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4人の婚約者候補と2人の王子(2)

20年2月にナツの侍女の姉妹関係を変更しました。

(あの方、何しにいらしてるのかしら・・・)


「ユージン殿下、ナツ様はとても可愛らしい方なんですのよ。ヌイグルミが本当にお好きでいつもお持ちになってるんですの。ね、ナツ様。」


そう話しかけられたホソカワ公爵の娘ナツは、ただ人形のようにうなずくだけで側にいるヒヨシ男爵の娘のように積極的に話す気はないようだ。


「ナツ嬢は妹とたしか変わらないくらいのお年だったかな。このような場に連れてこられて大変だろう。」


ユージンはヒヨシ男爵令嬢の話に応えず、ナツに優しく語りかける。ナツは怯えたようにふるふると首を横にふってとても小さい声で、


「だいじょうぶ。父とここにいるようにやくそくしてるから。」


「そうか。無理はするな。」


「ユージン殿下はお優しいですわ。このようなお小さいナツ様にまでお気を配られるなんて。そうですわよね、外国の高官の令嬢だからと殿下を独占されてる方にも断れない方ですもの。」


ヒヨシ男爵令嬢は勝ち誇ったようにアナスタシアの方を見ていて、ユージンの目がとても厳しくなっている事に気付いてはいない。


「不思議に思っていることがあるのですがよろしくて?」


「いいよ。」


モエの言葉に、レンがにやにやしながら許可を出した。


「そちらの男爵令嬢も婚約者候補でしたかしら?」


「どうだったかな?ユージン知っているかい?」


「俺は興味が無い。この茶番も終わらせたいのだが。」


「ユージン殿下は若いの。しかし、わらわも気になってはおったのだ。この国の慣習では侍女も主人と同じ席にすわるのかな?」


エリザベスの言葉にヒヨシ男爵令嬢は顔を真っ赤にして声をうわずらせながら、まくしたてる。


「私は侍女ではございませんの。ナツ様はまだお小さく心ぼそかろうとのことで、公爵様よりユージン殿下と学園で同級生の私に付き添い役を賜ったのですわ。」


それを見ていた私にモエが口元に扇を当てて、抑えた声で説明してくれた。


「ヒヨシ男爵はホソカワ公爵の遠い親族にあたるのよ。」


彼女がこの場に居る理由がわかったが、やはり場を逸して喋り過ぎたようである。


「ほぉ、優しいものだな。しかし、もう随分話したように見えるからよいかな?わらわも殿下達と話たいのでな。ナツ様もよろしいか?」


エリザベスの言葉に、歯をギリギリさせながらヒヨシ男爵令嬢は黙り、ナツは小さくうなずく。


「殿下達にお会いするのは何年ぶりかの?あの頃はお互い少年少女だったのが懐かしいものだ。そういえばモエ殿も居たのだったな。」


「相変わらず公女様はお転婆そうですね。木登りや探検やらでユージンなど何度泣かされたものか。」


「探検のリーダーの赤い髪の子・・・赤い髪!・・・あの男の子、エリザベス様でしたの?・・・っつ、失礼しました。」


モエは失礼なことを言ってしまったと、エリザベスに向かって頭を下げる。


「よい、あの頃は確かにの子に間違われておったからの。逆にユージン殿下は今と違って、少女に間違われておったのだからな。」


「そうなんですの?」


「あぁ、そんな時もあった。」


ユージンはエリザベスの突然の暴露に苦虫を噛み潰したような顔で、アナスタシアの言葉に同意した。


「ふふっ、でもそんなユージン様にお会いしたかったわ。」


「小さい頃か・・・アナスタシア嬢は妖精のような可愛らしさだったのだろうな。」


言葉を受けてユージンは甘ったるい顔でアナスタシアと見つめ合う。


「当てられてしもうたわ。そう思わんかレン殿?」


「そうですねぇ。まさか弟がここまで溺愛系だと思いませんでしたよ。」


「わらわはレン殿下とそうなっても良いと思っているのだが、どうだろう?」


「私にはもったいないお言葉ですよ。好みとしてはアナスタシア嬢のような方なんですがね、舞踏会ではもったいない事をした。」


「あら、どうなさったんですの?レン殿下とアナスタシア様で何かございましたの?」


大人しくなったと思っていたヒヨシ男爵令嬢だったが、嬉々として話に加わってきた。


「なにも、何もございませんでしたわ。」


そう言ったものの、アナスタシアは顔色が少し悪くなっている。


「まぁ!何かあったのですわね。本当に貞淑なお見かけと違って殿下達を手玉にしているとは、臣下としても許せないですわね。」


鬼の首をとったかのように、アナスタシアに向かってまくしたてる。


「・・・・っ」


ユージンはそろそろ堪忍袋の紐が切れかけているように見えて、アナスタシアはテーブルに置かれた震えるユージンの拳にそっと手を添えた。


「大丈夫ですわ。本当に何もなかったんですもの。」


バシンッ


「モエッなんて事を・・・」


モエが席を立って、涙を浮かべながらレンの顔に平手打ちをしていた。


「まぁ、何て野蛮なのかしら。山奥からいらした方は礼儀を知らないのかしら、ナツ様参考になさってはダメですよ。警備のものを呼びますわ。」


「よいっ。」


「いえ、殿下に手をあげるなど許せません。」


「よいと言っている。これは私が言い過ぎたのが悪い。アナスタシア嬢、舞踏会の時といい今といい失礼した。」


「モエの顔をたてて謝罪を受け入れますわ。」


「兄を許してくれてありがとう・・・。」


「それに、先ほどからレン様の精霊様も側に来て謝罪してくださっているのですもの・・・。」


アナスタシアの膝の上にはいつもようにアケボシがいて、机の上にはレンの精霊のヒスイがレンの非礼を詫びるかの様に手に頬擦りをしていた。


「精霊達に愛されているな。妬けるくらいだ。」


「モエもありがとう。私の代わりに怒ってくれて。」


「たとえ幼馴染でも、私の親友を貶めることは許せないわ。」


アナスタシアはレンに連れられて席に戻ってきたモエの目に優しくハンカチを当てて涙を拭きとった。アナスタシアはふとレンをみると、レンはモエをとても哀しい目をして見つめている姿がそこにあった。


「わらわが余計なことをふってしまったようだ。失礼した。・・・それにしても、そこの礼儀をいっした者がこのまま居続けるようでは、次の時はわらわは同席せぬかもしれぬ。」


そう言ってエリザベスは煽ったヒヨシ男爵令嬢を冷たく見据える。


「もっ申し訳ございません。妹が失礼を致しました。この事は公爵にお伝えして次回よりこのような事は無いよう致します。」


その空気に耐えかねて、ナツの侍女が弁明を行なった。しかし、ヒヨシ男爵令嬢は憤慨して侍女に食ってかかる。


「本当にお父様の子かわからないお前が、おこがましいっ。あなたにはそんな権利など無いはずよ。」


「男爵に認知していただいている身ですので、今は姉として妹の失態を謝っているのです。このままでは内々で収まらなくなりますよ・・・。ナツ様、大変申し訳ございませんが、今日はこれ以上は失礼にあたりそうですので下がりましょう。」


「わかったわ・・・皆様ご機嫌よう。」


なおも食い下がろうとするヒヨシ男爵令嬢を近くの警備のものに手伝ってもらってホソカワ公爵一行は立ち去っていったのだった。


そして次の日から、ヒヨシ男爵令嬢は学園からも見かけなくなった。


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