ノウリョク
菅野は素早く長く持っていた槍を短く持ち変える。
ちょうど槍の中心、長さが均等になる位置を持つ事で振りのスピードを上げた。
ガキッ
菅野は見事に俺の攻撃を防いで見せた。そしてそこから菅野の猛攻が始まる。
左右のから素早く振られる槍は先程の攻撃を軽く凌駕するスピードを見せた。体を回転させながら連撃を繰り出してくるのだ。
避ける?
いや、無理だ。このスピードから逃げようと距離を開けると菅野は槍を再び長く持って突きを繰り出してくる。
隙が無い。近付いても距離を取ってもこの状態では勝ち目が無い。そう、この力ではもう対応が出来ないのだ。
するとそう思ったその瞬間、スクリーンの中に体が吸い込まれるような感覚に陥る。そして自分の意思で目が動いた。
パチリ。
続いて口が動く。
「ふぁっ!?ちょちょちょっ!!待ってください!!」
唐突過ぎて体に力が上手く入らない。
何でこのタイミングでいきなり戻るんだよ。
俺の顔面に向かって菅野の攻撃が向かってきている。ダメだ。今更避けきれる訳がない。
だが俺の目の前で菅野の槍はピタッと止まった。
ゴクリ
息を飲む。
「……ナツキ?戻ったのか?」
菅野は恐る恐る俺に声をかける。まるで幽霊でも見ているかのような言い方だ。
「は、はい。鳥海ナツキ戻りました。」
殴られないように割りと急いで返事をする。
「はぁー…。終わったのか…。良かったよ。いきなり呑まれるんだもんな…。勘弁してくれよ。」
「す、すみませんでした。自分でも何が何だか…」
「…ふぅー。今は取り敢えず詮索するのは止めておく事だ。その力の事をアイツに知られるといろいろ面倒なことになりそうだし。ま、それも時間の問題だとは思うがね。」
菅野はポケットからタバコを出すと、火を着け始めた。左手にはちゃんと携帯灰皿。
「…さっきの動き、自分でコントロールしてた訳じゃないっすけど、あれはつくし先輩の動きでした。俺に風間さんの動きが出来るのにも何か関係があるんすか?」
不安だった。詮索するなと言われてもそれは無理な話だ。他人の事ならまだしも自分の事なのだから。
「…警告はしたぜ? ナツキにとってはデメリットしかないけど、それでも知りたいかい?」
「はい、教えてください。またさっきみたいな事にならないように。俺はこの力をちゃんと理解しておきたいんです。」
言い訳。自分にとって都合のいい理由を見つけて好奇心を優先させる。これは俺のワガママ。
菅野は煙を天井に向かって吐くと、ゆっくりと口を開いた。




