表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/43

◆17◆ ファーストウィッシュ

 知らなかった……。ママがデザインしたブラがティーンズ向けだってことも、氷堂さんがモデルやってて広告に載ってることも、何か今、急激にパズルが埋まっていった気がする。

 っていうかさ、ママ? そのティーンズブラ、私が知らないのはなぜ? 私、ママの娘だよね? お姉さん向けとかマダム向けとか、無縁なアダルティブラなら分かるけどさ、仮にもティーンズな私にも、そのブラ教えてくれてもいいんじゃない?

 それともアレですか。ママも娘のつるぺた度を気にしてらっしゃるんですか? それともアレですか。私にはブラなんか必要じゃないと思ってらっしゃるんですか? どっちにしても、つるぺただって言われてるじゃなーい!

 いいよいいよ、私にはそんなオシャレなブラいらないもん。つるぺたにはつるぺたの、つるつるブラがあるもん! スポブラはさすがに恥ずかしいけど、柄も刺繍もないつるつるブラがいてくれればそれでいいもん! ……ママが買ってくれたつるつるブラがねっ!

 畜生ー! ママのバカー! ママがデザイナーだってこと、余計周りに言いづらくなったじゃない! 「どんな物作ってるの?」って聞かれたら何て答えたらいいのよ。「じゃーん! このオシャレなティーンズブラでーす!」って広告見せろと? それで、「あら、素敵ね。お嬢さんなんだから湖渡子ちゃんも付けてるんでしょ?見せて見せてー」ってなって、「あれ? ブラどころか、胸すらないのね。こりゃママさんもおかわいそうにー」って、ひそひそ話がどんどん広がっていくんでしょ! 氷堂さんが移ってる広告より、広まっていくんでしょー!

 誰よ、発育なし娘に産んだのは! てっきり洋服やら小物やらのデザインだけを手掛けているんだと思ってたのに、よりによって娘のコンプレックスゾーンを描いてたなんて……。どうせ作るなら、「これであなたも、今日でつるぺたにおさらば!」みたいなキャッチフレーズの商品作りなさいよね!

 ん? ちょっと待って? 氷堂さんのブラって、確か黒ブラ……。確かじゃなくても確かに黒ブラ。じゃ、じゃあ、不倫人妻みたいなあの悩殺ブラは、ママが十代の女の子向けにデザインしたっていうの? 汚れなき少女たちに、純白を卒業して、ふしだらそうな下着を付けなさいと世に送った物なのっ?

 もう駄目……、頭がクラクラするー。せっかく新しい天使さんたちを迎えたというのに、天使さんたちが全部フィクションに見えそう……。いや、フィクションなのは分かってるけど、今はもう二次元と三次元がごっちゃごちゃだよ。どうしてくれるの? このままもう百合本を愛せない体質になったらどうしてくれるの? 私のコレクションたちがぁ……。

 おのれ氷堂! おのれママ! 私の純情は奪わせないんだからね! 絶対に百合本愛好家は辞めないんだからね!



「ことちゃん、これ菜々香ちゃんが届けてくれた台本。テーブルに置いておくからねー」

「……分かったから置いといて」

「なぁに? 機嫌悪そうじゃない。お腹空いた? パンケーキ足りなかった?」

 しつこいなっ。それ、単なる厚焼きホットケーキだから! マーガリンとイチゴジャム乗っけても、パンケーキには変身しないから! っていうか、そういう話でもないし。お腹空いてるのは慣れてるけど、今は空いてるのか空いてないのかも分かんないし、もうどうだっていいよ。

 お風呂場まで響くママの声をドライヤーで遮る。バスタオルで髪をくしゃくしゃしても、私のむしゃくしゃは収まらない。私の機嫌悪さをいくらママが察知したところで、どうせ「反抗期かしらー」程度にしか受け止めないんだろうな。本当にポジティブシンキングなんだから、実母にして羨ましい。

 いい子にしてるのも疲れるなぁ……。これがまさに反抗期ってやつなのかもね。反抗期? 思春期? そんな心の発達はいらないから、早く身体の発達をください!




 神様、私のささやかなファーストウィッシュ、きいてください!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ