始まりの場所 ニ
異世界転生した主人公たちの適応能力を見習いたいですね、何をどうしたらあそこまで心を強く持てるのだろうか笑
遅筆なのでゆっくりと進めますが、宜しければお付き合いお願いします。
僕は辛うじて目を開けることができた。 最後の記憶では森の中で空腹に、過度の疲労に押し潰された僕は道端で倒れたはずだ。
しかし目の前に映る景色は生い茂る木々ではなく、見た事もない天井。 僕が今倒れている場所も硬い地面ではない、フワフワとした地面とは比べ物にならない程の居心地の良さ。 滑らかな手触り、香るお日様の匂い。
どうにかこうにか体を起こし伸びをして体をほぐしながら目を覚まして行く、程よい痛みに覚醒し始めて周りにあるものにやっと意識が向き始めた。
「ここはどこだ?、部屋の中か?」
部屋の作りは木材でできているが見たこともない材質だ。 塗装されている訳ではなさそうなのに白い斑模様が浮き出ている、そこだけ素材が違うのかと言うほどに浮いていた。 きれいに整えられた室内、何より多くの本が丁寧ね装丁されているのが目につく。 豊かな暮らしている人の部屋なのだろうか、見たこともない道具がそこらかしこに煩くならないよう考えられ置いてある。
ゆっくりと体を起こす。 起き上がり体に異常がないか触りまわる、足の晴れも痛みも引いていた、動かして痛い事もないほかな部位も特には問題無い様だ。
ベッドから降りてふらりと本棚に向かう。
少し期待していたのだ、ここは地球以外の惑星とかじゃなくて、ただ単に今までが全部夢で突然この家に越してきたとかで戸惑ってあんな夢を見て。
何て、そんな、疲れで見た変な夢なんだって期待していた。
本棚の本を一冊取り出して適当に開く。
そこには、見たことの無い文字が羅列されていた。
漢字、ローマ字、ギリシャ文字でもキリル文字でも無い本当に知らない文字だった。
未知の文字なんてこの世にいくつもあるし、大体はインチキだったりする。
だけど僕はこの時、この文字がインチキでもなく地球上でまだ見つかっていない文字とかでもなく、僕の知っている世界とは全くの別の物だと確信してしまった。 何故かなんて分からないが直感的にそう感じた。
理解の範疇を超えている今の事柄にたまらなくなった僕は手に力が上手く入らず本を落としてしまった。 落ちた本は乱雑に転がり一枚の紙切れを吐き出す、その写真は裏向きのままに僕の足元に滑ってきた。 僕は宇宙人とかそういった未知の生物が苦手だった、これがそういった者たちの写真だったりしたらどうしようかと取るに取れなかった。 鎮まらない心臓にくらくらしながら意を決して拾い上げる。 恐る恐る覗いた裏はやはり写真だった。 モノクロの時代を感じさせる色合い、僕の想像していたようなそれは写り込んでいなく、そこに写っていたのは男女の人間だった。
少し安心した、けれどその安心は直ぐにどこかに散って新たな疑問が現れた。どういうことだろうか、心底認めたくなかった違う惑星という一番可能性が高い線はなくなった。
では、ここは地球の何処かなのか、でもそれだと夜に見た2つの月が何なのか証明できない、一体僕に何が起きているんだ。写真に写った男女二人を見ながら本を拾い上げる。
本の持ち主もこのどちらかなのだろうか、写真を本に挟み本棚に戻す。
さてどうしたものか、僕はドアノブに手をかけてみる。 外に出てみるべきだろうか、でも誰かに出くわしたら、僕にとって安全なのかもわからない。 でもここにいても仕方がない、少し外に出てみよう、何かあるかもしれない。
決心してドアノブを回すが開かなかった、鍵がかかってるのか。 しかし見たところ鍵穴も鍵を開ける回しも見当たらない、引き戸なのかとドアノブをあちらこちらに引っ張ってみるが、ガタガタいうだけで開かない。 出られない、外鍵なのか。 脱出できないのかと焦り始めた時、扉の向こう側から鍵を開ける音が聞こえる、突然のことに見が固まる。
徐々に開く扉の向こうには、さっきの写真に写っていた男がこちらを見て立っていた。
写真よりも年を取り初老を迎えたくらいの男が僕を見据えニッコリの微笑んだ。 彼のその笑顔が信用しきれない僕は後ろに後ずさる。
男は聞いたこともない言語で僕に話しかけてきた、何も理解できないまま目を白黒させていると、男はゆっくりとしっかりとした発音で話しかけてくれた。
僕の少ない言語知識では全く理解できない、そもそもの話さっき考えついてしまった様に、この言語は僕たちとはまた別の世界の言葉なのじゃないだろうか。 そうだとしたら全て辻褄が合う、2つ月、未知の言語、この部屋に点在している摩訶不思議な道具たち、全ては異世界ということで話がつく。
そんな事があり得るのか、僕は受け止めきれない。
どうやって生きていけば、帰れるのか、あいつにもう会えないのか、僕の店はどうなる、目の前の男ともまともにコミュニケーションが取れないのにどうしたらいいんだ。 いろんな事が頭の中を駆け巡り頭を抱えてしゃがみこんでしまった、不安に足がすくんでまともに立っていられない、先の見えない恐怖に胃を締め付けられる。 すべての感情が頭の中で蠢きあいぶつかり加速していく、その熱量に僕は耐えきれなくなり意識を手放した。 眠りのみが僕を癒やしてくれる。
ドルフは頭を抱え倒れた男をどうにか抱えベッドの寝かした、腰痛持ちには厳しい運動だ。
彼の身なりはどう見てもこの国も者ではないその上に言葉も理解できないようだった。 難民か逃亡者か、何にせよもう少し様子を見てから今後を考えたほうが良さそうだ。
考えのまとまったドルフは幾らかの食べ物を部屋の中に置き部屋を出る、何もないとは思うが一応ドアに鍵をかける。逃げられたらたまったものでは無い、ポケットから取り出した小さな杖をドアノブの横で振る、手も触れていないのカチャリと音を立てて鍵がかかる。 自分の部屋に戻ると今後の彼の対応で必要になるであろう書類を作り始めた。
ここ数年で最高の幸運が舞い込んで来たようだ。 顔が勝手に緩んでしまうのが止められなかった。
「やっと、やっと、研究が進む」
ついには笑い声が漏れてしまっていた。 それに気がついたルドフ、年甲斐も無くはしゃぐ自分に失笑した。 頬を緩ませ仕事についた。
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