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十四話 予選開幕

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2



 校内は大変賑わっており、今日から始まる勇者選抜戦の話題で持ち切りだった。

 俺達学生は直ぐに闘技場まで移動させられる。

 闘技場は円形で、かなりの広さだった。多少、派手に暴れても問題は無さそうだ。観客席には安全対策の為か、魔法壁が張られている。


「へえ……第73階層の闘技場よりかはこじんまりしてんのな」

「あそこは闘技大会で賑わっている階層都市であったからな。当然と言えば、当然だろう」


 俺はラッセルと一緒に、観客席でオープニングセレモニーに出席していた。学生は全員強制出席だ。

 オープニングセレモニーでは、「国王陛下が――」とかどうのこうの言って、頭に冠を乗っけた中年の男が何か言っていた。

 興味が無かったのでラッセルと話していた。


「闘技大会か……懐かしいな」

「俺としては苦い思い出だ。貴様に負けたからな!」

「まあ、ありゃあ仕方ねえだろ。お互いに不完全燃焼で終わったしな」


 俺は肩を竦める。


「そういえば、ラッセルは出場しねえのか?」

「貴様が出るだろうと思って、俺はエントリーしなかったのだ」

「へえ、そりゃあなんでだ? 俺と戦いたくねえのか?」


 言うと、ラッセルは半眼を俺に向ける。


「貴様、第78階層の時の出来事を忘れた訳ではないであろうな? 深淵大地で、お互いに合意したであろう? 金輪際、貴様と俺は本気で殺し合わないとな」

「覚えてるっつーの……俺もあれは反省してる」


 俺は苦虫を噛み潰した顔になる。

 数ヶ月程前にだったか。第78階層にて、俺とラッセルは一度だけ本気で戦った事がある。追う者と追われる者、その関係にいい加減、決着を付ける為に俺から申し出た――男と男の決闘だ。

 結果、俺達の戦闘の余波で大地にぽっかりと巨大な大穴が空いてしまったのだ。その穴は、下の階層に直接繋がっている程深く、人々から『深淵大地』と呼ばれる未曾有の大災害となった……。


 まあ、犯人は俺とラッセルな訳だが。


「以来、俺と貴様は本気を出さないという事になった……。お陰で、貴様をここまで捕まえられなかった訳だ! はっはっはっ!」

「まあ、俺としちゃあ都合の良い事だったぜ」


 そう昔の事でも無いが、懐かしく感じる。


「とにかく、そんな訳でだ。どうせ貴様と当たっても本気で戦えないのなら、出る意味など無いであろう? 勇者になりたい訳でもない。なら、出場しない方が良いという感じだ」

「なるほどな……。んじゃまあ、俺はラッセルの分もお祭りを楽しむかねえ」

「そうすると良い! はっはっはっ!」


 そうこう会話していると、国王の話が終わったのか、続いて3名の勇者に関して紹介と挨拶が入る。

 『鉄壁の勇者』、『剛拳の勇者』、『旋風の勇者』の3名が来ているという。ちなみに、『紅蓮の勇者』であるエレシュリーゼは、他の勇者達と同じ特等席に座っていた。


「現役勇者か……どんくらい強いんだろうな?」

「どうであろうな。人類生活圏の外――未開拓領域の調査に出ている訳だからな、強いモンスター共と戦っているだろう。弱いという事はないのではないか?」

「じゃねえと、拍子抜けだわなあ」


 それから暫くして、出場する選手は控室に移動する様にアナウンスがあったのでラッセルと別れた。

 控室へと向かっていた俺は、その途中でレシアを見かける。


「ん……まあ、あいつも出るよな。そりゃあ」


 そういえば、レシアと当たった時の事とか全く考えてなかったな。まあ、当たった時に考えればいいが……正直、まともに戦える気がしない。

 とりあえず、俺は可愛いレシアの横顔を拝めたので両手を合わせ、改めて控室へ。

 控室に着くと、対戦表が張り出されていた。

 控室は広く、およそ100名くらいの選手達が全員集まっても余裕があった。

 対戦表を確認すると、俺の名前は予選Aブロックとなっていた。


「へえ……Aブロックっつーと最初の試合だわな」


 レシアの名前はBブロックにあった。他に知り合いの名前を探してみると、Cブロックにモニカの名前があった。


「あいつも出んのか……」


 控室に来ているかどうか探すと、丁度対戦表を確認しに来たのか、モニカがやって来た。


「よう、モニカ」

「あ、オルトくん。やっぱり、オルトくんも出場するんだね?」

「ああ。モニカも出るみてえだな。Cブロックに名前があったぜ」

「Cブロック……そっか」

「ん? どうした?」


 Cブロックと知ったモニカの顔色が悪くなったので尋ねる。

 モニカは俯きつつ、


「あ、うん……。さっき、Cブロックに3年の首席の人がいるって聞いたから……」

「ああ、それで不安な訳か……。つっても、勇者を目指すっつーなら、強敵とは戦わなくちゃならねえしな。泣き言は言ってらんねえぞ?」

「う、うん……そう……だよね。うん。私、頑張る!」


 モニカは拳を握り、そう言った。

 元気が出たみたいで何よりだ。

 ふと、モニカと談笑をしている時だった。何やら視線を感じた為、気になって振り向くとレシアが軽蔑した視線を俺に向けていた。


「…………」

「……な、なんだよ……」


 声を掛けたが、やはり俺を無視し、レシアはスタスタと歩いて行ってしまった。

 モニカは困惑気味に、


「えっと……どうしたのかな。アルテーゼ様……」

「さあ……」


 俺とモニカは訳が分からず首を傾げるばかり。

 そうこうしている内に、「予選Aブロックの選手は闘技場へ移動して下さい」というアナウンスが入った。


「んじゃあ、行ってくるわ」

「うん! 頑張ってね!」

「おーう」


 俺は手をヒラヒラさせ、闘技場に向かって歩を進めた。





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