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十六話 黄金騎士、最強剣士と再び

4



 俺が壊した会場の修理に1時間掛かるらしいので、ちょっとした休憩時間が設けられた。

 次のブロックの連中や観客達には、1時間も待たせる事に申し訳なく思う。それについて、闘技場の真ん中で謝罪すると、観客達は一様にブンブンと首を横に振っていた。

 その後、俺は選手控室で、次の予選が始まるまで暇を持て余していた。


「ちょっと、やり過ぎたかね……」


 結界もあったし、途中で勇者が介入して来たから大丈夫だろうと高を括っていたのだが――少しだけ威力を殺した程度だった。ちょっと、勇者には拍子抜けだ。


「っても、あの一瞬で作ったにしては、中々の盾だったなあ」


 その点は評価するが、勇者に対しての興味は失せた。3人がかりで俺の一振りを防げないのなら、その程度という事だろう。

 別に、俺は戦闘狂という訳では無いが――残念に思った。

 俺が物思いに耽っていた折、Cブロックでの出場を控えているモニカが声を掛けて来た。


「お、オルトくん! み、見たよ! さっきの試合! すごかったね!」


 興奮した調子でモニカは言った。興奮し過ぎて、たわわに実った胸が揺れている。

 と、いかんいかん……乳に惑わされる所だった。

 俺は平静を装い、格好を付ける。


「だろ? 俺、すげえ強いんだぜ?」

「うん! 雷属性の流動化って、他の属性の流動化と比べてすごく強いって聞いてたのに……」

「ああ、雷属性な」


 そう、雷属性の流動化は他の属性の流動化よりも優れている。

 体を雷に変質させる訳だから、触れれば感電する。しかも、全ての行動が雷速となる。そもそも、常人の目では追う事が出来ない。攻撃力、殺傷力も非常に高く、雷属性の流動化は、全属性最強と謳われている。


「まあ、結局は術者本人の技量が問題だからな。ありゃあ、クロスには過ぎた力だったわな」

「でも、2年Aクラスの首席だよ? それに、流動化って簡単な魔法でも無いし……。あれは高度な魔力操作と豊富な知識が無いと出来ないんだよ?」

「それは知ってるっての。クロスに技量がないなんざ、思っちゃねえよ。学生レベルなら最高レベルだろ」


 だからと言って、達人レベルと互角に戦えるのかと問われれば――答えは否。

 俺以外でも、達人の域に足を踏み入れた武芸者なら、クロスなんて足元にも及ばない。

 モニカは俺の言葉に感嘆の息を吐く。


「す、すごい……なんだが、見てる場所というか……高さが違う感じ。私達よりもずっと高い所から見てるというか……」

「そりゃあ、俺の方が強いからなあ」


 俺は踏ん反り返って言った。

 モニカは苦笑を浮かべる。

 と、そこに思わぬ乱入者が現れた。


「……そこは普通、謙遜する所です」

「んあ? って……れ、レシア!?」

「え、あ、アルテーゼ様!?」


 声を掛けて来たのはレシアだった。

 まさか今の今まで無視されていたのに、向こうから声を掛けて来るとは――これは作戦成功という感じだろうか?

 俺がそんな事を考えていると、モニカが口を開く。


「え、えと、あの……あ、アルテーゼ様は……」

「……レシアで構いません。同級生ではありませんか」

「そ、そんな……お、恐れ多くて……。わ、私みたいな平民は這い蹲って靴をお舐めするのが当然なんです!」

「卑屈過ぎるだろうが、そりゃあ……」

「で、でも……」


 とりあえず、言い繕うモニカの頭に軽いチョップする。モニカは、「あた……」と小さな悲鳴を上げた。


「別に本人が良いって言ってんだ。逆に失礼だろうが」

「そうですよ。私が良いと言っているのです。構いません」

「え、えと……それじゃあ、レシア……様」

「様も結構です」

「う、うー……せ、せめてレシアさんで……」


 モニカが顔を赤くさせて言うと、レシアは至って冷静な表情で、「それで構いません」と述べた。

 とりあえず、話がひと段落した様なので俺はレシアに目を向ける。


「で、なんの用だ? 俺が強すぎて好きになっちゃったか?」

「あなたの頭には脳味噌が入っていないのですか? 好きになる訳がありません。あなたの様な野蛮人」


 おっけーなるほど。作戦は失敗と……いやあ、泣けて来るぜえ。


「じゃあ、なんの用なんだよう……。今まで無視してた癖に」

「それは……いえ、この話題は後にします。私が声を掛けたのは、いたいけな女子学生が、あなたの様な野蛮人に声を掛けていたので注意をしに来たのです」

「わ、私……?」


 モニカは首を傾げる。


「はい。無闇に、この男に近づかない方が良いと思います。この男は女と見れば、盛って襲い掛かる獣の様な習性を持っています」

「おい、俺はそんな事をしねえよ……。とんだ風評被害だなあ」

「そ、そうですよ! オルトくんは優しい人です! 前だって襲われていた私を助けてくれたんです!」

「え、た、助け……っ」


 何故かレシアが悔しそうに歯噛みした様に見えた。

 その異変に気付かず、モニカは口を開く。


「お話し易いですし、態度や口調は……確かに悪いと思います。けど、こう見えて紳士な所が沢山あるんです! 転びそうになったら抱き抱えて助けてくれたりとか! ちょっとした段差でも転ばない様に手を貸してくれたりとか!」


 モニカが俺の話をする度に、何故かレシアの目に怒りにも似た何かが宿る感じがした。

 よく分からないが、俺は言い訳をする様に口を開く。


「それはあれだ。てめえが何も無いところでも転びまくるから、呆れて手を貸してただけだな」

「ええー!?」


 新事実に衝撃を受けたモニカ。しかし、そんな事はレシアの耳に届いていないのか――レシアは俺を睨む。


「あ、あたしだって……結構転ぶ――じゃない! オルトの節操無し! 変態! むっつり!」

「は、はあ!? なんだよ急に!?」

「うるさい!」

「うるさいのはてめえだろ! このあんぽんたん!」

「なっ……ま、また言ったわね!? オルトのバカ! バーカ!」


 こ、こいつ!?


「んだとお!? バカって言った方がバカなんだよ!」

「オルトには言われたくない!」

「この……やんのかおらあ!」

「やってやるわよ!」


 こうして俺は再びやってしまった……はあ。





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