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困惑

ストックが切れましたので、更新速度が今後は遅れると思います。

あの晩餐の日から数日経たずに学園の入学式となり、セルゲイは中等部への入学、アナスタシアは高等部へと編入した。


他国とはいえ、貴族の子弟が通う学園である。大国であるマノフ王国の言葉を扱えるものが多かったため不便さはなかった。


「アナスタシア様、慣れないことはございませんか?」


「『モエ様ありゃがとうございます。』ジハネの言葉は発音難しくて...精進してまいりますわ。」


「ふふ、可愛らしい。私で良ければ練習相手になりますわ。」


モエも公爵令嬢であり、アナスタシアの学友として初日から側に付いていてくれていた。艶やかな黒髪に小柄で、美人というより可愛いタイプの女性である。


「それにしても...今日は皆様、華やかな装いですのね。」


「ユージン様が昨日から復学されたので、ね。」


アナスタシアが思わず聞いてしまうくらいには、女生徒たちはいつもより良い生地で装飾多めだったらしい。ユージンにいつ会ってもいいようにしたい女心だった。


(やっぱりここでも人気なのね。)


あちらの学園でも生徒会にいた4人は人気で、目があっただけで倒れる女生徒もいたくらいだ。


昼時とはいえ必要以上に騒がしい周囲を不思議に思っていると。噂の本人が向こうからやってきた。


「アナスタシア嬢、モエ、ここにいたのか。」


「「ユージン殿下(様)ごきげんよう。」」


3人でそのまま食堂へと向かう。廊下を歩いているだけで視線を集めているのだが、3人とも常のことだったので気にすることもなかった。


「会いに来るのが遅くなってすまない。モエもサポートありがとう。」


「ユージン様のお願いですもの、私は喜んで助けますわ。マノフ王国はいかがでした?」


アナスタシアは少し後ろに下がって歩いていたので、2人の仲の良さそうな姿を見て胸の辺りをもやっとさせるのだが、お腹が空きすぎたのかしら? と斜め方向に考えていた。


食堂につくとアケボシが料理が来るまで構いなさいといわんばかりに、アナスタシアの膝にやって来て手に頭をなすり付ける。その可愛らしい姿に、馬車で癖になったのね。と微笑みながら撫でていると...


その瞬間、食堂に静寂が訪れた。アナスタシアが何があったんだろうと辺りを見回した直後、辺りが先ほどとは違った興奮が渦巻くのだ。


「あれは...絆...」


「他国の...ほんとうに...」


「...報告...」


ジハネ語の全てを聞き取れないが、ちらちらと視線を受けるので自分が話の話題であることは分かった。困惑とともに視線をユージンとモエに向けるのだが、


「気にすることはない、アケボシが俺以外に懐く姿にびっくりしただけだろう。」


「そうよ...今日は唐揚げが出るのね。私これが好きなのよ。」


2人は何でもないことのように言う。モエに至っては食べることで頭いっぱいのようである。


(ちょっと敵意も感じるんだけど、本当にびっくりしただけなのかしら?)


悪意に敏感になっているアナスタシアは嫌な予感を感じるのだった。しかし、教室に戻ると嫉妬の目で見られると思っていたのに、逆にキラキラした目で見られて訳がわからないのである。それ以上に、モエに向けられる哀れみやあざけりの視線が気になるが、聞いていいものか悩むのだ。


「先生に呼ばれてるの、ご一緒できないけど気をつけてね...。」


「さすがにもう迷わないと思いますわ。ごきげんよう。」


「...いや...。ごきげんよう。」


アナスタシアの返答に微妙な顔をして何か言おうとしてやめるモエ。


そして馬車置き場につくころ、懸念した通りのことが起こるのだ。話したことのない令嬢が突然声を掛けてきた。


「貴方、何をしたのかしら?アケボシ様のご様子がおかしいわ。」


「えっ、アケボシが病気でも?」


「様をつけなさい!そういうことではないのです。大精霊が気を許すなどっ、しかも他国のものにっ」


「アケボシ...様は、私以外にも仲が良いですよ。(セルゲイ殿下もナデナデしてましたし。)」


「なっ、そんなことはありませんわ。嘘おっしゃい。」


そう言って、つかみ掛かろうとした。


「ヒヨシ男爵令嬢、他国の公爵令嬢に摑みかかるとは国際問題になりますよ。」


その手を掴んだのはメガネを掛けた知らない青年だった。男爵令嬢は、慌てて男の手を振り払って逃げていく。それを見届けて、アナスタシアは青年に向き直り礼をした。


「助けていただき、ありがとうございます。マノフ王国公爵令嬢アナスタシアと申します。」


「マエダ侯爵の長子ユートだ。一人で帰っているとは危機感がないのではないか?いつも一緒のタケダ公爵令嬢はどうした?」


「モエ様は先生の元にご用事があったので...それにしても私が絡まれると分かってらっしゃったのですか?」


「あぁ、伝承を本当だと思ってないやつもいるからな。」


「伝承?」


「はぁ、それも知らないのか...。」


「お嬢様っ大丈夫ですか?」


ターニャが息を切らして現れて、アナスタシアをさり気なくユートから距離を離させる。


「ターニャ、ユート様が助けて下さったのです。」


「助けがいるような事にっ、それはありがとうございます。」


「迎えも来たようなので、失礼する。続きは殿下にお聞きするのがいいと思う。」


そう言って去って言ったのだった。


「お嬢様どういうことかお話いただけますね。」


ターニャの笑顔が怖いと思いながら、自分の分かる範囲で話していく。


「帰りましたら、父と話して対策を取らせていただきます。そして、ご心配なさるのでこの事は公爵様にお話にならない方が良いでしょう。」


確かに父に手紙で話すとすぐ帰って来るように言うだろう。そう思ったアナスタシアは頷くのだった。


ありがとうございます。応援よろしくお願いいたします!!

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