!」
ガルメラは体中から電撃を迸らせる。
極大の放電により、ガルメラが激突した山が熱でドロドロに溶けていく。
ガルメラは雄叫びを上げ、地面を蹴る。蹴った地面は爆発した様に消し飛び、ガルメラの通った後は稲妻の軌跡が描かれる。
オルトは再び向かってくるガルメラを前に、右手をヒラヒラさせて飄々としている。
「ってええ……。やっぱり、雷属性は直接触れるの良くねえわな」
「オオオオオッ!」
「まだ、向かって来る気か? 中々、良い根性してるじゃあねえかよ」
「舐めるなよ……人間! 我は上級悪魔! ガルメラだあああ!! 人間如きに負ける訳には行かんのだあああ!
オルトは不敵に笑む。
「へえ……ガルメラね。人間如きっつったか? てめえには、色々と聞かねえといけねえからな。殺さない程度に手加減してやってんだ。そっちこそ、人間舐めんなよ?」
オルトもガルメラに向かって前進――元からその場に居なかったかの如く姿を消す。ガルメラは、突如向かっていた目標が消えた事で戦慄する。
だが、それも直ぐに驚愕へ変わる。
雷速で走っていたガルメラの頭上に、踵を上げたオルトが現れた……!
「『建御雷』」
オルトは右足を硬化させ、ガルメラの背中に踵を落とす。
ガルメラは地面に叩きつけられ、あまりの衝撃に気を失い掛ける。そのままガルメラは地面に減り込む形になるが、己のプライドだけで意識を繋ぎ止める。そして、オルトを退かせる為に、放電する。
「っと……ひいい〜ビリビリするなあ。ったく……!」
オルトは「うへえ」と顔を歪ませ、ガルメラから距離を取る。
「はあ……はあ……くそ……!」
ガルメラはなんとか地面から抜け出し、肩で息をしながらオルトを見る。
圧倒的なスピード、圧倒的な力――どれを取っても、ガルメラがオルトに勝るポイントが見つからない。桁違い……否、規格外過ぎる。
ガルメラは震えるで口を開く。
「貴様……一体、何者なのだ。上級悪魔である我よりも強いなど……ただの人間ではない。まさか……神器使いか……?」
「神器使い……? なんだそりゃあ?」
オルトが首を傾げたのを、ガルメラは惚けたと勘違いした。しかし、直ぐに頭を振る。
オルトは本当に知らないのだろう。そして、神器使いでは無い……。
神器は、塔の世界エルダーツリーを創造した神が造ったと言われる神造兵器。それぞれが、特殊な力を持ち、魔人すら凌ぐ力を持っているという。
故に、魔族は神器使い達を危険視しているのだが……オルトのをどこをどう見ても、神器を所持している風には見えなかった。
持っているのは……ただの、剣のみ。
「貴様は……何者なのだ……?」
ガルメラは再びその問いを零す。
オルトは刀を肩に担いだまま、
「何者何者って、何回聞きゃあいいんだよ……。ったく……俺はオルトだ。ただのオルト」
「オルト……か。貴様は……一体、どうやってその力を得たのだ……?」
「んあ? そうだなあ……別に、特別な事はしちゃねえけど」
「嘘を吐くな……! 特別な事をせず、どうやって我を圧倒できる!」
ガルメラの咆哮に、オルトは目を細めた。
「……まあ、あれだ。知りたきゃ俺に勝つこったな」
「そう……か……」
ガルメラは拳を握り、己を奮い立たせる。
もはや、目の前に立つ男を侮りはしない。
オルト――この男は、あまりにも危険過ぎる。
ガルメラは、ここで己が倒せねばならない相手だと思い、力を高める。
「我は……我が主の為に、貴様をここで討つ!」
ガルメラは全身ので雷を手の平に集めて、エネルギーを一点に集中させる。
オルトは笑みを浮かべる。
「へえ……いいぜ。てめえの全身全霊の攻撃、斬ってやる。そしたら、大人しく投降しろよな?」
「ああ……できたらの話だがな! はあああああっ!!」
ガルメラは一点に集約させたエネルギーを両手で包み込み、それをオルトに向かって放出させる――!
莫大なエネルギーの奔流が地面を削りながらオルトに迫る。
「喰らえええ!! 『ライトニングブラスト』オオオオオ!!」
オルトは担いでいた刀を下ろし、少しだけ腰を落とす。
迫り来る『ライトニングブラスト』を前に、オルトは一言――。
「絶剣五輪……『地壊』」
そう呟いたオルトは、刀を下から振り上げる。
と、その延長線上の地面が縦に切断されていき、地面が文字通り割れる。
オルトが刀を振るった衝撃で地割れが起きたのだ。
その衝撃だけで『ライトニングブラスト』は掻き消され、ガルメラは地割れによって地面に埋もれる。
それで止まる事は無く、地割れは広がりに広がり――外壁の一部が粉々に砕け散り、遠方の山が2つ程崩れた。
海の方では大きな津波が起きた。
幸い、近辺の海はモンスターが多いせいか、港が無かったので、津波による被害は無かった。
「ふう……」
「ふう……ではないだろう! 貴様は相変わらず加減を知らないな!?」
「あ、やべっ」
声を荒げたラッセルに、オルトは外壁が一部崩れてしまった事に気付いた。
まあ、最悪巨額な弁償金を払う事で、魔法で直ぐに修復は可能だが……それにしてもやり過ぎだった。
「…………」
「…………」
レシアとエレシュリーゼは、あまりにも突飛な光景を見ていた為か、戦闘終了後もその場で呆然としていた。
ブックマーク、ポイント評価をして頂けるとやる気が……出ます!
そういえば……日間2位になりました。
ヤケにアクセスが伸びていたので、ついにスマホがバグったのかと……。




