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短編

The baby

作者: paulownia

 ・・・騒がしいな。


 俺は産まれてまだ6ヵ月なんだ。少し静かにしてくれないか。


 自己紹介が遅れたな。俺の名は「たろう」だ。


 ふざけた名前を付けやがってパパとママめ!


 だが感謝は忘れていない。俺は幼い頃に母元を離れ、ずっと他の奴らと一緒に育ってきた。そこに現れたのが今のパパとママだ。


 あんな狭いところにずっといたんじゃ気が狂っちまうだろうな。


 気が狂うといえばなぜ俺が人並みに言葉が分かるのか、そう思ったんじゃないのか?8ヵ月のくせに頭がおかしいんじゃねぇか?ってな。


 そんなお前らのために教えてやろう。実は言葉は理解しているのさ。ただ産まれて間もないからな、喉やアゴの筋肉が未発達なのさ。


 まぁ喋れるようになったらふざけた名前を付けたパパとママにキッチリと話をつけてやるとしよう。


 パパとママの紹介もしといてやろう。


 パパは・・・でかいな。すごくでかい。俺もあんなビッグな男になりたいぜ。あとよく俺と遊ぼうとしてくれるな。ボールや音の出る玩具を気に入ってるみたいだ。そいつを持って俺のところへ来て「遊ぼうよ~」などと言ってくる。かわいいところもある変な野郎だ。


 ママは・・・優しいな。俺にメシをくれるし服も着せてくれる。よく俺を抱きかかえて外へも連れていくが、1度奴は俺のことを地面に立たせやがったんだ。なぜ生後6ヶ月の子にそんなことができるんだ?まぁ、おんぶ紐みたいなものを体に巻かれるのは嫌いじゃないがな。あれは安心できるからな。


 そうだ。それで、なぜ今うるさくされているかと言うとだな。

 どうにも俺が言葉を発しないのを不安がって喋らせようとしているらしい。お節介な奴らだ。そんなに「まーまー」やら「ぶーぶー」などという幼稚な言葉を俺が発すると思うのか。


 だが仕方があるまい。これで静かになるなら多少喜ばせてやってもいいだろう。


 手始めにパパがそらんでいた『寿限無』でも暗唱してやるか。


 1回しか言わないからよくきいてろよ。


 「ウ~ッワンワンッ!!」

ワンワンッ!?(騙されていただけたでしょうか?)

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