スペック
項垂れる俺を横目に菅野はのびている本田の頬を軽く叩き始めた。
「おい本田、起きろ。そろそろ上がるぞ!」
すると本田はハッと目覚める。そして周囲を見渡すと、俺を発見して焦りの表情を見せる。
「は…はっはっは!私とした事があまりの余裕に少しうたた寝をしてしまったようだ。…いやなに……その…すまなかったな。」
流石にその言い訳は自分でも苦しいと思ったのか話している内に本田の表情は曇り始める。正直リアクションに困る。
「バカなこと言ってないで帰るぞ。今日はこれぐらいにしといた方がいい。本田、お前の為にも、ナツキの為にもだ。」
菅野は本田に肩を貸すと、俺に背を向けて出口へと歩き始める。
モヤモヤとした感覚が抜けない。俺はこの力を上手く使うことが出来るのだろうか?
「あっ、そうだ。最後に一つだけ言っておく。その能力の事は他人にあまり話さない方がいい。そうだな…もし誰かに相談したいならその時は花澤ぐらいにしておけ。それがナツキの為になる。」
菅野はそう言い残して部屋を後にした。
一人取り残された俺はその場に座り込む。思ったよりも体力の消耗が激しい。足がガクガクと痙攣を始めていた。
「この能力に何があるってんだよ…。」
天井を仰ぐ。
この能力は使い方によっては大きな武器になるかもしれない。だがそれと同時に大きな脅威にもなり得る。
ぼんやりと姉さんの顔が頭の中に浮かんだ。果たして姉さんはこの能力を使いこなせていたのだろうか?
例え同じ能力を持っていたとしても、俺と姉さんではスペックが違いすぎる…。
俺は大きく溜め息を吐いてその場に寝転む。鼻にツンとつく汗の匂いが体に絡み付いてくるのがわかる。
「…戻ろう。」
そう独り言を呟いた瞬間、この部屋の扉が大きな音を立てて開いた。




