聖霊の巫女(2)
短いですが、ちょうど区切りが良いので。
学園にあるサロンの一室でシャツの胸元をだらしなく開けたレンが、ソファに深く腰掛けて紅茶を飲んでいる。
「そう、そんな事が・・・。」
「えぇ、本当に図々しいと思いません事。ユージン殿下のご好意を傘にきているのですわ。」
その向かいには教室でアナスタシアにきつい言葉をかけていた令嬢がいた。とても腹ただしいのかハンカチを今にもちぎりそうなほど両手で握りしめている。
「彼女、そんな風に見えなかったけどねぇ。」
「それが手なんですわ、いかにも儚げな風に見せているのです。ですが、精霊様はあの女の本性をお気づきになられたのです!それなのに、殿下もモエ様も未だ気づかずにあの女をかばっているのですわ、殿下があの女の毒牙にかかるなど・・・あぁ、考えただけでもおそろしい・・・」
そういって、自らの体を抱えて震わせた。
「ふうん。で、俺にその話をするってことはどうして欲しいのかな?」
「えっいいえ、そんな、ただただ私はレン様の弟君である殿下のお目を覚すべきでは無いかと現状をお話ししたに過ぎないわけですわ。」
「そう・・・。俺も弟は可愛いからな。」
「えぇ、そうでしょうとも。それでは私はこれで失礼いたしますわ。」
そう言って、令嬢は出されてた紅茶に手をつけずサロンを出て行った。
「ふんっ、俺の事も馬鹿にしてるのにこういう時は来るんだな。さてと・・・どう思う?ヒスイ」
令嬢の出て行った扉をみつめて、とても嫌そうな顔で吐き捨てた。そして、手に乗ってきた小鳥を撫でながら考え込むのだった。
アナスタシアの霊宮へ訪れる許可は意外なほど早くおりて、数日後には霊宮のある町に向かって馬車を走らせていた。
その場所は片道4日かけて行くほどの距離で、特別課外授業としてセルゲイとユージンだけでなくモエやユートもなぜか一緒に行程を共にしている。
もちろん授業なので引率の先生も居るのだが、
「はじめてお会いする先生で、す?」
「いえ、舞踏会ぶりですよ。お会いできて光栄です。ハットリと申します。」
ハットリという男は舞踏会で声をかけてきた男だった。アナスタシアの手を取って挨拶をした時はユージンの顔が苦虫を噛み潰したかのような顔をしていたが、いさかいを起こす気はないようでその後は普通に応対している。
「いやぁ、霊宮の隣の領地出身ということもあって精霊の研究をしているんですが、聖宮は王家以外が入るには今回のように便乗するしか方法がありませんでして。もう、嬉しくてたまりません。」
そう言ってテンションたかく話していたのだが、折々で休憩するたびにユージンとユートは表情をなくし、セルゲイとアケボシは女性陣の馬車にいつのまにか退避していたのだった。
「この町は霊宮を詣るための町でして、霊宮にむけて聖霊様に感謝の想いを届ける場所として栄えているのです。私も何度も詣っております。霊宮はこの国の最初の王を助け国の礎を作った聖霊が眠りについた地と言われているのですよ。」
そう言ってハットリはイヨセ町の紹介をしていく。それだけでなく課外授業らしく講義がはじまるのだった。
内容は、初めの精霊の事は正しくは聖霊と言うことから始り、霊宮にいる巫女はその聖霊の眠りを見守る巫女、聖霊の巫女として王家の女性が代々ついていること、次代はユージンの妹であることなどと続いていく。
「ハットリ先生、もう時間も遅いので宿へ向かいたいのですが、よろしいでしょうか。」
ユートの有無を言わさない発言で、講義から解放され宿で体を休める事が出来たのだった。
「ハットリ様は悪い方ではないのでしょうが、やはり研究を専門にされている方というのは変わっているのですね。」
「ターニャったら。それって貴女の兄も変わっていると思っているの?」
「筆頭だと思っておりますよ。何しろ一族でお嬢様と共にこちらへご一緒すると決めたのに研究の為に一人残りましたからね。まったく。」
「もう、イワノフはマノフ王国になくてはならない人ですからね。私と一緒にこちらへ来てしまっては大損害になってしまうとセバスが父と話し合って残らせると決めたでしょ。」
「えぇ分っておりますとも。不肖の兄よりもお嬢様、こちらサンリとは違った温泉が各部屋にひかれているそうですよ。・・・・こちらでしょうか。まぁ、こちらは透明なんですね。」
イヨセ町の温泉は疲労回復が一番の効能とのことで、4日間という狭い馬車での移動で疲れた体を充分癒したのだった。
ありがとうございました。




