侍×魂-SOUL
むかしむかしの話。
時は平安時代、身分の高い人々にお仕えしてその身辺警護をする者達を『侍』と呼ぶようになったのがその歴史の始まりとされる。
侍は古来より自身が武士であること、その役割に誇りと希望をもっていた。
時が経つにつれて強い意志は強い心となり、やがて魂となった。
人々はそれを『侍魂』と呼んだ。
『侍魂』は侍達の武士としての力を大きく引き出すこととなり、刀の秘めた力を解放させたのである。
日本では江戸時代を迎える頃、世界各地で異変が起こった。
巨大な隕石が複数地球上に衝突したのだ。
だが不思議なことに目立った被害はなかった。
『その日を境目に』世界各地で見たこともない『生命』が現れるようになった。
黒い影のような、または闇という表現が相応しいその『生命』を日本では『カゲロウ』と呼んだ。
カゲロウは人の心の闇を好み、喰らう為に人を襲う。
カゲロウが喰らった闇は彼らの中で膨れ上がり、また新しいカゲロウを生む。
こうしてカゲロウは更にその数を増やしていった。
ある日、一人の強い侍魂を持つ侍がカゲロウに立ち向かうことを決意した。
当時の日本ではカゲロウへの対策は何もないとされていたので、彼の行動は無意味だと誰もが思っていた。(襲い来るカゲロウに立ち向かった者も過去にはいたが、いくら攻撃をしてもカゲロウは死ななかった。)
ところがこの侍はなんと、カゲロウを刀で斬り消し去ったのである。
時が経ち、研究が進むにつれて『強い侍魂を持つ者が刀の力を解放させることにより、カゲロウを斬ることができる』ということがわかった。
そして日本は未だ存在するカゲロウを殲滅する為に、侍魂を失わない為に、侍という文化を残して発展していった。
そして現代。
今の日本には侍魂と剣術を学ぶ侍養成学校がいくつかある。
その一つ、『黒霧学園』の入学式が今日行われる予定だ。
東京都XX区のとある一軒家。
どこにでもある平方な家庭、そこに住む少年がいた。
彼の名は斬咲刀真。
15歳。
これから『黒霧学園』の入学式へと向かおうとしていた。
身仕度を済ませて玄関で靴を履く。
学生服はシンプルな黒の学ランでその腰には鞘に納められた刀と、木刀が専用のベルトに備えられている。
「いってらっしゃい」
彼の母、斬咲早苗が微笑む。
普通の入学式と違い、引率できないことが彼女の今一番の悩みである。
「いってきます」
刀真は答えると、リュックを背負って家を出た。
学園までは徒歩で15分ほど。
これから侍として学ぶ。
少しの不安と、大きな期待を胸に彼は歩みを進めた。